◎今後は積極的に共同製作を進めていきたい 2日目のラウンドトーク「日韓共同製作の戦略と実際」には、日本からフジテレビの河井信哉ゼネラルプロデューサー(下写真・左から2番目)と、ドラゴンハートインターナショナル代表の橘田寿宏氏(下写真・右端)、「彼岸島」などのキム・テギュン監督(下写真・左から2番目)が登壇。韓国製作者協会のチャ・スンゼ会長(下写真・左端)がモデレーターを務めた。
河井Pは韓国と共同製作した「力道山」など、橘田氏は「僕の彼女はサイボーグ」など、テギュン監督が「ピアノ」「彼岸島」などを例に、製作から配給まで国際共同製作をめぐる意見を分かち合い、今後の日韓の共同製作が活性化するための支援政策と発展方向について話し合った。
河井Pは、「『力道山』は当時、ファイナンス面も50:50を目指していたが、結果的には日本の製作委員会の中で足並みが揃わず、ほとんど韓国のファイナンスになるなど、いろいろな問題もあった。日本は国内だけで映画産業が成立してきたが、今後は積極的に共同製作を進めていきたい」とし、その為にはお互いの製作方式の違いを理解することが大事だと強調、「いま韓国、中国と一緒に企画開発を進めている」ことも明かした。
橘田氏は、「合作の意義はいろいろあるが、互いの国がウィン=ウィンにならなければならず、投資した資金を回収することができれば続いていくだろう。合作となると両方の国でヒットさせ、両方で好きになってもらいたい。でも、ともするとどっちつかずの作品になってしまって、両方から見てもらえなくなってしまう。共同製作だから見に行くのではなく。自分たちの映画を作らなければならないと思っている。両方の国に対してヒットさせようと思うと、両方で失敗してしまうことを感じている」と、自身の経験から意見を述べた。
そして、「韓国では映画ファンドからの出資がほとんどだと思う。韓国映画振興委員会が定めている規定に認められなければ出資がされず、公開も韓国映画と認められなければ上映されない。認められる規定がクリアされないと実現されない企画も多々あり、その規定はちょっと厳しい気がしている。ただ、日本人としても非常にうらやましい組織だと思っているので、認定基準を緩和してもらえないか。緩和されればもっと合作がつくられ、日本にも企画が持ちこまれ、日本の製作委員会に入って組成して、一緒に作ることも可能だと思う」と投げかけた。
テギュン監督は「言語については問題なかったが、製作面では信頼関係が強固でなければとても大変なことが起きる。両国の製作者間の契約書の問題、ポスターを作る時も両国のプライドが大変だった。共同製作は魅力があり、市場を拡大する。悪夢になることもあるが、大きな資本を集められる。素晴らしい成功を収めたものはまだないが、努力していくことが大事だと思う」とした。
スンゼ氏は、「これまでに両国間で約40本共同製作作品が作られている。いつの間にこんなに沢山作られたのか―。低予算映画も数多く作られたが、両国の映画を撮影するための資本や製作方法の違いについて説明して欲しい」とすると、
橘田氏は「日本はファイナンスシステムがガラパゴスかしている。製作委員会システムというもので、いろんな会社がリスク分散のため作られたもの」とし、河井Pは「日本独自の合議制といシステムで、一つの会社が崩れると、みんな崩れてしまう。そういうことが多々あるので、共同製作に製作委員会システムは適用できない」と述べた。
「では、日韓の共同製作にだけ出資できるファンドを作ったら、日本には出資できる資金があるのかどうか」とスンゼ氏が問うと、橘田氏は「これまで両国での成功例がないだけに今の段階では難しいのではないか。ひとつ成功例が出て、気運が盛り上がった時には可能性はある。いま日本のBS、CSTVは韓国ドラマだらけ。地上波でも復活していて、この10年間、『シュリ』から始まったものが、確実に韓国文化が根付いているので、その延長線上を見ると新たな展開はあるのではないかという予感はしている」との見解を述べた。
