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「ndjc 2010」を経て―次世代の映画作家5人による座談会

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「ndjc 2010」を経て―次世代の映画作家5人による座談会

2011年04月21日

――ワークショップを経て、晴れて皆さん5人が製作実地研修に進むことになり、短編映画の脚本指導が始まりました。

 

高橋 9月から11月まで、一言でいうと地獄でした……(笑)。仕事で日本にいない期間もあった中で、書き直しをして提出しての繰り返し。徹底的に追いつめられました。でも、講師の方もそういう狙いがあったんだと思うんですが、一回完全に破壊されたことで良い意味で脚本が進化しました。

 

三宅 僕もすごく苦労しましたね。厳しい駄目だしが入るので、新しい脚本を見せに行くのが嫌で嫌で……。書き直したものに対して自分の気持が乗らないことがあったりとか。でも、そういう中で桝井さんからちょっとした一言をいただけて道が開けたんです。桝井さんって、やっぱりすごいプロデューサーなんだなと実感しました。

 

藤村 僕は、高橋くんや三宅くんとは逆で、あまり苦労しなかったんです。これじゃいけないんじゃないかな?って思っている部分にOKをもらえたりするので「えっ?」ってなったり、本当にこの脚本でいいのかって思ったり。こういった環境で脚本を直せる機会なんてそうそうないので、ちょっと物足りなさを感じたのも正直な感想です。

 

 講師の側で、ある程度のラインが引いてあって、そこに行きついたと判断した時点で、後は現場のプロデューサーに任せるみたいな形がありましたね。僕なんかも、物足りないと思った方だから、そういう意味では、徹底的に指導された高橋くんや三宅くんが少しうらやましく感じますね。

 

松永 ndjcの脚本指導って、特殊な環境なんですよね。商業映画なら有無を言わさず「こうしなさい」って直されるところが、そうはならない。あくまで作家性を伸ばすプロジェクトだから、監督のやりたいことを尊重しながら、これもいいんじゃないか、あれもいいんじゃないかって問われるんです。だから、厳しいという感想もわかるし、物足りないと思う気持ちもわかる。でも、最終的にはそれぞれ自分たちの今のベストな脚本にはできたんじゃないかなと思います。納得できなかった脚本だとしても、それが僕たちの今の力なんじゃないでしょうか。

 

ndjc撮影実習の様子.jpg 


――脚本指導を経て、いよいよ撮影に入りました。

 

 僕は、脚本指導が終わってからが地獄の始まりでした……(笑)。作品中に動物を出すという難題があったこともあるし、まわりの人から森くんのやりたいようにやったほうが良いと言われたりしていたので、変に自分で盛り上がって、プロデューサーの意見に「それは嫌です」とか反対しちゃったり……大変でした。ただ、どうやったらプロデューサーや現場スタッフに自分の意見が通るのかを考える良い機会になりました。

 

三宅 僕の作品についてくれたプロデューサーは、ちょっとアプローチが違って、意見を戦わせるよりも、僕のイメージをどう実現させるかを考えてくれました。作品は、予算内でどうやって海にイカダを浮かべるかが大きな課題だったので本当に助かりました。自分のできないことをやってくれる人がいる撮影環境って初めてだったので、とても有難かったです。

 

松永 僕は、ほとんどのスタッフが初対面の中で、まず自分がどんな人かということを一から説明していって、プロデューサーには芝居をしっかり撮りたいんだというのを理解してもらえました。そうしたら、プロデューサーからオーディションはワークショップ形式にしようと提案していただいて、主役2人の男の子を選ぶのに相当時間をかけることができました。理想のキャスティングができたのは、プロデューサーのおかげです。

 

藤村 僕の作品も、キャスティングは松永くんと同じようなワークショップ形式でオーディションをして、色んな俳優の組み合わせを試させてもらったんです。あれはすごく良かったですね。こんなふうにキャスティングする方法があるんだなと勉強になりました。キャラクターの関係性がぐっと深まるんですよ。

 

三宅 俳優の人選でいうと、僕は経験豊富でネームバリューがある人に出演していただきたいと思って、筧利夫さんに主演をお願いしたんです。やっぱり筧さんクラスの俳優さんはすごい。詰めのあまい部分は全部指摘されてしまって、撮影中はずっと筧さんとの戦いでした。でも、本当に良い経験になりました。筧さんからは、次回作にも出してくれと言われるまでの関係になれました。

 

 僕の作品には、村田雄浩さんに出演していただいたんです。三宅くんのように“戦った”わけではないんですが、やっぱり細かい部分の指摘は鋭かった。第一線で活躍されている役者さんって、やっぱりすごくよく考えてるんだなと思い知らされましたね。

 

 

――初めての35ミリフィルム撮影はどうでしたか?

