トップインタビュー:佐藤直樹 日活(株)代表取締役社長
2010年01月06日
佐藤 ただ、興行も投資していかないと生き残れないです。ディストリビューションもそうです。体力を持って、例えば興行なら興行にシフトとして行こうと考えている企業――今回は東京テアトルさんとパートナーシップを組む。アライアンスすることと、「あとはどうぞご自由に」では、意味が違います。これは詳細に業務提携の契約書も交わした上で、新たなテアトル・リーブルチェーンが立ち上がったと。日活がこれから作る上でも、間違いなく武器になってくるであろうと考えています。ですから“製作に特化”ということは、言い方としてあまり正確ではないのかなと。選択と集中という中では、日活が集中して資源をまずここ2年から3年の中でしっかり投下していくのは製作であると。しかし、ほかのパートに関しても、日活とビジョンを共有化できるパートナーの方と積極的に組んでいきたいと考えています。日活は旧メジャーで、映画のバリュー・チェーンという言い方を僕は従業員にしたのですが、撮影所から興行、そして版権のセールスまで、すべての機能を小なりといえども持っておりました。これはあるところまでは明確な経営の武器だったと思います。ただし、マーケットが成熟している今の状況の中では、事業の中身を精査した上で、優先順位をつけていかなければいけないと思います。まず何に資源を集中して、日活として力を蓄えるか、次ぎに何を強化するのかを順に経営として考えていかなければいけないと思います。そのためのアライアランスのネットワークを作っていく提携のパートナーと、さまざまな事業を進めていくという戦略ですね。
東京テアトルは縁が深く
――東京テアトルさんに関しては、佐藤社長から提携を申し出されたんですか。
佐藤 はい。東京テアトルの松下晴彦社長とは、事業のことだったり、映画産業のことだったり会食をしながらお話しさせていただく機会があって、東京テアトルさんは吉岡重三郎氏が長らく社長をされていましたが、戦前は日活の社長(1941~45)もされ、大変縁の深い会社であり、松下社長ご自身がその吉岡社長とも大変縁の深い方だということが、会食の席でも出たのです。また、私が社長に就任する前から東京テアトル・日活で協力関係を構築しようという話があったということを伺っておりました。日活は、マイナーではありますが、東京テアトルさんの株を持っていて、また、今回の株主さまの異動にあたって、東京テアトルさんにも日活の株式を持っていただき、より密接な関係を築くことができたところです。歴史的な経過としては、両方とも老舗で映像事業をやっているところでは、本当に縁を感じました。私が日活の興行をどう組み立てていくかと考えた時に、真っ先に浮かんだのは東京テアトルさんであり、松下社長にまずご提案申し上げた次第です。
――今回、東京テアトルは日活の株を何%保有したのですか。
佐藤 極めてマイナーです。日活が持っている分と、東京テアトルさんが持っている分と、イーブンになるくらいの株数です。
――今年の4月1日から3年契約ということですが、当然それ以降も更新するというお考えですか。もちろん東京テアトルの意向もあるでしょうが。
佐藤 東京テアトルさんとの話し合いの結果、はたしてどうなのかということですね。まず、双方にとって今回の提携が明確なメリットがあったということを認識した上で、次のステージだろうと思っています。ただ幸いなことに、松下社長からも今のところは順調に進んでいるというお話をいただいて、日活にとっても良い提携関係だと思います。日活と東京テアトルさんはとてもいいお見合いであったし、いい結果が出たなと思っています。
佐藤直樹氏略歴
1963年3月21日北海道函館市出身、1986年 日本大学文理学部卒、1986年 JAVN株式会社(ジャパンオーディオヴィジュアルネットワーク)入社、1988年 株式会社東京ケーブル・プロダクション入社、1990年 大映株式会社入社、2002年 株式会社角川大映映画転籍(大映株式会社営業譲渡に伴い)、2004年 角川映画株式会社(社名変更)企画製作本部 企画製作グループ 部長、2005年 角川映画株式会社 取締役企画製作本部担当就任、2005年 日活株式会社 代表取締役社長就任(現任)
※全文は、文化通信ジャーナル09年12月号に掲載