映画をいかに“当てる”か!!
いよいよ本当の改革に着手しはじめたGAGA
本質的な問題にメスを入れ、再び人を育てる
今年創立21年目を迎えた(株)ギャガ・コミュニケーションズ(以下、GAGA)が、新たな気持ちで業務に邁進するべく、3月に本社を移転した。
これはUSENグループ内での業務効率を高める為、グループ約20社が同一ビル(東京都港区赤坂9‐7‐1ミッドタウン・タワー)内に本社を構えることで、グループ間の連携を強めるとともにシナジー効果をさらに高めるのが狙い。
昨年、(株)USENの完全子会社となり上場廃止(10月)になったGAGA。歴代新記録を樹立した2005年の年間累計興収165億円から、昨年は一転、年間累計興収43億円と改めて配給事業の不安定さを味わった。 しかし、今年は話題作「バベル」、「女帝〔エンペラー〕」、「プレステージ」、「ボルベール〈帰郷〉」、「遠くの空に消えた」を中心に、チェーン公開作品から単館系作品まで期待作が揃っている。昨年11月に同社取締役副社長に就任した丸茂日穂氏に社内の現状と今年に賭ける意気込みなどを聞いた―。
グループ間で人事交流
―まるでホテルのようなお洒落な新社屋ですけども、今回の引越しはGAGAにとってどんなメリットがあるのでしょうか。
丸茂 一番は試写室をここに持つことが出来たことですね。結果としてUSENグループのパワーを体感出来るし、もっと会社間のコラボレーションが近いところで出来る気がします。ですから早速、社長の宇野(康秀)とも話したんですが、ここだけで約2千人のグループ社員がいるので、試写室を1週間に1日は解放して、社員みんなに映画を観てもらったり、またその人たちの意見が取れたら映画の宣伝にも活かせるじゃないですか。移転したメリットは凄くあると思います。
―引越しに伴い、人員を多少スリム化したと聞いています。
丸茂 私どもと一番近い組織がUSENの中ではコンテンツ関係で、完全無料パソコンテレビ「GyaO」なので、そこに何人か我々の宣伝、買付の部隊から、GyaOとの人事交流ということはやりました。それはGyaOで放映する権利を海外から取得することなどを踏まえたものです。元々作品の本数を絞っていくというのに伴い、我々の宣伝・買付の部隊、それに伴う法務などの体制を見直し、身軽にしていきたいという思いと、GyaOの方で人が足りないようだったので、そこで利害関係が一致し、そういう意味で初めてグループ間異動を少し大きくやりました。
―昨年からグループ会社だったギャガ・クロスメディア・マーケティングやギャガ・デジタルブレイン(現マインドスペース)を売却していますが、この狙いは。
丸茂 両社とも業界内において、より一層の中立性を保つことにより、広範なビジネス展開が可能となること、またUSENグループの戦略的事業ポートフォリオの再構築という思惑が一致したため、売却を行いました。
―05年にUSEN傘下に入ってから「改革プラン」なるものを打ち出されましたけど、GAGAの「問題点」は現在どれくらい改善されつつあるのでしょうか。
丸茂 USENグループ入り以降、減価償却の仕方など、会計基準の変更を行いました。ただ、営業的な立場から見ると厳しい環境ですね。要は原価の落とし方においてもシビアに、なるべく早いタイミングで償却という風になってきていますので、より健全化する体制に変わってきています。ですから、今までGAGAの一番弱かった財務体質的なところでは一通りクリアになったと思いますね。あと残された課題は、これが多分一番重要なポイントなんですけど、映画をどうやって「当てるか」という仕組み、ビジネスモデル的なところでどこを今後どうやっていけばいいんだというところでは、本質的な課題が残っているというのが事実です。(「バベル」(C)2006 by Babel Productions, Inc. All Rights Reserved.)
―昨年9月に導入したプロジェクト・マネージャー制度は機能しつつありますか。
丸茂 この制度の導入は、一つには、より責任を明確にしたいということがありました。今までは作品を買った後は、配給は配給、宣伝は宣伝、ビデオはビデオの部隊というように縦割りのビジネスになってしまっていて、この作品を最後まで責任をもって、買付した時の思いを持って、売上の構造を決めるということが出来ていなかったのです。
やはり今はシネコンが沢山出来てきたり、ビデオ発売のタイミングが早くなってきたり、それからアナログからデジタルに変わることによって、配信ビジネスやブロードバンド系など、映画を露出する流通が増えてきました。「ワンソース・マルチユース」という感じで、映画一本の価値を最大化するためのやり方は、今までの一編通りではないだろうと思っていますし、そういうものをコントロールする人間が必要になってきたということです。昔からの商慣習でやってきているようなやり方は、今の世の中に合っていないと思っていますし、お客さんもそういうことじゃないだろうと。ことに対して個別の作品の持つ良さを十二分に活かして、全体をコーディネートしていけるような、そういった人間が必要になったのです。作品軸でやっていくことにより、コンテンツが持つ収益機会を最大化させることが一番大きな狙いですね。ようやく本制度も機能しつつあり、3月に公開した「パフューム」から順次出て行く作品にはみんなプロジェクト・マネージャーが付いています。