閲覧中のページ:トップ > 文化通信バラエティ > エンタメ・トピックス >

インタビュー:群青いろ「14歳」

エンタメ・トピックス

最新記事

インタビュー:群青いろ「14歳」

2007年05月08日

人間が発する“熱”は伝わった

―海外からも高い評価を得たことに関してはどう感じていますか。

高橋 評価されるのは嬉しいですね。たぶん、あんまり物語とかシチュエーションは何も伝わっていないような気がするんですけど。でも、人間が発する“熱”は伝わったのかなと思います。結局、規模が大きくても小さくても、人間の熱さえ描けていれば恐らく賞は獲れると思います。実際に「14歳」の前に自主映画で撮ったものが同じ賞を獲っているので。ただ、今の日本でその熱を一発で伝えるのは正直無理だと思います。これは長い時間をかけて作り続けて、見せ続けていかないと。

―それは日本の映画業界の問題ですか、それとも観客の質の問題だと。

高橋 それはどっちがどうというわけではないけど、やはりビジネスなのでお金を回収するために集客のいいようにスタッフ・キャストを揃えるわけじゃないですか。それで企画がどんどんひ弱になっていっているなというのは感じます。でも一方で、そういう作品があるから、昔では考えられないくらいの人がいま映画監督をしているとも思います。だから、どっちがいいのかなと。映画と仕事として携わっている僕からすると映画がいっぱい作られた方が特なわけですよね。だけど、「群青いろ」でやっていることを考えると、手厳しい映画をどんどん作ってくれた方が、自分たち的にはいいかなあと、もがいています。(笑)

廣末 オランダの人たちは、初めて見る日本てこんななのかと。あちらのイメージはまだ礼儀正しくて勤勉なというもので、そういう人たちばかりなんじゃないかという学生の意見があったんですけど、それは個人個人違うんだよと伝えておきました。物珍しく観たような感覚でしたね。ただ、そのくせ南アフリカ人の審査員は「直に伝わった!」と言ってくれました。この感覚は凄く良くわかったと。海外も個人個人で違ってくるんだなと思いました。


“自主映画を作り続けていきたい”

―今後は自主映画と商業映画をバランスよく撮っていくのですか。

廣末 基本的には自主映画です。自分たちでやり続けていって、「これくらいのバジェットでやってみない」という話が来たら、その時は商業映画という風になるかもしれないですけど、それまではずっと自主映画を作り続けていきたいですね。商業映画を撮るチャンス、振向かせるのも僕らが作る自主映画だと思います。

高橋 実際にちょっと「ステップアップしてやってみないか」というのは言われていますが、そこはちょっと待ってくださいと、今一生懸命やっているので。(エージェント契約している)IMJエンタテインメントでの脚本は、僕は垣根なく何でも書きます。映画うんぬんの前に文字を書くのが好きなので。ただ、自分が演出するとなった時に、やはり普通のものになってしまうと思うんですよ、商業映画を撮ったら。それは言い方は悪いかもしれませんが恥ずかしいですよね。もちろん、脚本の仕事の方では、ばんばん僕のテイストというのを盛り込んでいます。でなければ僕に頼む意味がなくなるので、こういうクセのある人間にということで制作会社も僕に振ってくれていると思いますから。


“自家発電的な相乗効果”

―二人にとっての創作意欲の源はどこにあるのでしょう。

高橋 二人で作っていて、片方が作っている間に自家発電的に廣末くんが作っているのを見て勝手に僕も熱が高まってくる。そういう相乗効果はあると思います。

廣末 「14歳」の前は高橋さんは「もう監督やらない」って言っていたんですけど、撮ったら「やる!」ってなって、ああそうなんだと・・・。

高橋 普通のステップを考えたら、「14歳」で商業映画デビューして、声がかかってきて、廣末くんは商業映画の監督になるだろうと、僕はそこの場でメガホンを取るというのは僕には向いていないなあと思ったからです。でも、「14歳」を撮ってみて元のスタイルでやってみたいという感覚に戻ったわけです。それじゃあ僕もやりますよと(笑)。
 脚本家と役者では、単体というのはもちろんありますけど、どちらかが監督するということにおいて、廣末くんが出演していないというのは考えられません。

廣末 僕は役者としてのオファーが外からあれば全然出ます。それが生業になったらいいと思っています。そのお金をまた自主映画に投入できればいいですね。(笑)

―自主映画の底上げはおきているのでしょうか。

高橋 もちろんデジタルビデオカメラで誰でも撮れるようにはなったけど、数が増えているだけで、それは商業映画と一緒じゃないですかね。商業映画も今バブルですよね。数は増えていますけど、質が上っているとは言えません。自主映画も数は増えているけど、質が上っているとまでは言えないですね。

廣末 あの・・・、映画業界とか自主映画の可能性みたいなことを良く聞かれたりするんですけど、そんなことはどうでもいいんです。その可能性は作り手側が持っていなければいけないことで、底上げというよりは、僕らに可能性があればあっただけ振向いてくれる人も多くなるだろうし、それがまた見る人の肥やしになっていってくれるんじゃないかなと。結構、僕らの作品を見てくれる人たちが信じられないくらい本当に多くなって、いろいろきつい事も思ってくれたりするので、そういった意味では本当にやり続けることには凄く意味はあるなあと思っています。

―では、最後に次の作品のテーマは。

高橋 すぐ撮るんですけど、青春を若干過ぎたくらいの歳の人たちを描きたいと思っています。祭りの後みたいなことですかね。

廣末 僕はまたちょっと思いっきり理不尽な話をやってみたいですね。



「14歳」作品概要
監督・主演:廣末哲万/脚本:髙橋泉
出演:並木愛枝、藤井かほり、渡辺真起子、石川真希、香川照之
製作:矢内廣、信国一朗、武内英人、高野力、中嶋孝夫、林瑞峰
プロデューサー:天野真弓/撮影:橋本清明/照明:清水健一/録音:林大輔
美術:松塚隆史/編集:廣末哲万、普嶋信一/音楽:碇英記/制作担当:神南愛子
製作:PFFパートナーズ[ぴあ、TBS、TOKYO FM、IMAGICA、NTTレゾナント、ヒューマックスシネマ]
特別協賛:Kodak/支援:文化庁
配給&宣伝:ぴあ/宣伝協力:アルバトロス・フィルム
2006年/114min/35mm/カラー/1:1.85ビスタ/モノラル(C)PFFパートナーズ2006

過去のタイトル一覧

2024年

3月

2023年

2月│ 3月│ 10月

2022年

3月│ 5月│ 7月│ 8月│ 12月

2021年

2月│ 3月│ 10月

2020年

10月│ 11月│ 12月

2019年

2月│ 4月│ 5月│ 7月│ 8月│ 10月│ 11月

2018年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2017年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2016年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2015年

3月│ 4月│ 6月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2014年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月

2013年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2012年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2011年

2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2010年

1月│ 2月│ 4月│ 6月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2009年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月

2008年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2007年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月

2006年

1月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月