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トップインタビュー:井上泰一角川映画代表取締役社長

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トップインタビュー:井上泰一角川映画代表取締役社長

2007年07月04日

“角川らしさ”で3つの夢を提供

  映画は結局“手作り感”
   2つの柱の間を取り巻くもの



「積極的かつ貪欲に、気配り目配り」に徹し新しい芽を!
角川、大映、ヘラルドのDNAを活かした新体制で船出─



 今年1月23日、角川映画(当時角川ヘラルド映画)は、取締役会で黒井和男代表取締役社長(当時)が取締役相談役に退き、井上泰一氏(当時角川グループパブリッシング代表取締役社長)が代表取締役社長に就く“社長交代人事”を内定したことを発表し、少なからず映画業界に衝撃が走った。
 2月22日開催の臨時株主総会と取締役会で承認され、3月1日付で正式に新社長に就任した井上氏。就任から間もなく3ヶ月となるが、「角川、大映、ヘラルドのDNAを一つにして、いかに“角川らしさ”を発揮できるか」だと目標を掲げ、「黒井相談役が3社の一体化を図ってその地ならしをしてくれたので、そこに新しい芽を出していくことが私に課せられた仕事」と断言する。
 出版と映像という柱を活かし、いかにコラボレーションしていくか?。6月下旬、本体である角川グループホールディングスの株主総会を経て、7月から新体制で“新生角川映画”が本格的に船出する。その方向性について聞いた。

映画は結局“手作り感”

 -角川(歴彦)会長、黒井さんからはいつ頃社長就任の要請があったのですか。

井上 昨年の暮れも暮れですよ。前社長の黒井相談役からは数年前から会うごとに早く来てくれと言われましたけど、私も角川グループパブリッシング(以下、角川GP)の社長をやっていましたし、立ち上げたばかりのものもありましたから、正直言うと、返事に困りましたね(笑)。決意したのは、やはり“角川らしさ”、映像と出版というところで、たまたま両方携わった世界であったし、両方の良さが上手く引き出せればと思いました。ですから受けたからにはその辺をしっかりと引き出して、自分の時代はもちろん、後世に上手く引き継いで、もっと角川らしさが大きくなっていくようにしていけるのではないかと思ったからです。黒井相談役が地ならししてくれた上に芽を出させるというのが私の役目。それを大きくするのは後々の人たちが引き継いでくれるだろうと思っています。

 -久しぶりに戻ってきた映画業界はいかがですか。

井上 私も映画好きで、当時の角川書店(現角川GP)に入社し時に「犬神家の一族」の裏方から始まって、以降30本くらいに携わりましたかね。今回また映画業界に戻ったんですけども、そんなに何か時代的に変わっているかというと変わってないんだろうと思います。やはり映画は“手作り感”なんですよね。いろいろ世の中ではデジタル化が進んで、一部では特撮だとか録音技術だとか、映像の見せ方というのは新しい時代には来ていると思うんですが、映画の制作の部分では結局手作りなんだと思うんですよ。
 ただ、なかなか難しい時代には来ていると思うんです。確かに邦画も製作本数は相当なもの。でも劇場にかかるのは半分くらいという時代で、シネコンなど見せる場は多くなってきているんですが、それでもやっぱり半分くらいは上映されないで終わってしまっています。だからビデオ・DVDストレートになってしまうのか、テレビにいってしまうのか、いま非常にバランス的に取れていない感じですよね。作りたい人はいっぱいいるんでしょうけど。

 -角川GPとのバランスはどのようにとられていくのですか。

井上 まあ、自分の所の出版物だけでなく、世の中には他にもいっぱいあると思うんですよ。そういうものも発掘しながら、世の期待に応える映画製作がまだまだ出来るだろうと思っています。また逆にですね、昔、角川の初めの頃の、「読んでから見るか、見てから読むか」というのが、やはり私は角川らしさだと思うんですよ。なかなか映画製作が一気通貫で出来るところはないと思いますので、大映と日本ヘラルド映画のDNAと角川のDNAとを上手く活かしていくと、たぶん芽が出てくると思うので、ここに期待しているんですね。各事業部の社員それぞれみんな凄くいいものは持っているんです。ただそれでどう芽を出させるチャンスを作るか、私ひとりではできませんので、企画製作部担当取締役の中川(滋弘)や映画営業部担当取締役の荻野(和仁)とかそれぞれの幹部の人たちが若手を突き上げてやっていくということになるだろうと思っています。

 -現時点で、井上さんから見られた角川映画の問題点、改善すべき点はどこになりますか。

井上 一つは、まだ角川グループにいながら、グループを利用しきれていません。特に出版関係は。それからもう一つは、せっかくヘラルドで培った経験があるのに、海外事業を持っていながら中途半端であること。また、角川エンタテインメントというソフト販社があるのですが、まだまだ活かし切れていないと思うんです。そして、数は多くありませんがシネコン事業(興行事業)ですね。これを持っていながら、ここも中途半端なんです。ここは出版でいえば小売店、書店さんですね。要するに観客と一番身近にいながら、活かし切れていない。以上の点が一度膿を出してくれると、恐らく一気通貫の“角川らしさ”が出てくると思います。
 おかげさまで、旧大映作品が1600本、アーカイブとしてあるわけですよね。さらに角川映画で100本、旧ヘラルド作品も持っていて、トータルで1800本くらいあるんです。それが大変な含み資産を生んでいるわけですよ。それはこれからデジタル時代になった時に、BS、CSなどいろんなところに上手くコンテンツ活用されていく。そういう面では財産をもっているわけです。この辺を大事に上手く活かしながら次ぎへ取り組んでいくことだと思うんです。
 いまこの会社は3つが一緒になったわけで、言ってみれば出来たばっかりの会社と同じなんですよね。そういう面で言うと玉石混交といいますか、角川書店を利用しろというのは角川らしさを出していけということですから、そのらしさを出していくことが大事。それはかなり感じます。今後は自社製作に力を入れようということですが、結局、邦画はまず東宝さん、松竹さん、東映さんにお願いしないといけませんよね。でも、相手に出来ないと言われたら自前でやらなければいけません。だったら、洋画と違って邦画を自前でやるとなると劇場を持たなければいけないということで、昨年新宿ガーデンシネマを作ったわけです。ローカルは角川シネプレックスがあり、ある程度の数字は稼げるんですけど、そうなると邦画製作というのは、本当に力を入れていかなければいけなくなります。




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