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「名牝」の代名詞・エアグルーヴ逝く (vol.12)

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「名牝」の代名詞・エアグルーヴ逝く (vol.12)

2013年04月24日

 エアグルーヴが死にました。もう、どこから思い出を語っていけばいいのかわからないくらいエピソードが豊富な馬なので、まだ整理がつきませんが、その伝説の一部を振り返りたいと思います。とにかく、ここ10数年の日本競馬界で「中心」に位置した、偉大な名牝でした。

 「この馬は違う!」。そう認識したのは、エアグルーヴのデビュー3戦目。競馬ファンの間でも伝説と化している、いちょうステークスです。最後の直線で前が壁となり、万事休すと思いきや、態勢を立て直してゴール前急追で快勝。「凄い馬が現れた」と評判になりました。

 初めての大舞台となった次走、阪神3歳牝馬ステークスでは、ビワハイジのスロー逃げ切りに屈し2着だったものの、評判の持ち込み馬イブキパーシヴを3着に下し、力を見せました。

 しかしエアグルーヴが本当に強くなったのはこの後から。年が明けて4歳(現3歳)となり、その初戦となったチューリップ賞で、ビワハイジとの一騎打ちを圧勝で片付け(ちなみに私はビワハイジファンだったので、その力差に愕然としました)、牝馬クラシック路線の主役に躍り出ました。

 もちろん、クラシック第1弾の桜花賞は圧倒的1番人気が予想されましたが、ここで熱発により直前で出走を回避。桜花賞は一転して大混戦となり、田原騎手騎乗のファイトガリバーが優勝しました。

 余談ですが、この年は伊藤雄二厩舎が凄かったんですよね。エアグルーヴに加え、マックスロゼ、センターライジング、メイショウヤエガキを牝馬路線に送りだし、牡馬路線でもロイヤルタッチがいました。

 さてクラシック第2弾のオークス。ここでエアグルーヴは、桜花賞馬のファイトガリバーを下し快勝。世代トップの牝馬であることをしっかりと証明して見せました。

 そして牝馬路線最終戦となった秋華賞でも1番人気になりましたが、10着と生涯唯一の大敗を喫しました。レース後に骨折が判明したので、これは仕方のない負けというところでしょう。ちなみに勝ったファビラスラフィンも凄い馬でした。ファビラスも故障で引退してしまいましたが、エアグルーヴとどちらが強かったのか、もう1度対決して決着をつけてもらいたかったです。

 結局エアグルーヴは長期休養を余儀なくされ、翌年夏のマーメイドステークスで復帰。上がり馬のシングライクトークを難なく下し、華々しく復帰しました。



 ・・・すみません、いつの間にかダラダラと書き進めてしまいました。さて、これはエアグルーヴの序章に過ぎません。なぜなら、それまで勝ってきた相手は牝馬(メス馬)ばかり。しかし、この後から本当のエアグルーヴ伝説が始まります。

 次走の札幌記念は初めて牡馬(男馬)の一線級と対決。ここで、皐月賞馬ジェニュインなどに圧勝し、牝馬の枠を超えた名馬であることを印象づけました。

 そして、エアグルーヴのベストレースと言われる、秋の天皇賞を迎えます。天皇賞は、プリティキャストが制して以来17年間も牝馬の勝ち馬が出ていません。そんな中、戦前の評価は前年覇者のバブルガムフェローの1強で、エアは2番手の評価でした。

 ところが、レースは最後の直線でバブルとエアの火が出るようなマッチレース。競り合いに強いバブルを、エアがねじ伏せにいくという、「本当に牝馬のレースか?!」と驚くべきパフォーマンスを見せ、見事優勝してしまいます。

 いまでこそ、ウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタ、ジェンティルドンナの活躍により、牝馬が一流牡馬を負かすことは珍しくなくなりましたが、エアが現役だった16~17年前はまだまだ牝馬の活躍は少なく、エアの天皇賞制覇は異例中の異例の出来事。まさに歴史的名牝として、その地位を確固たるものにしました。

 その後も、ジャパンカップでは当時世界最強クラスの馬だったピルサドスキーと激しいたたき合いで2着。有馬記念でも3着と、男勝りの競馬で常に競馬界の主役でいました。

 翌年はサイレンススズカ、エルコンドルパサー、グラスワンダーといった、「超」がつく名馬の台頭に押され、GⅠを勝つことはできなかったものの、それでも2~3着に食い込み、名勝負を繰り広げました。特にジャパンカップでは、エルコンドルに敗れたものの、スペシャルウィークには完勝。今この文章を書いている最中にも、改めて「凄いメンバーと戦っているな」と感心してしまいます。

 その年を限りに現役を引退。エアは繁殖牝馬になります。そしてエアは母親としても凄かった。

 第一子のアドマイヤグルーヴは、GⅠエリザベス女王杯を2度勝った名牝に育ちました。さらに第八子のルーラーシップも香港でGⅠ制覇。そのほかにもフォゲッタブル、グルヴェイグが重賞を勝ち、オープン馬も多数輩出。セリでは、ザサンデーフサイチが4億9000万円、ラストグルーヴが3億6000万円で取引されるなど、何から何までド派手でした。

 現在競馬界には、いくつか名牝系(血統)があります。バラ一族、スカーレット一族などが有名ですが、それらと肩を並べるのがダイナカール系。ダイナカールはエアグルーヴのお母ちゃんです。この血筋から数々の名馬が生まれていますが、その中核をなすのがエアグルーヴです。エアグルーヴは死んでしまいましたが、今後もこの血統が競馬界で活躍することは間違いないでしょう。

 「名牝」の代名詞とも言える馬で、競馬ファンの間で「過去最強の牝馬は?」という論議が始まった時、まずはエアグルーヴが中心となってきます。とにかく、近年の日本競馬を語る上では欠かすことのできない、名馬中の名馬でした。

 長々と書いてしまいましたが、ここまでお付き合いくださった方、ありがとうございます。そしてエアグルーヴ、お疲れさん。


 ちなみに、キャプテンスティーヴが死んだことも触れておきます。アメリカの馬でしたが、個人的に現役時代から好きでした。日本での種牡馬生活で活躍馬を輩出することはできませんでしたが、ご苦労さんでした。



平池アイコン(サイト用).gif平池由典(ひらいけ・よしのり) 映画部記者 兼 サイト事業部所属
 映画・DVDの取材を担当しています。“宇宙人が攻めてくる系”映画が大好物。趣味は競馬と映画鑑賞。当コーナーでは、競馬と映画を中心に自由につぶやいていきますので、良かったらご覧ください。

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