「もしや認定が内定したのでは」そう思ったBS申請者はいただろう。
認定答申直前の約1週間に、申請者は総務省に呼ばれた。資料提出を求められたのだ。全ての申請者が対象だったかどうかは定かでないが、内々の事前告知があるだろうと見られていただけに、呼ばれた申請者は期待して総務省に足を運んだ。中には、3連休中に連絡を受け、休み明けの12日(火)、つまり認定前日に来るよう指示されたところも数社あったと聞く。それだけに「認定」の2文字が頭に浮かぶのは当然だ。資料の受け取りは事務的に行われ、感触も得られないままとなったようだが、それでも期待はする。しかし結果は必ずしもそうではなかったようだ。単に不備のない資料集めだったということか。選ぶ方も選ばれる方も大変な作業と心労である。
申請からの数カ月間、何度もヒアリングが行われ、申請者は事業計画など資料提出している。編成計画ではただ番組内容を記すだけでなく、番組調達先からのお墨付きを頂いたりしなくてはならない。大手広告代理店や関係者からのハンコもとったりと、盤石な資料作りとなる。そうやって5社7チャンネルが決まった。
大方の予想を外す結果もあり、関係者だけでなく、認定された当事者さえ驚いた様子も見られた。大半は110度CS放送からの移行組みだが、放送(番組供給)契約更新が難しく行き場を失う不安を抱えた事業者もいて、BS放送の免許取得はホッとしただろう。有力な事業者なだけにその点は総務省も考慮したと推察される。
認定結果の分析では、総務省に日参して勝ち取った、政治的根回しが効いた、対米関係の配慮、110度CS放送の高画質化を促進するために広帯域チャンネルのBSへの移行が優先された、等々様々な見方がされている。
それにしても13日(水)夕方の認定答申まで結果はもれ聞こえてこなかった。当落は既に固まっていたと推測されるものの、慎重だったのか、かたくガードされたようだ。片山総務相は19日、5社7チャンネルに認定証を交付した。BS放送は前回認定のチャンネルと合わせ2012年夏までに30チャンネルに拡大、約3倍近く増えることになる。
そして今度は、110度CS放送の申請受付を年内か年明けに行う見通し。110度CS放送の高画質化を促進するため、空き帯域獲得をめぐる戦いとなる。さらにその先には、現在地デジ難視聴解消のために暫定的に使用されているBS第17ch(2~3チャンネル分)の帯域獲得の争いが予想される。いずれも難題だ。だが、それが終われば特別衛星放送(BS放送、110度CS放送)は完了する。視聴者にとってどういう存在になるのだろうか。総務省と放送事業者の心労は続く。
(戎正治)