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【大高宏雄の興行戦線異状なし〈特別編〉Vol.145】
「風俗行ったら~」で、映画館行ったら

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【大高宏雄の興行戦線異状なし〈特別編〉Vol.145】
「風俗行ったら~」で、映画館行ったら

2013年11月14日

 11月10日日曜日の午後1時前、新宿ミラノ座に赴いた。「風俗行ったら人生変わったwww」を見に行くためだった。上映していなかった。前日9日の土曜日、午後12時50分の回が同館であることを確認していたので、当然ながら翌日もその回の上映があるものと思っていた。なかった。

 窓口で上映時間を見ると、「風俗~」の「風」の字もなかった。隣にいた20代の男性が、午後2時30分の回の「TAP 完全なる飼育」のチケットを購入していた。「あれ、おかしいな」。窓口の担当者に聞くと、“その日” は、「風俗~」は午前の回に1回のみの上映であった。前日の上映と、違うスケジュールだった。

 「あ痛―」。油断を、したのである。まだまだ、俺は甘いな。映画を見るのは、今非常に難しくなっている。そのことに、少し無自覚だった。今や、映画を見るためには、事前の徹底した上映スケジュールの “精査” が必要なのである。私は、冗談で言っているのではない。

 その日のわがスケジュールは、無方向になった。その日、私はびっしり予定を組み、次の映画を見る時間も決めて行動している。ミラノ前で、その後の2時間という貴重な時間がスポッと抜けた。さあ、どうするか。ナンパに精を出すわけにもいかない。年を考えろ。

 ネット配信と同時公開。映画は1000円。「風俗~」は、新しい試みの1本である。私はすでに、そのことの意義や課題を、2紙の新聞紙上でコメントしている。ただ、映画を見る現場に今回立つことで、それとは全く別のことに、思いを馳せることになった。

 ネット配信の成果はともかくとして、単なる単館興行ではなく、さらに低額の料金設定などの点も含めて、映画館で見られる機会が増えたように感じたのに、このような上映回数や時間帯では、少々マズいのではないかと。

 見られなかった私が自身で甘いと感じても、一般の人たちが私のような状態に陥った場合、果たしてそう思うだろうか。思わないだろう。だから、せっかくの貴重な試みが、映画館の場では、中途半端な上映になっているような気がしてしまうのである。

 こうした上映の状況だと、はじめにネット配信ありき、なのだろうかと疑ってしまう人が出てくるのではないか。ネットと連動ではなく、ネット優先。映画館を優先してくれとは言わない。ちゃんとしたルールのもと、上映はしてほしいな。

 歌舞伎町の雑踏を寂しく去りつつ、そんなことをあとあと思ったのだった。

(大高宏雄)

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