オレたちが映画界の未来を担うぞ――。
映像産業振興機構(VIPO)が毎年企画・実施する文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」は、このほど今年の5作品が完成した。2月21日(月)に東京の新宿バルト9、2月28日(月)に大阪のシネ・ヌーヴォで業界関係者向けの合評上映会で初公開される。
有望な若手映画作家の作品が今年も出来上がった。応募多数の中からワークショップを経て選抜された5人の監督は、ndjcの最終プログラムに当たる「製作実地研修」に昨年初秋から励んできた。脚本指導を受けた後、11月より順次クランクインし12月中にアップ。ポスプロ作業を終え今年1月末までに無事に作品を納品した。
プロのスタッフやキャストに囲まれ、全員が初めての35ミリ撮影。慣れない環境に戸惑いながらも、「いつかプロの映画監督として活躍してやるぞ!」という熱い思いを1ショット1ショットに注ぎ込んだ。
生まれた5作品には、各監督の個性が際立つ。社会派ありコメディあり青春劇あり、バラエティ豊かなラインナップになった。出来栄えも申し分なし。短編ながら、それぞれ百戦錬磨のプロデューサーらを納得させる作品に仕上げた。
合評上映会には、映画関係者や報道陣らを招き、監督たちが自作をプレゼンテーションする。業界に向けて直接実力をアピールできる貴重な場。作品を完成させ、ほっとしたのも束の間。5人の若手作家たちは、期待と緊張に胸を膨らませ、その日を待っている。
東京、大阪で行われる合評上映会には、一般モニターも募集中(東京20名、大阪10名)。その後は地方会場でも実施が予定されている。詳細はndjcのホームページ(http://www.vipo-ndjc.jp/)まで。各作品の詳細は以下のとおり。
高橋康進監督「曇天クラッシュ」(30分)
【キャスト】前田広治、野村佑香、清水智史、永倉大輔、木之元亮
【スタッフ】制作プロダクション:シネムーブ/プロデューサー:臼井正明、古森正泰/脚本:高橋康進/音楽:富貴晴美/撮影:髙橋哲也/照明:守利賢一/キャスティング:空閑由美子/スタントコーディネート:佐藤秀美/編集:小堀由起子/スクリプター:山下千鶴/整音:早川文人/助監督:鈴木朋生/製作担当:吉崎秀一
【あらすじ】実家を継ぐために帰って来た自動車修理工の慎司は、父・哲司が自動車偽装事故で保険金詐欺を働いていることを知るが、しだいに哲司のペースに巻き込まれていく。一方、実家に束縛されて育った妹の陽子は、この曇天の街から抜け出てマリブに行きたいと夢を漏らす。そんな折、哲司が偽装事故で大怪我を負ってしまい、哲司の代わりに慎司が偽装事故を行うために訓練を始めるが――。地方都市で暮らす一家を描いた社会派ドラマ。
【撮影エピソード】12月18~22日、茨城県つくば市、常陸市の自動車工場などで撮影した。シナリオ上4回登場する車のクラッシュシーンに苦心。特に、クライマックスにあたるシーンは、カメラを3台投入してハイスピード撮影を試みた。天候に左右され、スケジュール変更も余儀なくされたが、最終日の深夜まで粘りに粘った末、理想のクライマックスを演出することに成功した。
藤村享平監督「逆転のシンデレラ」(27分)
【キャスト】志保、大和田健介、田中こなつ、土井玲奈、西村優奈、冨澤めぐみ、草野イニ
【スタッフ】制作プロダクション:オフィス・シロウズ/プロデューサー:久保田傑/脚本:藤村享平/撮影:小松原茂/照明:松隈信一/録音:岩丸恒/美術:金林剛/編集:山田佑介/衣裳:西原有美/ヘアメイク:有路涼子/スクリプター:押田智子/音楽:濱﨑明寿/助監督:桑原周平/制作担当:芳野峻大
【あらすじ】男からモテモテで自他共に認める美少女高校生・希だったが、“ブス専” 芳也の前にあっさりとふられてしまう。希が人生で初めて味わった屈辱。女の意地を賭け、芳也を振り向かせるために、彼女はブスになることを決意する――。価値観の逆転が生む奇妙なラブコメディ。
【撮影エピソード】主人公・希役にふさわしい“美少女女子高生”を探すべく、300人超のオーディションを実施。見事主役を勝ち取ったのは子役の時から活躍する女優の志保。ところが、ブスを目指すという物語のため、現場ではなぜかほぼブスメイクで過ごし、ソフトボールが顔面に当たって倒れたり、窓から落ちたりと過酷な撮影が……。彼女の体を張ったコミカルな演技は必見。撮影は11月23~27日、神奈川県横浜市、川崎市のカフェ、美容院、高校などで行われた。
松永大司監督「おとこのこ」(30分)
