夏興行は勝負がついた。よほどの異変がない限り、「風立ちぬ」がトップとなるのは間違いない。8月18日時点で、全国動員584万4683人・興収72億8010万8450円を記録した。76億円を超えている「モンスターズ・ユニバーシティ」にはまだ届いていないが、近々逆転するのではないか。
では、他作品の成績を見てみると、「映画 謎解きはディナーのあとで」が、同じく18日時点で20億円を超えたのが目につく。176万4781人・20億5722万9700円を記録した。ちなみに、この8月17、18日では、18万4785人・2億2750万3400円となり、前週土日の90.6%(興収)をキープした。
邦画の実写作品で、今年20億円を超えたのは4本目。公開順で言うと、「プラチナデータ」(26億4千万円)、「ストロベリーナイト」(21億5千万円)、「真夏の方程式」(31億7千万円、18日時点)に次ぐもの。昨年のこの時期では、20億円を超えたのが、「BRAVE HEARTS 海猿」「テルマエ・ロマエ」など8本。今年は、昨年の半分に過ぎなかった。
今年の4本を見ると、明らかな傾向がある。人気テレビドラマの映画化作品と、ジャニーズ事務所の所属俳優の主演作である。この2つのみ、という言い方さえできる。それは、フジテレビのイベント映画がなく、日本テレビにも「ALWAYS 三丁目の夕日」のようなシリーズものがなかったからである。いわば、テレビ局のヒットシリーズ、“大型映画” がないと、邦画の実写作品はとたんにヒットの規模が小さくなる。
「真夏の方程式」が、結果的に大型のイベント映画にならかったのも影響していよう。だから、こういう言い方ができる。そうしたテレビ局の大作群が、結果的になかった場合、邦画が頼りになるのは、ジャニーズ事務所所属の俳優主演作であると。というより、彼らを頼りにせざるをえない。
これが、今の日本映画(メジャー)の現状である。「こんな事態では情けないから、何とかしろ。もっと、企画を練ってくれ」とは、誰でも簡単に言える。それが簡単にできないから、ジャニーズ頼みになっているのだ。
もちろん、これでいいわけがない。ジャニーズがあり、その上で「真夏の方程式」だけではない別の俳優の主演作として、企画から何からもっともっとバリエーションのある作品が、当然出てきてしかるべきだ。それができないのは、ではいったい何故かと言えば、今の邦画界の製作の担い手が、テレビ局中心になっているからである。
もっと別のシステムから立ち上がる邦画の製作が活発化できないか。これも、口で言うのは簡単だ。東宝などはやっているのだが、まだまだである。では、どうすればいいのか。わからない。現実問題として、なかなか活発化していかないのだから。製作者の怠慢を言ってしまえば、事足りるのだが、これとて、彼らを攻めれば済む問題ではない。邦画の実写作品は、危機である。
(大高宏雄)