閲覧中のページ:トップ > コラム > 特別編集委員コラム >

【大高宏雄の興行戦線異状なし〈特別編〉 Vol.116】
プレノン・アッシュ倒産、 “次”

特別編集委員コラム

最新記事

【大高宏雄の興行戦線異状なし〈特別編〉 Vol.116】
プレノン・アッシュ倒産、 “次” が出ないことを

2013年02月26日

 前回、多忙で当コラムを休んだことをおわびしつつ、この2週間足らずの間に、興行面のみならず、映画界では実に多くの出来事が起こっていることに、改めて驚かされる。その大きな一つが、製作・配給会社プレノン・アッシュ(以下、プレノン)の倒産である。最近は、お付き合いがなくなってしまったが、私にとって懐かしい会社であるので、何とも残念であった。

 近年は活動が限定的であったが、ある大物政治家のグループ会社が資金を出したと言われる邦画の「スープオペラ」(2010年)などの製作、配給をしていた。ただ、2億円近い製作費がかかったと推測される「スープオペラ」の興行が厳しく、その時分から資金繰りが大変になっていたという情報もある。

 負債総額は、6億円を超える。これには驚いた。何故、そこまで膨らんだのか。製作幹事をつとめる日中合作の「一九〇五」の製作が、尖閣列島の問題が起こったことで、中国側との連携に支障をきたし、製作準備金などが吹っ飛んだことは想像できる。だが、規模の小さな会社にしては、負債額が大きすぎる。

 「一九〇五」を配給する予定だった松竹は25日、「製作が中止になった」とコメントした。幹事会社が倒産したので、製作の続行が難しくなったのだろう。今後すぐに、尖閣の問題が解決できるわけもない。今日のスポーツ紙は、「一九〇五」に出演予定だった前田敦子がらみで大きな扱いをしたが、この一件(倒産)はもちろんそれを超えて、かなり大きな問題をはらんでいる。

 倒産の背後で、尖閣、合作、プレノン云々を超え、多くの中小の製作、配給会社がかかえている問題が浮き彫りになっているからだ。とくに洋画の配給に従事してきた中小の配給会社にとって、問題の根は相当深い。

 これらの会社は、洋画の配給が厳しいので、邦画や合作の製作に手を出す。これが、思うように回らない。興行の低迷に、昨今のDVD市場の厳しさがのしかかり、次第に資金繰りが滞っていく。推測だが、プレノンは、合作という大きなプロジェクトで、これまでの状況の打開を図ろうとしたのではないか。ただ、運が悪い局面もあったが、そのプロジェクトは少し荷が重すぎた気もするのだ。

 プレノン・アッシュは、ウォン・カーウァイ監督作品などの配給で、単館興行の先端を走った時代もあった。80年代以降のミニシアター文化のなかで、その果たした役割は非常に大きなものがあったことは、この場で強く強調しておきたい。 “次” が、出ないことを祈るのみである。

(大高宏雄)

関連記事

過去のタイトル一覧

2017年

10月

2016年

1月│ 7月

2015年

1月│ 3月│ 4月│ 6月│ 8月

2014年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月

2013年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2012年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2011年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2010年

10月│ 11月│ 12月