閲覧中のページ:トップ > コラム > 特別編集委員コラム >

【大高宏雄の興行戦線異状なし〈特別編〉Vol.136】
テレビ局出資映画の今後、甘くはないぞ

特別編集委員コラム

最新記事

【大高宏雄の興行戦線異状なし〈特別編〉Vol.136】
テレビ局出資映画の今後、甘くはないぞ

2013年08月08日

 夏興行真っ只中である。100億円に向かう「風立ちぬ」、80億円超えが見えてきた「モンスターズ・ユニバーシティ」と、アニメばかりがやけに目立つ。そんな矢先、民放テレビ局出資の主要作品の今後のリストが出た。なかではとくに実写作品に注目するに、今年の流れのままに、甘くはないぞ、と率直に思ってしまったのである。

▽日テレ=「ガッチャマン」「謝罪の王様」「潔く柔く(きよくやわく)」「かぐや姫の物語」「ルパンVSコナン」

▽テレビ朝日=「少年H」「タイガーマスク」「トリック劇場版 ラストステージ」

▽TBS=「劇場版 ATARU」「おしん」「SPEC~結~」(2本)「抱きしめたい」「クローズ EXPLODE「WOOD JOB!」

▽テレビ東京=「キッズ・リターン 再会の時」「人類資金」「利休にたずねよ」

▽フジテレビ=「そして父になる」「清須会議」「カノジョは嘘を愛しすぎてる」「ジャッジ!」(以上、文化通信速報より)

 8月中旬以降、来年初頭までの作品だが、もちろんすべてではない。推測するに、これまでの実績から、「清須会議」「トリック劇場版」「謝罪の王様」「SPEC」などが、ある程度の成果を見せるだろうと思う。すべて、東宝が配給であり、実写ヒットの流れ的にはこれまでと大きな変化はない。

 ここまでは、それなりに読める。今週公開の「少年H」も、悪い成績ということはないだろう。ただ一抹の不安として、戦争下における家族ドラマという設定が、少しまっとう過ぎる気もするのだ。まっとうさとは、関心の度合いを弱める作用を果たす懸念もある。

 また、定番的なラブストーリーは、安定感はあるだろうが、客層の限定化から、興行の一点突破は難しいかもしれない。

 こう見てくると、「そして父になる」が、後半のもっとも注目される邦画ということになろう。娯楽作ではないから、20億円、30億円ということはないだろうが(いや、ひょっとして、ということも)、海外映画祭の受賞、中身の今日的な切実感、主演の福山雅治人気など、これまでの邦画では前例がないような作品の“輪郭”をもっているのが特徴だ。すでに、認知度は相当なものであり、期待度からしたら、今年後半の最大話題作と言って差し支えない。

 そうは言いつつ、全体では甘くはないだろう。ある程度の成果、安定感と言い、期待度と言ったが、そこからは、何ら確定的なことはないと言っていいからだ。さて、1本1本、どのような興行的な“物語”を展開してくれるか。まさに、それこそが、わが期待感というものである。

(大高宏雄)

関連記事

過去のタイトル一覧

2017年

10月

2016年

1月│ 7月

2015年

1月│ 3月│ 4月│ 6月│ 8月

2014年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月

2013年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2012年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2011年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2010年

10月│ 11月│ 12月