若手監督育成「ndjc」桝井省志スーパーバイザー
2013年02月25日
ndjc2012完成作品畑中大輔監督『プリンの味』 ある日、祖父・兵三郎が買っておいたプリンを食べてしまった小学生の宏行。一体誰が食べたのかで家族を巻き込んだもめ事に発展。宏行は意を決して謝ろうとするも、兵三郎は突然の病で亡くなってしまう。謝れなかった事を心残りに思い、宏行は兵三郎が遺したある遺言を必死に守ろうとするのだった。
出演:金井光翔、上田耕一、小林麻子、寺十吾、松田かほり
製作総指揮:松谷孝征(VIPO理事長)、製作:ndjc2012事務局(VIPO)、プロデューサー:新藤次郎、里中哲夫、監督・脚本:畑中大輔、撮影:佐々木原保志、照明:祷宮信、録音:橋本泰夫、装飾:山田好男、音楽:岡崎保憲、編集:渡辺行夫、記録:吉田純子、ヘアメイク:岩浅美都子、衣裳:村島恵子、助監督:斉藤博士、製作担当:岩谷浩、制作プロダクション:近代映画協会
―畑中大輔監督に迫る(プロフィール)1983年生まれ。埼玉県出身。早稲田大学第二文学部卒。大学在学中から映画制作を始める。現在はフリーで映画・映像制作を行う。2009年に越後妻有「大地の芸術祭」の企画で『しゃったぁず・4』を監督。2011年、名古屋市主催の地域発信映画製作企画「第3回ショートストーリーなごや」の監督に選出され『記憶のひとしずく』を監督。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2011において短編部門最優秀作品賞を受賞。推薦団体:SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ
●なぜこの作品を撮ろうと思ったのですか?
常々日常の些細な出来事からドラマが作れないかと考えています。この作品のきっかけは母が冷蔵庫に張った「私のバターサンド食べるな」と書いた張り紙でした。母親が帰ってきた所で、今死んだらこれが遺言になっちゃうねと冗談を言って家族で笑っていました。それと私自身、小学生の頃いつも何か食べているような子供でした。姉のとっておいたおやつなんかも勝手に食べてしまった事が何度もあり、よく冷蔵庫に「勝手に食べるな」と張り紙を張られていたのを覚えています。
そんな二つの思い出を組み合わせて考えたのがこの映画です。気に留めておかなければすぐに忘れてしまうような日常の大切な一瞬を、不器用な少年とプリンを通してユーモラスに描きたいと思いました。
●作品の見どころ、自信のあるところ、ここを見てほしいというところは?
プリンを巡るどこの家族でも起るかもしれない何気ない物語の中で、主人公の少年が見せる豊かな表情や、ささやかでくだらない会話を楽しんで頂きたいです。
●35ミリフィルムでの映画制作はどうでしたか? 現場で画作りはカメラマンにゆだねる部分が多く、それがかえって役者さんを観る事に集中できました。また回せるフィルムも限られているので、本当に必要なカットを整理して考える事もできましたし、いい緊張感につつまれながら撮影できたと思います。フィルムならではのフィルムチェンジのちょっとした時間や、編集で修正箇所を直してもらっている時間なども、次の事を考える時間ができて私の性分にはあっていました。もちろんあがってくる映像の質感はフィルムならではのしっとりした表現で35ミリフィルムでの撮影はデジタルに慣れていた自分にとってとても刺激的なものでした。
●ndjcを通じてどんなことが学べましたか?今後どう生かしていきますか?
お客さんを楽しませるにはどうしたらよいかという事を今まで以上に考える事ができました。自分のやりたい事を独りよがりな表現ではなく、お客さんに楽しんでもらった上できちんと届ける為のシナリオであり、撮影であり、編集なんだということを改めて実感いたしました。また今までは小規模な撮影が多く、よくも悪くも自分のコントロールが効く環境の中で作品作りをしてきたのですが、今回は関わるスタッフも多く、各部署にきちんと自分のイメージを伝えるためにコミュニケーションをしっかり取る事の重要性も再認識しました。
●これからの目標を教えてください。 今回のプロジェクトで経験した事を糧に今後の作品作りでも日常の大切な一瞬を表現していきたいです。ただ日常の小さな出来事を大切にしていきながら、大きなテーマにも挑戦していきたいと思っています。それと私が子供の頃はよく家族で映画を見ていました。その時の楽しかった記憶はいまでも覚えています。なので今度は私がそういった家族で観て楽しめる映画を作れるようにがんばってゆきたいです。