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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.148】
正月興行、東宝シェアに「もう言わねーよ」

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.148】
正月興行、東宝シェアに「もう言わねーよ」

2014年01月08日
 今年も、よろしくお願いします。日々移りゆく「興行戦線」なるものの論陣を今後も張りますが、ときに、様々な難癖(というより、腑に落ちない論点)には反論をしていく所存です。映画興行の重要性が、広く知れ渡ってきたのは非常にうれしいのですが、興行を絶対視するのは考えものです。映画にとってとても大切な要素ですが、絶対のものではありませんので、誤解なきように。

 さて、正月興行であるが、「永遠の0」が、1月1~5日までの5日間で、トップ成績だった。これに、「ルパン三世vs名探偵コナン」と「ゼロ・グラビティ」が続く。当初、正月興行の「ゼロ対決」とも私は指摘したが、そのニュアンスに間違いはなかった。ただ、その内実には微妙な要素もあったが、今回は「ゼロ・グラビティ」のことには触れない。

 こんな話を聞いた。神奈川県のあるシネコン(IMAX設備なし)では、東宝の配給作品の占める興収比率が、この5日間、全体の何と50%近かったという。東宝配給作品は、「かぐや姫の物語」や「清須会議」も含めて、8作品にのぼる。これだけも異常な数なのに、この驚くべきシェアである。

 東宝は、かつて経験したことがないような充実した正月興行であったそうだ。ひょっとして、さきの2本で、最終の興収が100億円を超えることだって考えられる。常識はずれである。いったい、何が起こっているのか。

 と言って、これまでと同じことが、東宝の番組編成上、興行上で続いているだけのことである。正月は、少々がんばり過ぎたのだろう。ただ今回、とくに重要なことがあった。「永遠の0」は、東宝とアミューズの企画作品であったことだ。テレビ局ではない。東宝は、アミューズと共同ながら、自前で大ヒット作品を送り出せる力をつけている。

 と言って、これまでも、そうした作品はあった。東宝主導の製作作品として、「世界の中心で、愛をさけぶ」や「告白」などが、すぐに浮かぶ。その大ヒット作が、ついに年間を通しての勝負どころである正月興行に登場した。この意味は、東宝にとって、計り知れないほど大きい。

 結論。東宝の独壇場、恐るべし、ではない。この独壇場、許すまじ、でもない。こんなことは、口が酸っぱくなるほど、俺が言ってきた。誰も、どこも、耳を傾けなかったぜ。もう、言わねーよ。と、だんだん口が悪くなってきた。結論。ではどうするのか、映画界よ。

 そんなこと知るか。東宝のラインナップは、さらに今年、研ぎ澄まされてきているぜ。10億円を下回る作品が登場したら、そのことが事件なのである。東宝はついに、ここまで、来た。

(大高宏雄)

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