 

藤村 僕は、あえて35ミリだからということは気にするのもいけないのではと思って、いつもどおりに撮ろうと臨んだんです。でも、撮り終わった今になって考えると、ひょっとすると35ミリで撮れるチャンスなんて今回が最初で最後だったかもしれないし、もう少し丁寧に撮ったら良かったなと後悔もしています。

 

 「これは映画的な画だ」とか「これはテレビ的な画だ」とかよく言われますけれど、これまでいまいちピンときてなかったんです。それが、今回35ミリで撮ってみて、おぼろげながらその違いが理解できたように感じます。35ミリでライティングをかっちり決めて撮ると、デジタルで撮る以上に長まわしに耐えうるんだなと実感しました。

 

松永 僕は、35ミリ特有の雰囲気に頼っちゃいけないなとも思いましたね。フィルムはデジタルよりも画の質感がぐっと高まるから、何を撮っても良く見えてしまう。森くんの言うとおり、確かに35ミリだと長回しに耐えうるんだけれど、それに酔ってしまっちゃいけない。その怖さを感じましたね。

 

三宅 僕も、35ミリで撮るからと丁寧さを意識し過ぎたことで、逆に失敗してしまったところがあるかもしれません。もっと今までやってきたとおりにカットを割ってもよかったかもしれないと今になって思います。メディアの違いってあまり関係ないのかもしれません。難しいですね。

 

高橋 現場作業に関しては、これまでとまったく違いましたね。特にライティングです。デジタルで撮る以上に手間をかけて、全てのライティングをきっちり決めないといけない。35ミリだと長まわしに耐えるっていうのは、あくまでちゃんとライティングがされているからだと思いますね。35ミリだと、事前の作業を丁寧にすればするほどに意図が反映されるんですね。もちろんその分、狙いが問われるなと実感しました。

 

 

――完成した作品の反省点を教えてください。

 

高橋 合評会でもカット割が雑だと指摘されてしまったんですが、時間に追われたのもあって全体的に細部が粗雑になってしまったというのが最大の反省点ですね。35ミリ撮影が、こんなに手間がかかるものだということをしっかり事前に踏まえた上で、もっともっと丁寧に撮るべきでした。今後の課題になりました。

 

藤村 僕も高橋くんと似ているけれど、35ミリで撮るんだという意識が足りなかったというのが大きな反省点です。いつもどおりに撮ろうという意図があったとはいえ、やっぱりもっと大事に撮るべきだった。今になって後悔してしまいます。

 

松永 僕は、作品制作を通して、現時点での自分の力量、実力のなさを改めて思い知らされました。特に脚本を書く能力に関しては、もっともっと高めていかなくては商業映画の世界では活躍できないんだと感じさせられました。

 

三宅 撮影に関しては丁寧に撮ろうというのを意識して入って、ある程度やりたいことはやれたように感じています。一方で、その元となる脚本の詰め方がまだまだ甘かった。それが最後まで悔やまれるところです。

 

 これまで行き当たりばったりで、勘に頼って自主映画を撮ってきたことが今回の作品に表れてしまいました。映画の作り方がまだまだ雑でした。もっと計画性を持って丁寧に緻密に狙いを持ってやらないといけないんだなというのが、一番の反省点です。

 

ndjc作品イメージ.jpg 


――最後に、改めてndjc全体の感想と来年度以降の応募者にアドバイスをいただけますか?

 

高橋 今回は短編を撮らせていただいたわけですが、あくまでndjcは将来的に長編を撮る作家を育成するためのプロジェクトだと思います。これで満足せず、大きなステップにしなければなりません。次にndjcに参加しようとする方にも、長編を撮ってやるぞ、劇場で一般のお客さんに見せてやるぞと最初から意識して応募してもらいたいですね。

 

藤村 せっかくこんな貴重な経験をさせてもらったわけですから、これを生かして5年後10年後に僕たちが活躍してこそ、このプロジェクトの意味が出るのだと思います。そういう意味で僕たちには大きな責任があります。次の応募者に対しては、当たり前だけれど「手を抜くな」と言いたいです。これくらいのものでいいんだと思ったら、そんなに甘くないぞと。

 

松永 ndjcで作った作品は、商業ベースに乗るものではないですから、そういう意味では失敗してもいいんですよね。作品の良し悪しよりも、むしろ自分自身がそれをちゃんと評価できるかが大切なんだと思います。失敗をどう成功に変えていけるか。それを、藤村くんの言うように、僕たちは5年後10年後に問われるんだと思います。ndjcに興味がある人は、とにかく応募した方がいいです。大変なところもあるけれど、お金出してもらって35ミリで30分の映画が撮れる機会なんてそうそうないですから。とても良いプロジェクトですよ。

 

三宅 ndjcは始まって5年目ですが、良い作家と作品をどんどん生み出せる環境はもうできていると思います。来年度以降は、もっと上映機会が増えることを期待したいですね。アドバイスを送れる立場にはないけれど、とにかくすごく良い企画ですから、映画作家を目指す人は何も考えずにチャレンジして欲しいです。

 

 本当に他ではない良いプロジェクトですよね。これからも10年、20年と続いていって欲しいです。日本中に自主映画を撮っている人はいっぱいいて、才能ある人もたくさんいるはず。その中で、どう頑張るかが大事なんだと思います。「世界チャンピオン目指すくらい頑張って日本チャンピオンになれるかなれないか」ですよ。僕はこれからも妥協せずに映画監督を目指しますから、来年度ndjcに参加する人も同じように頑張って欲しいと思います。

 

――皆さん、どうもありがとうございました。今後の活躍を期待しています。

 

 座談会に登場してくれた5人の監督が、「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」の2010年度製作実地研修で完成させた5本の短編映画は、今後国内外の映画祭や上映会などで一般上映されていく。また同プロジェクトは、2011年度も引き続き実施されることが決定。募集案内は公式ホームページ5月中に告知される予定になっている。(了)

※記事は取材時の情報に基づいて執筆したもので、現在では異なる場合があります。


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