興収30億円を超えた作品が、今夏は8本を数えた。40億円超えは6本あった。興収30億円は興行に大きなインパクトを与え、全国的なヒットの目安になる。全国の映画館の9割がシネコンとなった今、何か1つの作品が突出した成績をあげるよりも、30億円、40億円規模の作品が複数ある方が、シネコン全体の客席稼働率を高め、経営を潤す。
今年の上半期は、前年に国内歴代3位となる興収254億円をあげた『アナと雪の女王』があった反動で前年割れした映画館が大半だったが、興行者の実感は決して悪くなかった。100億円を超えるオバケ映画はなかったものの、20億円から50億円くらいの幅で様々な作品がヒットし、1本かぶりではない全体的な底上げがあったからだろう。
本誌は7月号で、興行者4人による覆面座談会を実施した。その中で今年GWの興行を「富士山型ではなく山脈型」と評する発言があったが、それがそのまま夏興行にも当てはまったと言える。一人勝ちではなく、ほぼ全ての作品がある程度実力どおりの成績を残すことができた。
正月→夏に繰り上げ公開
ここで、この未曾有の夏休み興行の経過を改めてたどってみたい。
これだけ強い作品が集中し、今年の夏休みは一体どうなってしまうのか―。こうした物言いは、年初から様々な場面で聞くことができた。そこには、『千と千尋の神隠し』『A.I.』等があった01年夏のような爆発的な興行が再来することへの強い期待が込められていた。その一方で、作品が多いことから競合関係が生まれて、1本あたりの興収が予想を大幅に下回るのではないかという心配も入り混じっていた。
1月下旬、『ミッション:インポッシブル』の全米公開が、当初の12月25日から約5カ月繰り上がり、7月31日に変更されるとのニュースが駆け巡った。これに伴い、日本での公開時期も変わるか否か、国内の映画関係者はその行方を注視した。パラマウントジャパンは検討を重ね...
続きは「文化通信ジャーナル10月号に掲載