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熱狂の夏興行を振り返る

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熱狂の夏興行を振り返る

2015年10月19日

特集 熱狂の夏興行を振り返る.jpg


 2015年の夏休み興行。邦画、洋画を問わず実績十分のシリーズ作品を中心に過去に例のない強力なラインナップが揃い、大きな期待と関心が寄せられた。その結果は、今でも語り継がれる『千と千尋の神隠し』等があった01年夏に匹敵するほど、全国各地の映画館で驚異的な賑わいを見せた。8月単月では、興収発表となった00年以降で最高の興収を稼いだ夏休みとなった。

 作品を個別にみていくと、目標数値に未達だった作品も少なからずある。配給会社ごとの悲喜交々もあっただろう。だが、興行会社サイドに話を聞くと、期待どおり、あるいはそれ以上だったというのが大方の意見である。

 今回の特集では、配給関係者、興行関係者に取材を行い、日本中が熱狂した夏休み映画興行を振り返ってみたい。


30億が8本、40億が6本

 今年の夏興行は、『アベンジャーズ』から本格スタートした。7月4日に公開された『アベンジャーズ』は2日間で興収7億9千万円を記録し、夏興行の口火を切るにふさわしい大ヒット発進となった。

 その後も大作、話題作が毎週のように公開され、次々と期待に応える出足を見せる。7月10日に『ターミネーター』、11日に『バケモノの子』、18日に『インサイド・ヘッド』『HERO』、31日に『ミニオンズ』、8月1日に『進撃の巨人』、5日に『ジュラシック・ワールド』、7日に『ミッション:インポッシブル』『BORUTO』など、まさに釣瓶打ちだった。お盆に重なる8月8~14日の1週間で、全国の映画館の累計興収が100億円を超えた。『千と千尋の神隠し』他が公開されていた01年夏は、お盆1週間で約90億円だったといい、今年の夏がいかに盛況だったかが分かる。


2015年夏興行作品.jpg



 興収30億円を超えた作品が、今夏は8本を数えた。40億円超えは6本あった。興収30億円は興行に大きなインパクトを与え、全国的なヒットの目安になる。全国の映画館の9割がシネコンとなった今、何か1つの作品が突出した成績をあげるよりも、30億円、40億円規模の作品が複数ある方が、シネコン全体の客席稼働率を高め、経営を潤す。

 今年の上半期は、前年に国内歴代3位となる興収254億円をあげた『アナと雪の女王』があった反動で前年割れした映画館が大半だったが、興行者の実感は決して悪くなかった。100億円を超えるオバケ映画はなかったものの、20億円から50億円くらいの幅で様々な作品がヒットし、1本かぶりではない全体的な底上げがあったからだろう。

 本誌は7月号で、興行者4人による覆面座談会を実施した。その中で今年GWの興行を「富士山型ではなく山脈型」と評する発言があったが、それがそのまま夏興行にも当てはまったと言える。一人勝ちではなく、ほぼ全ての作品がある程度実力どおりの成績を残すことができた。


正月→夏に繰り上げ公開

 ここで、この未曾有の夏休み興行の経過を改めてたどってみたい。

これだけ強い作品が集中し、今年の夏休みは一体どうなってしまうのか―。こうした物言いは、年初から様々な場面で聞くことができた。そこには、『千と千尋の神隠し』『A.I.』等があった01年夏のような爆発的な興行が再来することへの強い期待が込められていた。その一方で、作品が多いことから競合関係が生まれて、1本あたりの興収が予想を大幅に下回るのではないかという心配も入り混じっていた。

 1月下旬、『ミッション:インポッシブル』の全米公開が、当初の12月25日から約5カ月繰り上がり、7月31日に変更されるとのニュースが駆け巡った。これに伴い、日本での公開時期も変わるか否か、国内の映画関係者はその行方を注視した。パラマウントジャパンは検討を重ね...


続きは「文化通信ジャーナル10月号に掲載

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