トップインタビュー:井上泰一角川映画代表取締役社長
2007年07月04日
2つの柱の間を取り巻くもの -年間の邦画の製作本数はどれくらいを考えているのですか。井上 大きなもので2本くらい、ミドル級で4~5本くらいで、合計6~7本くらいは作りたい。
-洋画の方はどうですか。井上 ドリームワークス作品が入ってきて、「シュレック3」の後は、角川映画と角川エンタテインメントが共同で配給していく予定です。整理すると邦画が一つの柱であり、それから角川書店製作アニメ、もう一つはヘラルド時代に買付けた洋画作品があります。「ミス・ポター」、「マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋」とか、「プロヴァンスの贈りもの」など。それから韓国のCJエンタテインメント作品という風に柱で言うと5本あります。ただ、洋画のヘラルドの作品は一旦「マゴリアム~」でストップ。この5本柱を整理しながら角川らしさを出していくことが課題ですね。
昨年までは年間20本以上出ているんですけど、やはり14、15本に本当は絞りたい。小さい作品ばかり増えても手間は同じですから、それなりの作品をやっていきたいと思っています。
-海外事業については。井上 今後の買い付けについては、まだ海外の取組みを見直しているので、恐らく6月のところを機に海外については体制が変わります、いま香港、中国でも取り組んでいるんです。アメリカでも「ワン・ミスト・コール」(原題)を進めていたりとあるんですが、ちょっととっちらかっちゃっているんですよ。この辺も整理整頓して、きちっとしたスタンスで海外に飛び出していかないと、ただ海外事業をやっていますって言って、いつまでも赤字ですではしょうがない。やるからには結果が残せるものとはどういうものなのかを見極めていかないと。香港の方は結果を出してくれていますが、もう一度大きく中国本土の中にも展開したり、台湾、さらにアジアで展開したりということも含めると、今の体制では弱いんです。この辺も7月から新体制で稼動させたいと思っています。ですからわかりやすくして、きちっとした事業として結果をもたらすようにしたい。もう投資の時代は終わったということです。これから攻めの姿勢を持っていこうというのはあって、例えば先程でた「ミス・ポター」や「マゴリアム~」のような300館近い規模のAロード作品が2年ぶりぐらいで出てくるわけです。邦画の「サウスバウンド」も当然大きく展開し、グループ一丸で取り組んでいこうとしています。
-配給・宣伝展開も重要になってきますよね。井上 まず邦画の場合、日本人は何を求めているか。一番判り易いのは宣伝の仕方だと思います。それは角川書店を巻き込んで、昔やっていたコラボのやり方、ああいう感じです。それが出来れば角川らしい作品となるんですよね。昨年で言えば、「ダ・ヴィンチ・コード」(SPE配給)展開の国内版ですよ。アニメの「ブレイブストーリー」(WB配給)でもできましたよね。製作・配給は全部うちではありませんが、原作主ということでジョイントができるじゃないですか。だったらその展開をもっと角川グループの中で出来るのではないかと。きちっとコラボして大成功しているわけですからね。先に出版物から仕掛けて、途中から映画という展開があるわけですよ。それをグループ内でもっと出せたらということです。それは「バッテリー」や「ケロロ軍曹」で出来てきているんですよね。
-デジタル時代への対応は。井上 宣伝の中にはネット展開も入っています。うちも今NTTドコモさんと資本提携し、新しい視点の企業とコラボしていくことをやり始めていて、それは「転校生」から取り組んでいきます。例えば、ドコモさんに出資してもらうことで協力関係って物凄く強くなりますからね。ドコモさんは7月に新しい機種が出るので、それ専用のオリジナルコンテンツとして出していきます。出版と映像、2つの柱の間を取り巻くいろんな今の時代に即応したものが一緒になっていますよね。劇場でもウチのシネコンでは携帯電話で決済できるようになります。
略 歴
井上 泰一(いのうえ・たいいち) 昭和19年4月19日生まれ。昭和44年3月法政大学法学部卒業。昭和44年4月(株)角川書店入社。昭和60年7月(株)角川春樹事務所取締役営業部長、平成16年6月(株)角川グループホールディングス取締役などを経て、(株)角川グループパブリッシング(旧角川書店)代表取締役社長、現在は会長を務めている。角川春樹事務所時代、春樹氏の秘書を歴任し映画界との人脈もあり、黒井氏の推薦で今回の人事が決まった。