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レポート:第8回エンターテインメント・エキスポ香港

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レポート:第8回エンターテインメント・エキスポ香港

2012年04月23日

(3/5)



「日本‐香港 パートナーシップ セミナー」


 震災に負けない元気な日本をアピール

日本‐香港パートナーシップ.JPG 

 20日午前、「日本‐香港 パートナーシップ セミナー」(主催:香港貿易発展局/共催:ジャパン・フィルムコミッション/経済産業省)が開催された。
 このセミナーでは、昨年の東日本大震災によって受けた甚大な被害から、日本がどのように立ち直っているのかを伝えると共に、実際に東北地方で撮影された作品の制作者を招いて具体的な制作事例を交えながら、東北地区の美しいロケーションを紹介し、撮影誘致につながるプロモーションが行われた。

P1190507.jpg 香港貿易発展局副総裁のレイモンド・イップ氏(写真左)が、「これまでも多くの映画を日本と香港で作って来たが、昨年の3.11後をきっかけにして、さらに両国の映画を発展させるようなビジネスチャンスを見つけていきたい。香港と日本の協力がアジアの発展につながると信じている」と開会の辞を述べた。
 続いて、在香港日本国総領事の隈丸優次氏が、「日本には魅力的なところが沢山あり、観光客には非常に魅力ある国。『エクレール』は被災地の東北地方で撮影されたもの。震災後の日本の復興を香港の皆さまに紹介し、多くの観光客が来て下さることを願っている」

P1190515.jpg 東京国際映画祭チェアマンの依田巽氏(写真右)が、「昨年3月の香港フィルマートでは沢山の励ましと応援を頂いた。改めて感謝したい。まだ沢山の困難が待ち受けているが、震災に屈することなく立ち向かっていく姿を皆さまに届け、アジア各国が一つになることが大切だ」

P1190518.jpg そして、経済産業省商務情報政策局審議官(IT戦略担当)の今林顯一氏(写真左)が、「世界の企業の多くが香港に拠点を置いている。日本と香港のオリジナリティを一つにし、香港がプラットフォームになることを期待している。日本は震災後、復興を進めており、アップグレードを目指しているが、新しい経済社会において期待されるのがコンテンツ産業だ。日本と香港が継続的に連携し、共同発展につながるように寄与し、震災に負けない元気な日本が伝わることを願う」と、それぞれ挨拶した。

 その後、パネルディスカッションが行われ、パネルスピーカーとして香港国際映画祭チェアマンのウィルフレッド・ウォン氏、ジャパン・フィルムコミッション副理事長の田中まこ氏、映画「エクレール お菓子放浪記」プロデューサーの深津修一氏、日本国際放送プロデューサーの岩崎里美氏が登壇。


「ありのままの東北を撮って欲しい」

P1190524.JPG モデレーターを務めたキネマ旬報総合研究所エグゼクティブ・ディレクターの掛尾良夫氏(写真左)が冒頭、震災からこの1年の被災地の状況について説明。
「被災地に映画の上映会に行った者が被災地で出来る限界を感じ、上映会をせずにがれき撤去を手伝って帰ってきたり、映画の撮影に向かった者たちも、被災者にカメラを向けることへの後ろめたさを感じるなど、安易な思いでは被災地に行けない状況がこの1年あった。日本では様々な催しが行われたが、3.11を忘れないで欲しい」とした。その上で登壇者がそれぞれの立場から震災への思いや取り組みについて語った。


P1190526.JPG ウォン氏(写真右)は、「1年前、震災直後にもかかわらず、日本の関係者の皆様が香港に来て、東京国際映画祭を実施すると約束してくれて、とても感動した。世界各国が支援に尽力し、いろんなメディアで東北地方の姿を目にして、人と人とのつながりを映画を通しても知ることが出来た。日本の新しいロケ地を発見することが今回のセミナーの意義。日本の復興に引き続き貢献していきたい」と約束。


P1190527.JPG 深津氏(写真左)は、被災地の宮城県石巻市で撮影を行った「エクレール~」を紹介し、「被災された方々を忘れないためにも全国500か所以上で上映活動を続けていくことが使命だ。海外でもこの映画に関心を持ってくれている。石巻市長は本当に喜んでくれて、物凄く励みになっている」と語った。


