8月の興行は、昨年をかなり上回りそうだ。ちなみに、配給会社13社の7月の累計興収が184億9818万8310円。これは、昨年の7月累計の15%増であったから、7、8月と2カ月連続で、昨年を凌ぐ成績が見込まれる。
夏興行をけん引した「風立ちぬ」と「モンスターズ・ユニバーシティ」の成績が大きい。この2本で、200億円近い興収となる。昨年夏のトップは、「BRAVE HEARTS 海猿」の73億3千万円。2位が「おおかみ子どもの雨と雪」の42億2千万円。この2本だけで、昨年と今年は相当な差がある。
さて、昨年は8月後半が健闘した。「るろうに剣心」(30億1千万円)と「あなたへ」(23億9千万円)があったからである。今年は、この8月後半の新作が、思うようにいかなかった。
8月23日公開の「スター・トレック イントゥ・ダークネス」は、23~25日までの3日間で、動員17万6071人・興収2億5587万4300円。先行上映の成績を入れれば、25日時点では、4億1133万5300円を記録した。8月24日公開の「ガッチャマン」が、24、25日の2日間で、9万0318人・1億1569万7600円だった。
「スター・トレック~」は、華々しくも多彩な宣伝展開が、他の洋画配給会社を驚かせるほどのインパクトがあったのに、大きくは弾けなかった。ただ、前作「スター・トレック」(09年)が最終5億8千万円だったので、すでにその成績は上回っている。これだけ見れば、明らかに成功なのだが、この程度では満足いくことはないだろう。
それまでの実績を安易に追随するような後ろ向きの姿勢ではなく、それを打ち破らんとする目標を立て、そこから様々なチャレンジングな宣伝を展開する。これは、全く正しいやり方だったと思う。ただ、結果だけを見れば、その限界は残炎ながら、あったのである。
その限界は、このシリーズそのものへの関心度と絡み合う。新作の中身の鮮度、面白さは確かにあるとして、それはあくまで「スター・トレック」の枠組みのなかでの展開であることに変わりはない。この強固な枠組みのありようが、これまでも訴求力が弱く、今回の限界もまた、そこに行き着く気がするのだ。
ただ、これは結果論的な分析である。チャレンジング精神のないところに、結果はついてこない。だから、よくやったと思うし、多くの洋画配給会社に対して、宣伝面で大いに学ぶべき点を伝いえたことは、ここでしっかりと評価しておきたいと思う。
(大高宏雄)