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特集:DVD「MOONLIGHT MILE」発売記念トークショー&試写会

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特集:DVD「MOONLIGHT MILE」発売記念トークショー&試写会

2007年07月09日
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ホワイトとブルーカラーの対立


元 村 私は2005年に野口聡一さんのミッションを取材したんですけども、野口さんに事前にですね、宇宙での作業をどうやって地上で練習しているのですかと聞いたら、ヒューストンにお住まいなんですけども、とりあえず毎週ホームデポ(DIYショップのこと、工具販売店)に行くっていうんです。とんかちとか色々買って来てですね、テーブルとか椅子も作るんですけど、こういう風に使うと使いやすいなっていうのを地上でシミュレーションしているっていうのを聞いて、あっ!これは宇宙の大工さんだなって思ってですね。実際に向こうで色々トラブルが起きたんですけども、それを直す時は、やっぱり漫画に出てきたみたいに、ロボットアームが先端に足をつけて、金槌とかペンチとかでやってるんですよね。あれはホントにね、あ、大工さんだって思いました。

鳥 越 あの辺のディテールはどうやって仕上げたんですか?

太田垣 そこはNASAの良いとこなんですけど、彼らは税金を使って宇宙開発をしているので、情報公開についてはとても積極的なんですね。なので、映像もそうですし情報もわりとオープンに出ています。特にスペースシャトルの作業についてはあまり隠していないですね。船内の様子もほぼ見られます。

元 村 鳥越さんはニュースの職人という言われ方をしていますけども・・・。

鳥 越 はい、自分で呼んでいます。

元 村 この漫画にもいろんな職人が出てきますよね。

鳥 越 どうしても宇宙へ行く人というのは、もう飛びっきり選抜された、IQが高くて健康で人柄も良くて、というように非常にスペシャルな人というイメージが強かったですよね。毛利さんなんてどっから見ても非の打ち所がないなあという感じがするじゃないですか。ところが実際に漫画で展開されているのは、そういう人ばかりでは月の基地の建設が出来ない、つまり肉体労働が必要なんだと。ビルディングスペシャリスト、BSと漫画の中では呼ばれていますが、このBSと呼ばれる人たちがいっぱい出てきて、その人たちは基地の中ではブルーカラーって呼ばれているんですよね。これがねすごく新鮮だったなあ。

元 村 新鮮ですよね。

鳥 越 つまり、いわゆるホワイトカラーとブルーカラーに色分けされていて、結構対立しているんですよね。こういう話はどこから。やはり現実にあるんですかね?

太田垣 発想の原点は、一番最初にケネディスペースセンターに行った時に、ガルベストンという港町があるんですが、取材にいった日はガルベストンのホテルに泊まろうと思って、モーテルのような小さいところに宿を取ったんです。そしたらそこに、僕が取材に行った日から約2ヵ月後に発射される予定のスペースシャトルのパイロットとコマンダーがチェックインしていたんですよ。コマンダーの方が中年のおじさんでパイロットの方が女性だったんです。そのふたりがそこに入っていたので、まあ護衛もいなければ広報みたいな人もいないけれど、ちゃんとフライトジャケットを着てそこにいるわけです。要は、アメリカのあの辺りに行くと誰も注目していないんですよね。

鳥 越 それが日常化している。

太田垣 なので、僕らが思っている宇宙飛行士のイメージってアメリカでは30年以上前に終わっているんですよ。現実の宇宙飛行士は、泥臭くて人間臭い。

元 村 日本の宇宙人飛行士というのは秋山豊寛さんを入れてもまだたった9人。競争率500倍の選抜ですから、なかなか身近な感じを持ちにくいですけども、私は意外と直接おつきあいがありますけど吾郎さん的な人は多いですよ。

太田垣 そうですよね。みんな助平だと思いますよ。

元 村 そういう話はしたことない(笑)。ところで鳥越さん、これからのお話しについてはどういう展開になって欲しいですか?

鳥 越 まあ、そうねえ、中国とアメリカの対決が漫画の中ではちょっと軍事的にやりあっている訳ですけど、これがどうなっていくのか興味があって、中国も結構軍事的にも技術的にも進んでいるんですよね。決して劣っていない。宇宙飛行士のリーダーが、吾郎やロストマンと違ってまた魅力があるおっさんで。中国とアメリカがどうなるかっていうことと、その狭間で日本はどうするんやと。まあ宿命的に日本はアメリカにつくしかないという風にこれまでのところなっているんですけども、果たして日本は単にアメリカにくっついていくだけでいいのかという、まさにこれは宇宙開発だけの問題ではなくて現実の日米安保条約とかですね、そういう国際政治の問題にもつながってくる話なんですけど、そのへんの太田垣さんなりのこうあったほうが良いんじゃないかなというのを示していただけると良いんじゃないかなと思うんですよね。

元 村 なるほど。太田垣さんが国際世論を動かすと。

鳥 越 アメリカにくっついていけばなんか全て良いという話でもなかろうなという感じがするんですよね。

元 村 確かに日本の独自性というのが問われる昨今ですから、一応漫画の中ではね、面白いなと思ったのが、今飛ばしているH2Aっていうのが一回引退して、またリバイバルするんですよね。あんまり言えませんけども。そのH2Aがリバイバルする時に、50年前の技術者が呼ばれて来るんですよね、スペースカウボーイみたいに。あのあたりがリアルでちょっと面白いなと思いました。

太田垣 あの、3年くらい前に種子島宇宙センターの取材に行った時、かなり寂れていたんですよ。当時、失敗が続いて、民間衛星の打ち上げ受注が全てキャンセルして、自分達の打ち上げで示さなきゃいけないっていう時だったので、全体的に沈んでいたんですね。発射台とかもあそこは海の側なんで、遠くから見るととても綺麗なんですけど、近くに行くとペンキ剥げて赤錆だらけなんですよ、発射台が。そういうのを見てなんか切なくなりまして、もうちょっと日本の宇宙開発は本当にポテンシャルは高いと思っているので、元気を出して欲しいなっていう思いと、日本の宇宙開発に対して共感してくれる人をもっと増やしたいという気持ちで描きました。

元 村 太田垣さんがそういう前向きな気持ちでストーリーを作っていってくださるのは、私達としてもすごく励まされますし、これから当たるかはずれるか分かりませんけど行方を楽しみにしています。



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