視聴率と広告収入は比例するか?
2011年11月10日
題目のように、視聴率と広告収入が比例するかというと、視聴者ターゲットの違いや営業戦略、さらにマルチ展開等によって異なる。とは言え、視聴率1位の放送局が広告売上トップでなければ割が合わない。おおよそ比例関係に近い。視聴率3冠王(G・P・全日)のフジテレビは今年度上期の放送収入(タイム・スポット)が1183億円でトップだ。次いで、日テレ999億円、テレ朝824億円、TBS808億円。上期の全日帯(6‐24時)視聴率は、フジ7.9%、日テレ7.5%、テレ朝7.2%、TBS6.8%。視聴率の順位で見れば、それに準じた業績となっている。ただ、他局と比べた時、視聴率の差と売上額の差が妥当かどうか。
8日行われたテレ朝のアナリスト・機関投資家向けのIR説明会で、同局の視聴率が改善しているが他局の売上額と比べてもっと増えてもよいのでは?(広告)単価が低いのでは?という旨の質問が飛んだ。テレ朝の7月クール視聴率はゴールデン帯(19‐22時)で1位日テレ・フジ(同率)と0.6ポイント差で開局以来最小となり、プライム帯(19‐23時)も1位日テレ・フジ(同率)に0.3ポイント差に迫って3位だ。この秋の期末期首特番週はゴールデン帯・プライム帯とも2位と健闘した。営業担当の役員は「日テレとは1日1億円、フジとは1日2億円の差がある」と悔しい思いを素直に語り、単価アップも図りながら差を縮めていきたいと意を示した。かつて視聴率万年4位だったテレ朝は、この数年の躍進ぶりが目覚ましいだけにその想いは強い。だがその歴史があったゆえに、単価アップに時間を要している。
日テレも同様の想い。視聴率でフジとデッドヒートのトップ争いを展開し、広告収入増に躍起だ。フジは7年連続で「年間」および「年度」で視聴率3冠を達成しているが、今後の行方はわからない状況になってきた。日テレは年間トップも射程圏内に捉え、ゴールデン帯・プライム帯の首位奪還に強い意気込みを見せる。7日のフジIR説明会で、豊田皓社長は警戒感を示した。日テレがフジと同様に若者をターゲットに注力してきたためという。若者向けは商品購買に繋がるので広告営業に反映する。日テレがトップ奪還となれば、今後、放送収入も逆転トップとなる可能性が高まる。
この上期の広告収入は、東日本大震災の影響で各局とも前年上期と比べ減収した。ただ、6月頃から前年を上回り、想定した以上に回復に向かい、下期は増収を見込む。タイの洪水の影響など危惧される材料はあるものの、各局総じてそれをカバー出来る広告需要を見込み懸念を払拭する。その基盤背景となる視聴率。その成り行き次第で、今後の広告業績の順位争いに変化が見られるかもしれない。トップ争いは今、そんな緊迫した情勢の中にあるようだ。
(戎 正治)