インタビュー:中尾幸男(社)全日本テレビ番組製作社連盟理事長
2009年01月20日
存在価値を問い直し逃げずに取り組む テレビメディア活性化へ局とも連携
制作費@110番、再び魅力ある業界へ
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存在価値を問い直し逃げずに取り組む テレビメディア活性化へ局とも連携 制作費@110番、再び魅力ある業界へ 地上民放テレビ業界は、放送収入の右肩上がりモデルが崩壊し、同時に予想以上の経済不況に見舞われ、キー局の今年度第2四半期決算は軒並み減収大幅減益となった。経済環境・景気の回復の見通しも未だ見えてこない中で、各局では徹底的な経費削減に努めつつ、厳しい将来予測の上に立ち、さらなる放送外収入の拡大などを目指している状況だ。
だがその経費節減や、放送外収入拡大ための権利確保などに絡み、テレビ局と密接な間柄で存在している“テレビ番組制作会社”にも様々な影響が出そうな状況だ。下請法も絡んだ制作費カット等の問題や人材確保の問題など、様々な課題がそこには存在している。
そんな中、テレビ番組制作会社の業界団体である社団法人全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)は、9月30日に開催した通常総会で、中尾幸男氏(CAL社長)が新理事長に就任するなどの新体制を発足した。新たな舵取り役となる中尾新理事長に、就任の抱負、抱える課題、今後のテレビ業界の展望などについて話を聞いた。
―― ATPの新体制スタートと理事長就任にあたり抱負を聞かせてください。中尾幸男理事長(以下、中尾) まず感じていることは、大変な時に(理事長を)仰せつかったなということ。
私は、テレビが好きで、テレビの仕事に就きたいと思って電通に入り、その後ほぼ40年間テレビ番組の仕事をやることができました。まずそのことに感謝の思いがある。広告代理店にいながらもテレビ番組の企画製作の仕事を一貫してやらせてもらった。その中で、放送局の方々とのお付き合いももちろんありましたけれども、プランニングの仕事が中心でしたから、実際には製作会社の方々と共に仕事をさせてもらってきたことが大変多かったです。
テレビマンユニオンさんやテレパックさんなどが設立されたテレビ番組製作会社の創成期も、電通の立場から見てきたわけでして。自分が身を成し、約40年間仕事をしてきたこの業界に対し、今、少しでも役に立てればと思っています。自分が理事長になってどうしてやろうとかは正直考えていなかったし、余裕も自信もないまま仰せつかったというのが本心です。
経済不況もさることながら、これからテレビはかつてない状況を迎えることになります。テレビメディアがこれまで経験したことのない厳しい環境を迎えるということで、ATPだけでどうするというより、テレビメディアが活性化していくために業界の全ての皆さんと力を合わせて、どういうことが必要なのかなど問題の解決に向けて取り組んでいきたいと考えています。
私は、ATPという組織としても、理事の方々を中心にチームワークを大事にしながら志を一つにして、また事務局のスタッフも信頼していますので、その中で自分の役割を果たしていければというのが本意です。
最近、いろいろな方とお話ししていても、(この時期にATP理事長に就任して)これからより大変ですね、という言葉ばかりいただいているので…。ですが、今テレビが置かれている状況は初めてのことなので、ふりかかってくるものに対して逃げないで取り組んでいきたいと思っています。
広瀬民放連会長の言葉を糧に ―― ATPとしても、時代の進展に合わせた行動・役割が求められますよね。中尾 これまで、製作会社がたくさん誕生して、志がある人たちが気持ちを一つにして団結し問題を解決するために力を尽くしてきたわけです。だが今は、製作会社だけの問題ではなく、テレビメディア全体の問題へと発展している。個々の権利を主張していくことも我々ATPにとってはもちろん重要なことですが、それだけではなく、関連する方々といかに連携できるかも大事だと考えています。
今、一番危惧していることは、(経済不況の影響もあり、テレビ局経営の先行き不透明感がある中で)我々だけでは解決できない番組制作費カットが、一番弱い立場へとしわ寄せされてくることなどははなはだ困る。これについてはきちんと対処・アピールしていきたい。またこの件は、製作会社・テレビ局の共有の問題として解決していくというスタンスでいきたいと思っているし、そうなってほしいと願っている。何が大事なのかをテレビ局の方々とも確認しあって取り組んでいきたい。
―― 広瀬道貞・民放連会長は、今年のATP賞の来賓挨拶で予告なさっていたとおり、先日の民放大会で、制作会社と局との関係性を重んじパートナーとして、番組の質の低下にならないように、また無謀な制作費カットなどはないようにと、自戒とも警告ともとれる発言を挨拶の中でされました。中尾 民放連会長・広瀬さんの民放大会の挨拶の言葉は大変心強かったです。まず、あの民放大会という放送局の公式的な集まりの場で、(制作費カットの行きすぎを懸念し、ブレーキをかけるような)ああいう発言をしていただいたのは本当に心強かった。
我々としても、これからの厳しい状況を乗り切っていくためには、お互い汗を流すことを前提に話し合っていきたいと考えている。安易な判断での制作費カットとか、無茶な条件で強行されるという事態は、本当に起きないでもらいたいと願っています。そのための対策として、ATP内にも様々なプロジェクトを設置し理事を置いているわけで。ですがこれらプロジェクトは、起きたことを片付けるということも当然ですが、それよりも起きない欲しいという気持ちが大きいです。
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