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加速する海外展開――要望高まる行政支援

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加速する海外展開――要望高まる行政支援

2012年08月15日

 日本のコンテンツの海外展開への取り組みがより活発化している。各社個別に取り組むとともに、行政支援を求める声も一層高まっている。

 日本のコンテンツ産業の海外収入は2010年0.4兆円で、国内市場の約4%の規模。内訳は地上テレビ番組62.5億円、映画58億円、雑誌・書籍128億円などで、ゲームソフトの4,115億円を除いて極めて小規模にある。特に地上テレビ番組の輸出は08年度の92.5億円をピークに減少傾向、10年度には62.5億円とピーク時の3分の2になっており、コンテンツの海外展開促進へ官民連携による方策が求められているのだ。

 その中、総務省は8月3日、「コンテンツ海外展開協議会」報告書を作成し、海外展開促進へ具体的方策10項目をまとめた。この協議会は、放送局などコンテンツ関連業界などの幹部で構成され、今年3月26日から7月13日まで5回会合を開き、ヒアリング、意見交換を行い、今回中間的に報告書をまとめた。

 海外展開において、行政支援を含め様々に課題は多く、報告書では具体的方策を10項目に集約した。字幕付与などの費用は「一定の需要が創出されるまで政府が支援」で促進すべきとするなど、各施策において行政の支援が求められることを提言している。10項目の提言の中で、主に行政支援が関わる点は以下のとおり。

▼「海外放送メディアを通じた専門チャンネルやレギュラー放送枠の確保に向けたリスクマネーの供給や政府による支援の可能性を含め、官民一体の継続的な海外発信に向けた仕組み作りの検討が必要」

▼「コンテンツ販売価格の安い新興国向けの字幕付与や再編集等の費用に対しては、一定の需要が創出されるまで政府が支援し、海外展開に向けた機会創出を促進すべき」

▼「幅広い分野での収益確保と現地に根付いた展開を図る総合的な海外展開を進めるため、コンテンツ産業と消費財産業のマッチング機会の創出など、官民が一体となって取り組むべき」

▼「諸外国における外国製コンテンツに対する規制への対応には、政府全体の問題として関係省庁が積極的に連携し、二国間協議等を活用しながら、日本としての問題意識を都度相手国に伝えていくことが必要。国際共同製作やインターネットの正規配信といった現実的な対応も合わせて推進すべき」

 ちなみに、この協議会の一方で、総務省は8月10日、公募した “海外へ発信する映像コンテンツの企画” で、応募合計107件の中から10件の企画を選定した。10件の事業者は、一般社団法人全国地域映像団体協議会(全映協)、沖縄テレビ放送、㈱コスモ・スペース、山形テレビ、中部日本放送、東北放送、北海道テレビ放送、北海道放送、(有)アライルエンジニアズ、読売テレビ放送。選定された企画は、共同製作された映像コンテンツから順次、共同製作の相手先となる海外放送事業者等の放送枠で放映される予定。

 これは、総務省の平成24年度予算施策「国際共同製作による地域コンテンツの海外展開に関する調査研究」に関して公募したもの。同研究は、地域の放送局や番組製作会社等が、海外の放送局と映像コンテンツを共同製作し、それらのコンテンツを海外の放送局等を介して継続的に世界へ発信する機会を創出することにより、コンテンツの海外展開の取組を促進する事業だ。請負主体の電通を通じて、国内のローカル局および番組製作会社を公募対象に、海外へ発信する映像コンテンツの企画公募を7月10日~7月27日まで実施し、応募企画の中から、同事業の支援対象となる企画を選定した。

 日本のコンテンツの海外展開は、昨今アジア勢におされて市場が減少している。業績拡大へ日本国内だけでなく海外に目を向け始めた日本の放送業界。昨年よりビジネスの本格化へ様々な施策を展開中。この秋、続々と開催される様々な国際的イベントの動向も注目されそうだ。

(戎 正治)

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