「ヘルタースケルター」が、ヒットスタートである。7月14日から16日までの3日間で、全国動員25万7281人・興収3億4817万3390円だった。14、15日の2日間では、17万4274人・2億3353万3030円を記録した。204スクリーン。まぎれもないヒットであった。
客層は、10代から30代の女性、その年代のカップルに、年配男性といった珍しい展開。新宿ピカデリー、渋谷のシネクイント、池袋HUMAXシネマズといった都会の繁華街にある劇場が、圧倒的な強さを発揮した。逆に、地方の劇場では、もう少しといったところも目立つ。
ともかくも、沢尻エリカへの関心が大きい。スキャンダルめいた情報伝達から、実体がよくわからない本人のフラフラ感。さらに、初ヌードへの期待と好奇心。あおる、あおる。そんな彼女が、過激な題材のなかで、どういった演技を見せてくれるか。これらが一体化して、ちょっとした沢尻現象を巻き起こした感がある。
昔懐かしい気がする。スキャンダルと裸。監督の “芸術的な” 思惑とは別に、本作の登場と情報の流布、公開のされ方に、 “不良性感度映画” の今日的な発展形が見えると言えようか。私は少し前に、本作を今年もっとも野心的な企画と、どこかで記述した記憶があるが、その野心には言いようのない懐かしさが漂っていたのである。
「ヘルタースケルター」と、真逆の興行になったのが、「苦役列車」ということになる。7月14、15日の2日間では、2万1276人・2935万0200円(73スクリーン)。館数のある程度の絞り込みはいいとしても、厳しいスタートであるのに変わりはない。
実は、私の周囲にいる相応に知識と経験がある30代と40代の女性が、苦役=くえき、と読めなかった。20代では、もっと読めないだろう。これではヒットは難しいな。公開前に、私は思わざるをえなかった。彼女たちを笑うことはできない。読めない理由があるに違いないのである。
今回の興行に関しては、いろいろな理由があろうが、まず一つ、本作をシネコンで見ることに、私などは大きな違和感をもった。両者は、全くそぐわないのである。館数以前に、もっと別の見せ方がなかったか。これに簡単な答えはないだろうが、今の興行形態の難しさを改めて思った。
「苦役列車」は、今年の映画賞を賑わすことだろう。賑わさなかったら、この国の映画賞はおかしい。
(大高宏雄)