P1190525.JPG 岩崎氏(写真右)は世界各国の支援に対する被災者の感謝の思いをまとめた番組「Thank you from Japan」を紹介し、「単にありがとうということではなくて、被災された方々がどのように受け止めているのかを伝えたかった。子供たちの心のモヤモヤを晴らすことが出来ないか、自分たちの思いをとにかく伝えたいと強く願っている。日本の人たちがどう感じているか伝えたかった」とした。

 掛尾氏は、神戸出身で阪神淡路大地震の経験者である大森一樹監督の話を紹介。「震災から1年後くらいに復興疲れが出て来るという。そういう時になれば、映画は少し役に立つのではないか。震災直後は無力だと思っていたが、役に立つことの大切さを知っている」とし、これからの方が被災地は大変ではないかと投げかけた。

P1190528.JPG そして、神戸フィルム・コミッションの代表も務める田中氏(写真左)が、17年前の阪神淡路大地震から復興までの経験を紹介。「震災から17年たった神戸では、フィルム・コミッション(FC)を通して2千本近くのロケが行われ、元気になることができた。FCの活動が復興への大きな力になるという思いで活動している」と言う。
 「東北地方はまだまだ撮れる状況ではないところもあるが、被害を受けていない所もあり、風評被害も出ている。以前のように東北を舞台にした作品を撮って欲しいが、今はまだ廃墟で戦争映画を撮ったり、人が亡くなる作品を撮ることは被災した者にとってはきつい。ただ、ありのままの東北を撮って欲しい」と訴え、映画による支援を求めた。

 掛尾氏は「日本の国民の意識として、エンタテインメントの楽しみ方が震災後、少し変わったような気がする。そういった中で送り手と受け手が模索しているような状況ではないか」とし、今後の被災地での映画撮影についてどういう映画を作るのか尋ねた。

 深津氏は、「今年の5月から撮影に入る予定の新しい映画の企画をしている。これはメイン舞台は北海道で、主人公の大道芸人が住んでいるのが宮城県の松島温泉。震災復興を支援したいという思いで、あえて被災地にした。だが、映画の中では被災のことには一切触れない。松島温泉はそれほど大きな津波の被害は受けなかったが、風評被害で観光客が激減し、町の経済が壊滅的な状況になっているという事で、私たちに何が出来るかといった時に、松島温泉の観光協会の会長さんに相談した。『それだったら是非うちで撮って欲しい。松島温泉の現状を世界に伝えて欲しいと言われた」とし、「ありのままの姿を出すことで、本当は被害を受けていなくて、とても元気で頑張っているという姿を映画で見せた方が、松島温泉に行きたくなる人が増え、地域の振興に役に立てるではないかと、そういう映画の作り方をして被災地を支援しようとプロジェクトを進めている」と語った。

 岩崎氏は、「2月から放映している東日本大震災復興支援番組『Forward』というシリーズがあって、日本の今の姿をいろんな視点から描く全部で42本の番組を作ろうとしている。その中のアメリカ人の男性の物語で、奥さんの転勤で偶然青森県に住み始め、アウトドアスポーツが大好きなことから、八甲田山でツアーガイドをはじめたら、外国人にとても人気になってやっていた。だが、その時に震災にあった。東北ということで風評被害があり、外国人がバタッと来なくなって廃業状態に。アメリカに帰ってしまおうかと思ったが、厳しいながらも自然の素晴らしさを改めて知って、日本に留まろうとしている姿を描こうとしている」とし、「全てが瓦礫の山になった東北ではなくて、いろんな場所があるんだと、いろんな側面から描いている」と、番組の短い編集版を披露した。

 これらの話を受けてウォン氏は、「非常に素晴らしい物語だ。勇気を持って復興する国に、支援の手を差し伸べないといけない。このイベントを通じて、一つの精神を示していると思う。中国にも北海道でロケした『狙った恋の落とし方。』という映画が大ヒットし、観光の宣伝的役割を担った。3Dなど映画技術の向上はもちろん刺激があるが、本当にいい映画は、人々の心を捉える。イランの『別離』は小さな映画だが素晴らしい映画だ。日本の映画撮影、フィルムコミッションには一体感があり、香港映画は日本に学ばなければならないことがある」と述べた。

 最後に掛尾氏は、「海外の方から、日本は凄いものを持っているのに気が付いていないだけと言われる。日本のフィルムコミッションの方々は、本当にやさしく親切なので、是非日本にロケに来て頂きたい」とアピールし、セミナーを締めくくった。




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