【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.93】
「あなたへ」、やはり高倉健なのか
2012年08月28日
高倉健である。というより、やはり高倉健か、と言ったほうがいい。彼の6年ぶりの新作である「あなたへ」が、ヒットスタートを切ったのが、何ともうれしい。再度言う。やはり、高倉健なのか。
全くのオリジナル企画があり、それに乗った一人の映画俳優がいて映画が動き出し、そこにスタッフ、俳優が集まる。映画が完成し、映画俳優の尋常ではない取材活動が始動し、それが人々の耳目を集め、興行という場で多くの観客の存在が浮上する。これが、「あなたへ」の骨格である。
今の時代では、なかなかありえないような映画の作られ方であり、公開のされ方であったと思う。私はツイッターで、本作を「反時代的」な作品と言った。その意味は、受刑者、犯罪者に“寄り添う”物語の設定のことばかりではない。映画そのもののあり方が、まさに反時代的と言う以外ないのである。
「あなたへ」は、8月25、26日の2日間で、全国動員21万9164人・興収2億3723万1500円を記録した(339スクリーン)。もちろん、突出した成績ではないが、高年齢者が多い客層を考慮すると、平日の高稼働がかなり期待できる。おそらく、同時期に公開されている作品中、平日ではもっとも高成績となるのではないか。そうした推移が想定できるから、最終で20億円超えの可能性もあるというわけだ。
新作では、「るろうに剣心」の健闘も特筆すべきである。8月25、26日の2日間では、29万5319人・3億9953万0400円を記録した(327スクリーン)。22~24日に行われた先行上映成績を入れると、26日までで42万4143人・5億5547万6800円となった。
20代、30代の若い観客が目立ち、27日(月曜日)の平日も健闘している。こちらも最終では20億円を上回る可能性が高い。同じワーナー配給作品としては、「ダークナイト ライジング」が26日現在では18億円前後であるが、最終20億円に届かないとみられる。日米コミック原作対決の行方は、最終的にはどうなるか。
「プロメテウス」は、24~26日の3日間で、26万4652人・3億9466万5200円を記録した。すでに数多く行われた先行上映成績を入れると、26日まででは累計で50万6754人・7億5443万5800円となった。宣伝を大方「人類の起源」一本やりで通した効果は、相応に出たとは思うが、さてこのB級エイリアンもの、関心の度合いが今後、どうなっていくかは微妙なところだ。
(大高宏雄)