BS11(イレブン)が6時間生放送の特別番組にチャレンジした。今年12月で開局5年目に突入、これを記念して11並びの2011年11月11日(金)を “BSイレブンの日” として夕方5時から6時間特番「文化のまちのテレビ局~御茶ノ水・神保町から発信!」を放送した。収録分を交えながらも長時間生放送は、放送局の実力を見せるもので、同局にとって一大事な取り組みだ。
番組のコンセプトは、タイトルにある通り “御茶ノ水・神保町にあるテレビ局” ということを打ち出し、街の歴史や文化、お店を紹介するとともに、テレビのあり方を示そうとエンターテイメントとジャーナリズムな番組をラインナップ。レギュラー番組の認知向上を目的にそれぞれスペシャル版として6時間の中に組んだ。他局と比べた、その規模感を問うよりも、BS11らしさがいかに出ているかが、この特番の成功のカギを握る。
オープニングはBS11本社近隣の明治大学キャンパスから同大学生によるジャズ生演奏に乗って、総合司会の生島ヒロシと富永美樹の登場で始まった。続いて、山本晋也と甲斐まり恵の神保町散策のコーナー、「ベストセラーBOOK TV」の公開収録 “出版社 ガチンコ!プレゼンバトル”、「柳家喬太郎の粋ダネ!」のスペシャル版として柳家喬太郎の落語の生中継、 “作家座談会” 等々。そして最後に目玉となる「INsideOUT」のスペシャル版、中曽根康弘元首相が登場し日本の将来について語ってもらった。83年の11月11日はロン・ヤス会談があった歴史的な日にあってこれを企画。当時、中曽根首相が保有していた「日の出山荘」(東京都西多摩郡)にロナルド・レーガン大統領夫妻を招いて、日米の友好関係を強くアピールしたあの歴史的な会談だ。番組は日の出山荘で収録したもので、報道系に注力するBS11がそのこだわり感で仕込み、見せたように思う。
BS11は昨年、「本の街 神保町を元気にする会」に入会し、それを踏まえた番組やコーナーを設け、CMの直前には地元のお店の看板娘がひと言登場するなどして、地元のPRにつなげた。元ガロの大野真澄も登場し、名曲「学生街の喫茶店」を披露して、学生街にある故のマッチした企画で、懐かしく聴いた。
“出版社ガチンコ!プレゼンバトル” は、講談社や文藝春秋ら5社の編集マン・ウーマンら5人がそれぞれ4分間、読んでもらいたい本をプレゼンして競う企画。プレゼンターは慣れないトークながら、今注目のスティーブ・ジョブズの本や、綿矢りさの「かわいそうだね?」など、その背景を披露して、耳を傾けてしまう面白さがあった。
そして、中盤に放送した田原総一朗と蟹瀬誠一の対談「どーなる?テレビの未来」。今のテレビについて「無難になった」、「賛否問う問題に結論は出さない。結局は解答なしという結論ありきのストーリー」等々と語り合う。蟹瀬は「テレビ局が問題なのは人事」だと指摘する。報道の人間が営業に異動したり、営業の人間が報道に異動したりするのが問題だと。新聞社ではないケース。それゆえにテレビはコマーシャリズムになっていると。一方の田原は「マスコミがまずいのは、強きをくじかず、弱きをくじくところだ」という旨を発言。今まで言えなかったものが、許されると一斉攻撃すると。そして、BS11について、「既存のテレビ局とニコニコ動画の間にあるのでは」と語り、「BS11はどこまで言っていいの? 限界はどこまであるの?」と投げかけた。その答えは「根拠があればズバリ言っていい」旨のものだった。約30分の対談で、やや表面的ではあったものの、 “尖がった放送局” を目指すBS11の意志を表した企画だった。田原は最後に「(このコーナーの)時間が短すぎるよ!そんなんではBS11ダメだよ」と言って終わった。BS11へのエールに聞こえた。
(戎 正治)