今年の夏興行は、数字的には好調だった。「風立ちぬ」と「モンスターズ・ユニバーシティ」が引っ張った。ティ・ジョイでは、17サイト(163スクリーン)の8月累計興収が18億3836万2750円を記録し、同社の月計成績の新記録を樹立した。他の興行会社でも、8月累計が新記録のところが出ている。
夏興行の具体的な興収上位作品については、本紙9月5日付に掲載されている。上位5本のうち、4本が邦画だった。洋画の実写作品が、20億円を前にして、なかなかそこから先へ進めない現状が、非常に気になるところだ。
さて、「マン・オブ・スティール」である。これで、思い出したことがある。いきなり、“論調”が変わりますので、悪しからず。それは大昔、封切りの「スーパーマンⅡ 冒険編」を、女子高校生と見に行ったときのことだった。
映画館は、新宿ピカデリー。今のシネコンではなく、昔の新宿ピカデリーである。興奮したなあ。隣に、女子高校生がいたからではない。「スーパーマンⅡ 冒険編」は完璧なデートムービーとの推測どおり、彼女の気持ちをとらえるのに、この映画の“選択”が間違っていなかったからである。スーパーマンと一緒に飛翔する夢とロマン。映画は、これを女性たちに叶えてくれたのだ。
ちなみに、またも大昔の話をすれば、わたくし、女性を連れて映画を見に行くとき、よくポカをやっていた。シネマスクエアとうきゅうに、柳町光男監督の「さらば愛しき大地」を、女子高校生(別に趣味ではありません。たまたま)と一緒に見に行き、ドン引きされたことがあった。
当時、「さらば~」は試写で見ており、傑作だったので、やっと誘った彼女にも見せてやりたいとの単純な理由だったのだが、それが間違いだった。どのシーンでとは言わないが、彼女、途中で帰ったからね。柳町さんには何の怨みもありませんが、これは悔いているんですよ。選択を間違ったと。
さて、論調を変える。「マン・オブ・スティール」は、8月30~9月1日までの3日間で、全国動員26万7786人・興収3億4215万8000円だった。
物足りない。映画を一見して、これは“スーパーマン”ではないのがわかった。暗い鋼鉄男の破壊映画である。これは、デートムービーにはならない。
今や極論すれば、スーパーマンならぬ“鋼鉄男”が、「さらば愛しき大地」になっているのである。もちろん中身ではなく、若い女性から見たらの話であるが。だから、本作は大問題作だと言って差し支えない。米映画はついに、ここまで来てしまったのである。
(大高宏雄)