インタビュー:葉梨忠男・テレビ東京メディア事業推進本部コンテンツ事業局事業部長
2008年08月01日
邦画のあらゆる取り組みに挑戦し、新たな商品を生み出す 08年度幹事製作「パコと魔法の絵本」
「フライング☆ラビッツ」でドラマと映画の新たなる連動
(C)2008「パコと魔法の絵本」製作委員会
邦画のあらゆる取り組みに挑戦し、新たな商品を生み出す
得意な層へ訴求「シネマトリップTO SHOWA」シリーズ
08年度幹事製作「パコと魔法の絵本」、09年度は幹事製作作品を拡大
「フライング☆ラビッツ」でドラマと映画の新たなる連動
90年代以降、洋画アート系・単館系およびアニメ作品で個性を出し独自路線で展開してきたテレビ東京の「映画事業」。
近年はそこから新たな一歩を踏み出すべく、邦画実写映画の扱いなどを増やしてきた経緯がある。そして08年度は、テレビ東京としてもかなり久しぶりに邦画実写映画の幹事会社を務める作品「パコと魔法の絵本」がいよいよ公開され、テレビ東京の“新たな映画事業”の形が見え始める年となる。新たな方向に舵をきったテレビ東京の「映画事業」について、葉梨忠男・事業部長(メディア事業推進本部コンテンツ事業局事業部長)に話を聞いた。
葉梨氏は、昨年7月の人事異動で事業部長に就任。テレビ東京の映画事業に長年携わった上で現在メディア事業推進本部長を務めている石川博常務から、「テレビ東京の映画の新たな流れを作る」というミッションを受け着任した、という流れがある。
新たな映画事業構築へ―まずテレビ東京の中で、映画事業に対するスタンスはどうなっていますか。 葉梨氏(以下、葉梨) テレビ業界全体で放送外収入を増やすことが至上命題となっている中で、テレビ東京の映画事業も、他局の立ち位置を見ながら改革しなければならない状況となっていました。
できるならば、(他局のように)テレビ局主導のマーケティング手法を自分のところ1社だけで推し進める形もやりたいし、また放送でヒット番組を生み出し、それを映画化するというような放送局として王道の映画事業展開もやりたいのですが…。
―テレビ東京らしい独自路線を、映画事業でも切り拓いていくということになりますか。 葉梨 テレビ東京は、テレビ局としてやれる新たな映画事業の構築へ向けて、これまでと違った化学反応を起こすことを考えています。コンテンツ事業局内でも2~3年はありとあらゆることをやっていくということで話をしているところです。
―これまでのテレビ東京の特徴であった洋画の部分はどうなっていくでしょう。 葉梨 洋画単館系、アート系路線は、大きく当てられないという傾向が近年色濃くなってきています。
そこで洋画については、単純出資は考えない、まずは(同局のG帯映画放送枠の)「木曜洋画劇場」との連動を前提にしています。といっても洋画はやめたわけではないのですが。洋画への出資は厳しく見ていく流れになっています。08年度でみると邦画と洋画の割合は9対1になります。実は、自分が部長に就任してから新たにやると決めた洋画は0という状況です。
得意視聴者層とのリンク―そうすると、邦画実写系での展開で新たなテレビ東京カラーを作っていくことになりますね。 葉梨 邦画作品についての事業展開の経験値はテレビ東京にはあまりない訳で。その点では、他局より何年も遅れていると感じていました。そこで、できる限りリスクヘッジは考えていきながら、いろいろな新たなパターンの邦画映画展開に取り組んでいこうということで、自分が去年7月に事業部に来てから部内でも話をしており、取り組みを始めています。
これまでは自分が事業部長になる前から決まっていた作品が多かったので、まだその成果が表にあまり出てきていないのですが、新たな試みとして、今年公開の邦画4作品に「シネマトリップ to SHOWA」というシリーズタイトルをつけて展開するということを始めています。これは、テレビ東京は視聴者層からするとM3F3(男性50歳以上、女性50歳以上)が
多いという特色を持つ局なので、局として映画作品をまとめてプロモーションできるものはないかという所からつながったものです。4作品のうちの最初の作品「明日への遺言」は思った以上の成果が出ているので、これからも期待しているところです。(残りの3作品は7月公開予定の「火垂るの墓」、9月公開予定の「花は散れども~石内尋常高等小学校」、秋公開予定の「おろち」)。