2011年春開学、「日本映画大学」佐々木史朗理事長に聞く!
2010年12月20日
映画界がちゃんと目配りをして欲しい
―就職支援体制はいかがですか。
佐々木理事長 よく「日本の映画マーケットは、そんなに年間140人卒業させたって、それを吸収できるだけの大きさがないよ」と聞くんですが、それは私は違うと思っているんです。今後、2011年の地上デジタル放送完全移行やインターネットでの映像配信、VODなど、新たに映像の出口が広がりを見せる中で、映画業界に限らず、映像製作を身に付けた人材が様々な分野で必要とされる時代が来ると思っています。今まさに活躍している人が加速度的に増えてきていますよね。140人すべてが監督になるわけではないですから。
また、映画・映像人口を増やすには、プロデューサーの育成や、映画・映像作品をしっかりと観客に伝えられるジャーナリストと、映画ファンの育成も大事なこと。もちろん最大限の就職支援を行っていきますが、「人間=映画を学ぶ」ことで、就職先は映画界だけではないということです。
但し、調べたのですが、日本映画学校をこれまで卒業したOBは、広い意味での映画・映像業界への就職率が約70%となっています。そのうち映画関係が30%で、そのほか40%がTV番組制作やPV制作などの映像系の仕事に携わっています。これは当校で学んだ知識や技術が映像業界で評価されている証拠であり、また、それだけOBがこの業界で活躍しているということは、就職活動でもつながりをもっていけると思います。
―11月末と12月中旬に行った「入試説明会」の様子はいかがでしたか。佐々木理事長 各日、約200人くらいの方が参加してくれました。皆さん、学費に関することや他の大学との違いなど、非常に具体的に質問して下さいました。来年卒業予定の高校生から20代前半、30代・40代、なかには60代の方もいらっしゃいました。定年退職後に大好きな映画について学びたいと言うのですね、嬉しい限りです。10代と60代が映画について一緒に学ぶ、映画制作を実習するというのは、非常に面白いことだと思います。また、現在大学生の方や、大卒、仕事をされている方も興味をもって来てくださいました。因みに、今の日本映画学校の方の生徒も全体の20%くらいが他の学校から移ってきた人たちなんですよ。
―最後に、映画・映像業界へ「日本映画大学」をアピールして頂けますでしょうか。佐々木理事長 制作していくということで考えると、映画会社に期待が出来ない現状ですね。人を育てることを放棄してかなりの時間が経つので、撮影所=映画会社にそういうことを求めることが無理なんだと思います。ならば、才能のある人材は我々が育てるので、彼らが作った作品を映画会社が拾い上げたり、スポットを当てて、我々にもっと注意をして欲しいですね。ただ、実は一番そういう彼らを注意深く見ているのは東宝なんですよ。教育機関や自主制作から出てくる人間に対して、映画界がちゃんと目配りをしていられるかどうか。それを映画会社には求めたいですね。
映画界の将来についても、現役のいち映画プロデューサーとして言わせてもらえれば、メインストリームの作品が85%、サブカルチャーの作品が15%と、きっちり成り立つような状態が、日本の映画界にとって理想だと思います。 (了)
(インタビュー/文・構成:和田隆)
※日本映画大学 佐藤忠男学長と高橋世織学部長のインタビューは、「エンタメ教育の現場から~人材育成キーマンに聞く!」に掲載中(http://www.bunkatsushin.com/varieties/article.aspx?bc=1&id=853)。
※「日本映画大学」詳細、入学試験要項は、ホームページ(http://www.eiga.ac.jp)をご参照ください。
佐々木史朗 プロフィール
1939年、大連市生まれ。TBSテレビ演出部を経て、70年TBSとの共同出資による番組製作会社(株)東京ビデオセンターを設立、代表に就任、テレビ番組制作を開始。79年に(株)日本アートシアターギルド(ATG)の代表を兼務するとともに多くの新人監督の発掘とその作品製作を手掛ける。93年に(株)オフィス・シロウズを設立、プロデューサー主導による監督作品の企画開発と製作、配給を開始し、劇場用映画を中心にテレビドラマスペシャル、社会情報系番組などを製作。04年日本アカデミー賞特別賞受賞。
※オフィス・シロウズ最新作「アブラクサスの祭」(12月25日、テアトル新宿で公開)のポスター前で。