7月23日より開催されていた「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010」が8月1日に閉幕。当日はクロージングセレモニーが行われ、各受賞作品が発表された。
長編部門(国際コンペティション)の最優秀作品賞は、ナチスのSSとパルチザンの衝突から生まれた悲劇(大虐殺)を、赤ん坊の命を必死で守ろうとする少女の視点を通して描き出す「やがて来たる者(原題)」(ジョルジョ・ディリッティ監督/イタリア)が受賞。映画祭に駆け付けたシモーネ・バキーニプロデューサーが表彰式に立ち、「この映画の中にある出来事は、1944年に(イタリアの)ボローニャで実際に起きたこと。しかし、あのような事件はいまだにアフガニスタンなどの色々な国の戦争で起こっていることだと思う。少女の目を通して、軍人たちの卑劣な行いを描くこと、考える機会を設けたことが重要」と本作の意義を語った。また、長編部門審査委員長の増田久雄氏も、「審査をする上で、一観客として楽しもうと思って作品を見たが、『やがて~』は本当に良かった。人間社会はこうあるべき、平和っていいなと思える作品」と絶賛した。また、増田氏は総評の中で、「日本と海外の作品を比較すると、日本はテクニック的には落ちるという印象」と苦言を呈する一方で、「TVドラマのような映画の作り方が多くなっている中で、今回の(出品された)作品は、ちゃんと映画を作ろうという意識が感じられた」と一定の評価を与えた。
短編部門(国内コンペティション)では、2人の青年と、幼児虐待と思わしき隣家とのコミュニケーションを描いた「隣人ルサンチマン」(壇拓磨監督)が最優秀作品賞を受賞。壇監督は「思いが伝わった」と喜びの言葉を語り、短編部門審査委員長の桝井省志氏は「一番大切である“テーマ”があった。短い時間の中で、現代の人が抱えている課題を一つにまとめて完結させた作品」と評価し、グランプリに相応しい作品とコメントした。
受賞結果
【長編部門(国際コンペティション)】
・最優秀作品賞「やがて来たる者(原題)」(ジョルジョ・ディリッティ監督/イタリア)
・監督賞「透析(原題)」(リウ・ジエ監督/中国)
・脚本賞「鉄屑と海と子どもたち」(ラルストン・G・ホベル監督/フィリピン)
・審査員特別賞「テヘラン」(ナデール・T・ホユマン監督/イラン他)
・SKIPシティアワード「seesaw」(完山京洪監督/日本)
【短編部門(国内コンペティション)】
・最優秀作品賞「隣人ルサンマン」(壇拓磨監督)
・奨励賞「家族デッキ」(村田朋康監督)
〃「ゴリラの嘘」(草刈勲監督)