来週土曜日(7月12日)から全国公開される『太秦ライムライト』。斬られ役俳優として『ラストサムライ』の時に注目を浴びた福本清三さんの初主演作です。連日のように記事が出ているので、映画のタイトルを目にした人も多いことでしょう。
7月に入り、続々と夏休みの大作映画が公開される中、大半の人の目には地味に映る作品だと思います。でも、これは声を大にして言いたい。「観ないと損するぞ!!」
時代劇で、何気なく見ていた殺陣(たて)。主人公が雑魚を次々となで斬り、悪代官を追い詰める。そんなお決まりの展開が、この『太秦ライムライト』ではあまりに鮮やかで、眩しく、そして最高に格好よく描かれます。「殺陣ってこんなにしびれるのか」と全身鳥肌ものですよ。
物語は、老練の時代劇俳優が現役を引退した後、弟子の女優が主演する時代劇映画で復帰を果たし、一世一代の大一番に臨むというもの。アメリカで映画を学んだ落合監督と、アメリカ人の撮影監督というハリウッドスタッフが、「いつもの時代劇」を別の角度から映し、新たな魅力を引きだします。冒頭のタイトルシークエンスから違いを感じますし、時代劇らしからぬスタイリッシュなBGMも。「普段は見ることができない時代劇撮影の舞台裏、太秦の舞台裏を描く」という、映画やドラマ好きにはたまらない要素もたくさんあります。
松方弘樹さんをはじめ、信じられないほど豪華な俳優が出演している点も、いかに福本さんが愛され、信頼されているのかがわかります。よく映画の記事では「ベテラン俳優の○○が脇を固める」という表現を使いますが、今回は脇を固めるどころじゃない。いつもは主役を演じる大御所たちが、この作品では全員が“斬られ役”を強力にバックアップしている異例の光景に、見ているこちらも目頭が熱くなってしまいます。
プロデューサーの方に話を聞きましたが、福本さんは劇中と同様に腰の低い人で、ほぼ役柄そのままだそう。17歳のヒロイン、山本千尋さんが東映剣会のメンバーに殺陣を教わっている姿も映画そのもので、非常に作品の内容とリンクした撮影現場だったようです。
感動、しびれるポイントがいくつもある本作ですが、やはり何と言ってもクライマックスでこちらのボルテージも最高潮に達します。福本さんらが演じる斬られ役たちが、大御所俳優とヒロインを相手に大立ち回りを披露。それまでの90分間、時代劇俳優の肩身の狭い哀切を見てきた者にとって、このシーンは感情の高ぶりを抑えられないと思います。NHK BSプレミアムで1月に放送されましたが、テレビ編集版と劇場版は少し違います。まだ観ていない方はもちろん、1度観た人も、ぜひまた観に行ってください。
さて、金曜日なので最後に恒例の競馬予想。今週はラジオNIKKEI賞です。重賞連対経験馬がわずかに1頭の混戦模様。もともと人気馬が勝てないレースですが、今年も難しそうです。そんな中、本命にはブレイヴリーを推奨します。昨年8月以降コンスタントに休みなく使われ、今回が14戦目。1勝するのに10戦を要しましたが、どのレースも上位に食い込む善戦マンでした。こういうタイプは一度勝つとポンポンとステップアップするもの。現に、未勝利勝ち後は3戦で2勝目を挙げました。唯一の重賞挑戦だった京都新聞杯は大敗でしたが、積極的な競馬で強い相手に真っ向勝負したのは評価できます。キングカメハメハと桜花賞2着馬の仔という血統背景からも、まだまだ上を目指せる馬のはず。北海道を主戦場とする古川騎手がわざわざ乗りに来ている点も見逃せません。