最後にスンゼ氏は、「これは日韓の問題だけでなく、私たちがアメリカ的な価値の映画を見せるのか、アジア的な価値の映画を見せるのか、アジア的価値について悩む時期に来ていると思う。映画資本をブロック化する問題、アジア的価値を高めていくことなど、今後も議論をしていきたい」と締め括った。
続いての昼食会では台湾のツァイ・ミンリャン監督(写真左)が特別演説を行い、「私は興行的には成功しない監督ではあるが、この場には映画界に影響力を持っている方々がいらっしゃると思うので述べさせてもらいたいと思う。一番の問題は、真の自由な発展が出来る、創造の機会を与えてもらいたいということだ。映画を芸術にするのか、商品にするのか各国で考えてもらいたい。映画とは何か? 映画とは人類の未来を考えるものでなければならない。お金だけを追いかけると無駄な人生となってしまう。重要なのは競争を捨てることだ」などと語った。
◎日本とニュージーランドのロケ地製作支援
午後には、プレゼン2「Hot Place in Asia!―日本、ニュージーランド」が行われ、日本から日本政府観光局(JNTO)ソウル事務所長の吉田隆氏、沖縄県産業振興公社ハンズオンマネジャーの杉浦幹男氏が登壇。「観光と文化が連携された日本の製作支援プログラム」と題し、今年から本格的に海外撮影の誘致に乗り出した日本の新しいインセンティブ制度「スクリーンツーリズム」などについて紹介。
また、沖縄は海外市場を狙った多様なコンテンツ開発のために5億円規模の文化コンテンツファンドを組成し、映画と文化、観光が連携した日本の新しい支援プログラムをアピールした。
続いて、「ロード・オブ・ザ・リング」「アバター」の撮影などで、いま世界的に注目を浴びているニュージーランドのフィルムニュージーランドとフィルムオークランドの責任者が、映画関連政策とロケ地、映像産業の成功の秘訣などについてプレゼン。
フィルムニュージーランド ボードメンバーのスー・トムソン氏は「ニュージーランドは政府と一緒になって雇用機会の創出に取り組み、リスクのない撮影環境を提供したいと思っている。意思決定者は不安がるものなので、リスク分析を行う環境整備が必要だ」とし、フィルムオークランド総括理事のマイケル・ブルック氏は「映像産業とフィルムコミッション、市議会が一緒になって人の財産を使って仕事をしなければならない。制作が円滑に進められなければ仕事にならないので、市議会とプロトコルを作った」とロビー活動、根回しの重要性もアピールした。
モデレーターを務めた、国際映画製作コンサルタントでAFCNet諮問委員のビル・ボウリング氏は「一番重要な問題を投げかけられたと思う。政府の映像関係者が一緒に仕事をすることがあるが、撮影現場に来ないので臨場感がない。産業自体への理解があまりない人々、独特の特性を持っている人たちと、お互いのネットワークを強化していくことが重要ではないか」とし、ブルックス氏も「市議会の議員といい関係を続けてきたが、それは永遠ではない」とした。
最後に、吉田氏は「日本は今年が本格的に取り組む最初の年。意思決定には責任者が必要だ。映画に携わっている人と、観光に携わっている人たちのコミュニケーションがもっと必要なのではないか」と感想を述べた。
◎共同宣言文を発表、9ヵ国が調印 その後、9カ国の映像政策責任者9人が参加し、フォーカスミーティング1で議論された内容を中心に、これからのアジア映像産業の環境改善や共同発展方案について話し合われ、閉幕式において共同宣言文を発表、9ヵ国が調印した。
オ・ソクグン氏は、「国際共同製作発展に向けた多様な議論を行うことが出来た。また、来年会えることを楽しみにしている」と締め括った。
夜にはBIFCOMと共にホテル野外ガーデンで閉幕パーティーが開催され、今後、各国の協力を確かめ合いつつ、親睦を深めた。