【キャスト】清水尚弥、吉原拓弥、内田慈、磯貝奈美、吉永秀平、山下容莉枝
【スタッフ】制作プロダクション/松竹 映像製作部/プロデューサー:田村健一/協力プロデューサー:田沢連二/脚本:松永大司/音楽:柴草 玲/撮影:池内義浩/照明:原 由巳/録音:岸田和美/編集:橘樹陽児/装飾:川田直樹/スクリプター:小泉篤美/スタント:髙橋昌志/音楽プロデューサー:竹中惠子/助監督:足立公良/製作担当:村山大輔
【あらすじ】クラスメートからイジメられる中学3年生の賢と透。現実を淡々と受け入れる透とは対照的に、賢は自殺を考えるほどに追い込まれていて、他人の愛情を得られる術がわからずに孤独にもがき苦しんでいる。ある日、透に理不尽な怒りをぶつけてしまい落ち込む賢を、家庭教師の理恵が校門で待ち受けていた。賢は理恵のバイクに乗せられ、夜の街に向けて走り出すが――。思春期の男の子の心理を繊細に描く。
【撮影エピソード】最もこだわったのはキャスティング。「会ってから決める」を大前提に、主人公を含めた中学生役は中高生あわせて合計181人に会って決めた。撮影は12月18~21日、静岡県沼津市、渋谷区恵比寿、神奈川県川崎市、千葉県千葉市など広範囲で行った。クライマックスの夜間撮影は、なかなかOKを出せずにいるうちに天候が悪くなり遂に雨に。それでも最高の演技を求めて納得いくまで撮影を続けた結果、雨で草むらが濡れて、しっとりとした素晴らしいシーンに!
三宅伸行監督「RAFT」(27分16秒)
【キャスト】筧利夫、吉岡 澪皇、松岡茉優、 坂田雅彦
【スタッフ】制作プロダクション:日本映画撮影監督協会/制作責任者:兼松熈太郎(JSC)/プロデュサー:鯉渕優/脚本:三宅伸行 荒井真紀 /撮影監督:宝性良成(JSC)/照明:細谷育男/調音:岸田和美/録音:加唐 学/編集:石島一秀/音楽:芳垣安洋 高良久美子/美術:吉村昌悟/音響効果:帆苅幸雄/キャスティングディレクター:前島良行/助監督:畑井雄介/制作管理:石田耕一郎/制作担当:上田浩士
【あらすじ】ある島に降り立った少年が、海岸でイカダを作っている男に近づき、作業を手伝う。2人はお互いをよく知っているように見える。明らかになる3年前の海難事故。ひとりの子どもがイカダで海へ出て行方不明になった。実は、男が行方不明の子供の父親であり、少年はその子供の親友だった。ぶつかりながらもイカダを組み上げ、海へ漕ぎ出す2人の、心の葛藤とふれあいを描く。
【撮影エピソード】11月30日~12月4日、愛知県・篠島で撮影。事前に3回行ったロケハンでは海は非常に穏やかだったが、撮影時には海に出るのが危ぶまれる天候に。クライマックスはどうしても海に出なければいけないため、スケジュールを急きょ変更しクライマックスシーンを先に撮影、無事クランクアップに至った。この地域の海が4日間も薙いでくれたというのは奇跡に近いことだそうで、非常に天から守られた撮影になった。
森英人監督「動物の狩り方」(29分42秒)
【キャスト】能年玲奈、河口舞華、木下ほうか、星絵里香、村田雄浩
【スタッフ】制作プロダクション:東宝映画製作部 若手映画作家育成プロジェクトチーム/プロデューサー:田中忠雄/技術プロデューサー:平良榮章/アシスタントプロデューサー:落合真奈美/脚本:森英人/撮影:村埜茂樹/録音:久野貴司/照明:加藤桂史/装飾:臺 勝隆/編集:小原聡子/助監督:猪腰弘之/スクリプター:河島順子/製作担当:星野友紀/音楽:大賀智章
【あらすじ】高校生の美由紀は昔父親に殺されそうになったことがある。ある日、森の中で父の幻覚を見て気絶し、不思議な男に起こされる。男はそっけなく去ってしまうが、美由紀は後を付けると、鹿を狩っている男の姿が美由紀の目に飛び込んできた。翌日、美由紀は再び男の場所へと出向き動物の狩り方を教えてくれるよう頼む――。トラウマを持った孤独な女子高生が“生”を見つめる。
【撮影エピソード】12月1~5日、埼玉県飯能市の森などで撮影。動物を使う撮影に工夫を凝らした。生きた鹿を使うのは高額で現実的ではない、剥製だと剥製にしかみえない。そこで地元の猟友会に相談すると、運良くしとめたばかりの鹿があった。兎は近所の小学校が飼っている兎を借りてきて使用。撮影中はプロデューサー自ら自宅で飼い、撮影当日に万全の状態で臨んだ。
※5作品とも、製作総指揮は松谷 孝征(VIPO理事長)、製作はndjc2010事務局(VIPO)。
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