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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.92】
「アベンジャーズ」、親子層まで届いた点を評価

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.92】
「アベンジャーズ」、親子層まで届いた点を評価

2012年08月21日

 8月19日、新宿ピカデリーに「THE GREY 凍える太陽」を観に行く。お盆興行終了の最後の日曜日。全国一のシネコンの混み具合は、果たしてどうなのかといった興味もあった。エスカレーターを上って、ロビーを見ると、かなりごった返している。ただ、チケット窓口はスムーズな感じがあり、少し意外な気もした。

 「~凍える太陽」のチケットを購入し、移動して「アベンジャーズ」の座席状況を眺めた。そのときの時間は、午後2時近く。午後3時20分の回(3D字幕版、スクリーン1)が◎(空席あり)、午後6時10分の回(2D字幕版、スクリーン10)が△(空席はわずか)だった。

 これは、ちょっと微妙な興行だな。ちなみに、スクリーン1は座席数が607。スクリーン10は座席数が115。この点を考慮しても、最初の日曜日のこの時間帯で、午後3時台の回に、かなり余裕があるのが気になった。「アベンジャーズ」の興行は、大ヒットではあるだろうが、突出していない。新ピカの座席状況を見ながら、そんな感じを私は抱いたのである。

 「アベンジャーズ」の各日ごとの成績は、8月14日=20万2422人・2億8583万7000円、15日=15万8432人・2億2526万0400円、16日=12万0343人・1億7880万0900円、17日=13万2865人・1億9517万2100円、18日=16万0302人・2億4510万3150円、19日=16万5807人・2億5582万9100円。この6日間累計は、94万0171人・13億8600万2650円となった。スクリーン数は、844である。

 配給のディズニーは、「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(2003年、最終68億円)を凌ぐオープニング成績だから、「最終で70億円を狙える」としたが、問題は9月以降の推移だろう。それは客層に小学生の子供と、その父親という親子連れが目立っていて、この層は休み期間が終われば、土日以外の集客が期待できなくなるからだ。

 もちろん、20、30代、さらに上の層の観客もいるが、親子連れ以外のその広がりが、思ったほどではないようにみえた。とくに女性層の広がりが、もう少しという気もした。そうした点を考えると、配給側の見込み興収は、いささか到達が難しいのではないかとの見方ができる。

 ただ、以下の点は強調しておきたい。米国公開からすでに数か月が過ぎ、その間、絶え間のない宣伝で作品とキャラクターの浸透を図ったからこそ、世界同時公開では考えられない親子層というところまで作品が届いたということである。日本市場の特殊性を考慮し、作品の浸透の期間を十分に視野に入れた今回の公開戦略は、スケールの大きな宣伝展開含め、今後に大きな示唆を与えたと、私は思っている。

(大高宏雄)

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