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今回の応募総数113本の内訳はドラマ部門19本、ドキュメンタリー部門47本、情報番組部門30本、バラエティ部門17本。審査委員長を務めた工藤ATP理事長は「例年以上に質の高い中身の充実した作品が多く、審査委員会は活発な議論が展開された」と振り返り「各部門に共通して『家族』『集団』や『芸道』『芸』をテーマにした作品に優れた作品が多かった」と感想を述べた。なお、新人賞を女性3人が占めるのは初で、中田好美氏はドラマ部門から10年ぶりの受賞となった。
各受賞作品の講評と関係者の喜びの声は次のとおり。
■総務大臣賞「闘う三味線 人間国宝に挑む~文楽 一期一会の舞台~」
NHKエンタープライズ、クレイジーダイアモンド/NHK BShi 人間国宝・竹本住大夫と文楽三味線奏者・鶴澤清治の初共演に向け、芸道を極めようと必死で鍛錬を続ける2人の姿をカメラが追う。この世界の知識をあまり持たない者でもでも、その緊張感ある「芸の闘争」が見ている者を引き込んでいく。その構成力、完成度に高い評価が集まった。
●NHKエンタープライズ・村瀬洪エグゼクティブプロデューサー 「名誉ある賞を頂き大変感激している。ありがとうございます。」
■新人賞テレビマンユニオン・黒田由布子氏 .
「ムンクを奪還せよ!『叫び』回収までの84日 囮捜査官チャーリー・ヒルの挑戦!」演出 ムンクの『叫び』という世界的名画の奪還を巡る息詰まる駆け引きをテンポよく再現し、初演出とは思えない力量で観る者を魅了した。作品のメインである囮捜査官を連日の国際電話で説得し、再現を本人に演じさせるという離れ業をやってのけ、本物の迫力で再現することに成功した。ドキュメンタリー番組制作においてタフな交渉能力が成否のカギを握ることをデビュー作で見事に証明し、大いなる将来性を感じさせた。
●黒田氏 「初めてディレクターを務めた番組。素晴らしいスタッフに支えられやり遂げることができた。」
かわうそ商会・佐藤直子氏 .
「課外授業ようこそ先輩 アンネット・一恵・ストゥルナート 生きる つながる 呼吸する」演出 ある程度フォーマット化された番組に、オペラ歌手アンネット・一恵・ストゥルナートという好素材を得て、今までにない新風を送り込んだ。一度はテレビの世界から離れたものの、どうしてもテレビ番組を作りたいという思いを捨てきれず、30歳を目前にして復帰、年齢的なハンディキャップをものともせず、ディレクターになった。丹念かつ大胆なその演出はすでに『新人』離れしている。
●佐藤氏 「初めて涙する現場に立ち会った。この心震えた瞬間をいかに伝えるかに多くの時間を割いた。これからも心震える番組を作っていきたい。」
東北新社クリエイツ・中田好美氏 .
「悪夢のエレベーター」プロデュース フジテレビの深夜単発ドラマ企画の募集枠に合った原作の発掘、局の編成担当者へのプレゼンまでを自分でこなした。監督には新進気鋭のCMディレクターを起用し、今までのドラマにない可能性を提案。キャスティングではドラマ初挑戦のインパルス堤下を主役に決め、巧みなベテラン俳優で脇を固め、エレベーターという密室のドラマを、新しい発想で成功に導いた。
●中田氏 「初めて企画が通った番組。上に立って責任を実感した。ありがとうございました。」
■長寿番組賞「レディス4」 テレビ東京制作/テレビ東京 . (1983年5月2日~2007年9月30日付、6116回)
番組がスタートして25年を迎えた。初代の司会は高崎一郎。その後俳優の柴俊夫にバトンタッチし、2006年より大島さと子と徳光正行の2人が司会を務めている。メイン視聴者である主婦層の生活やライフスタイルは常に変わり続けているが、「レディス4」では時代に流されることなく一貫して安らぎのある実直な情報を発信し続けてきた。
●テレビ東京制作・中島公健プロデューサー 「コンセプトは『派手ではないけど誠実で楽しい役に立つ情報』。これは24年間一貫しているが、時代に取り残されないよう努力している。」
「はじめてのおつかい」 フルハウス/日本テレビ . (1991年1月~2007年9月30日付、44回)
1991年に情報番組「追跡」でスタートし、16年続いている。生まれて初めておつかいに出かける子供の様子を10台ほどのカメラで密着し、それぞれのおつかいの背景となる日本各地の景観や人情、方言、しきたり、食文化までも見ることができるアットホームな番組を提供してきた。
●森口博子(司会) 「11年間司会をやっている中で1度だけカメラマンとして参加したが、とても過酷な現場だった。子供目線で雨風の中でも向き合うエネルギーに脱帽した。歴史の深さ、挑戦し続ける勇気をもらっている。スタッフの皆さんおめでとうございます。」
■特別賞「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)制作チーム 「テレビにおける経済報道」の分野を実に20年、民放他局の追随も許さず今やテレビ東京の顔ともなった。中でも中小・ベンチャー企業を中心にユニークな発想を生かしアイデア商品を紹介する「トレンドたまご」のコーナーは既に2000回を超え、「見聞!ニッポン力」をテーマに日本の実力を検証するシリーズでは、グローバル化が進む中での日本の指針を提案するなど、いまや「経済オピニオン番組」としても注目を集めている。
●小谷真生子キャスター(右) 「こうしている間にも取材しているスタッフがいる。経済報道番組のパイオニアであり、他の報道番組とは作り方、価値観の置き方が違う番組。」
●大浜平太郎キャスター(左) 「毎晩反省ばかりなのに受賞していいのか。まだテレビの経済報道の形はできあがっていないので、少しずつ前進していければ。」
「24時間テレビ」(日本テレビ)制作スタッフ一同 .
「愛は地球を救う」をキャッチフレーズに日本で唯一のチャリティ番組としてスタートし、これまでに252億円に迫る募金を集めた。今年、記念すべき第30回の放送では萩本欽一の24時間マラソン挑戦などが話題となって全国に大きな感動を届けた。放送を支えた制作会社11社も一体となってこの国民的番組の成功に大きく貢献した。テレビの特性を最大限に生かしながら一貫して世の中に役立つという姿勢は賞賛されるものだ。
●徳光和夫(総合司会/上) 「この番組は多くの制作会社がボーダレスで関ってきた。全員が参加している番組であり、嬉しさ、重たさをしっかり感じている。巨人がセ・リーグを制したのに愛知のローカルチームが日本シリーズに進出するという寂しいことがあったが(笑)、このブロンズ像をもらってこれからも頑張ろうと思っている。」
●萩本欽一(2007年24時間マラソンランナー/下) 「沢田さん(プレゼンターの沢田隆治・日本映像事業協同組合理事長)が元気そうで驚いた(笑)。プロデューサーはよく年金労働者を走らせたと思う。多くのスタッフがゴールに行かせてくれた。スタッフの皆さんありがとう。」
優秀賞の表彰ではバラエティ部門
「シンボルず」(ジャンプコーポレーション、PIECE、電通/テレビ東京)出演者のみうらじゅん(右)、MEGUMI(左)が登壇する場面も。みうらは「ヒールな発想が“テレビルネッサンス”に生きたのではないのでしょうか…。」と挨拶した。
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