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コンテンツ東京のセミナーレポート「ファンコミュニティ活性化のコツ」とは

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コンテンツ東京のセミナーレポート「ファンコミュニティ活性化のコツ」とは

2026年07月30日
 先ごろ東京ビッグサイトで開催されたコンテンツビジネス総合展「第19回 コンテンツ東京」(6月17~19日)では、今年もコンテンツに関する旬な題材を取り上げたセミナーが多数行われた。その中で、本紙が注目したのは「ファンコミュニティ」に関するセミナーだ。コンテンツに携わる企業にとって、コミュニティ内のファン同士が生む連帯感を味方につけた際の効果は計り知れない。今回のコンテンツ東京では、そんなファンコミュニティに携わる企業のブースエリアを初めて設け、セミナーでも積極的に取り上げた。本紙は、期間内に行われた3つのファンコミュニティ関連セミナーを取材。その中で見えてきた傾向をレポートする。
※この記事は、2026年7月10日付「日刊文化通信速報【映画版】」で掲載したものです。

 
 「脱“一方通行”マーケティング」を掲げたセミナーでは、コミュニティマーケティング推進協会の代表理事を務める小島英揮氏が、現在ビジネスの現場で起きている現象として、企業から客へ一方的に情報発信する従来型のマーケティング広告が「効きにくくなった」と指摘。コミュニティサービス「Commune(コミューン)」などを運営するコミューンの杉山信弘執行役員CPO兼CMOもその実感は「かなりある」と同調し、クライアントからは「認知率は有って(以前と)変動がないのに、なぜか選ばれなくなっている」という悩みをよく聞くという。そんな中、新規顧客獲得偏重だった従来から、現在はLTV(ライフタイムバリュー=1人の顧客が生涯で企業にもたらす利益)に重点を置く企業が増えている傾向について小島氏が語ると、顧客の本音を収集・分析・活用するためのサービス「coorum(コーラム)」を展開するAsobicaの小父内信也取締役副社長は「(LTVを意識する効果は)如実に出てくる。最初の半年ぐらいはまだ見えないケースが多いが、1年、2年と続けていくと明らかに上がっていく。キャンペーンも効きやすくなる」と力を込めた。


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左より小島氏・小父内氏・杉山氏


 そこで重要になるのが、ファンコミュニティを醸成し、盛り上げていく“コミュニティマーケティング”だ。「ファンコミュニティ」について、小父内氏は「企業と顧客が分かれているのではなく、共創パートナーとして融け合うようなイメージ」と表現。杉山氏は、企業と顧客の双方向のコミュニケーションと、顧客同士のコミュニケーションの2つの双方向が揃っていることが理想的との考えを示した。

 では、企業はどのようにコミュニティマーケティングを行うべきか。セミナーに登壇した各氏は、一例として、社員が表に出ていくことの重要性を説いた。杉山氏は、ある食品メーカーの取り組みについて「途中からコミュニティマネージャーが顔を出し、プロフィールも出していくようにしてから、ファンの方が個人を好きになり、そのブランドのことも好きになった。(ファンと)向き合うという時に、やはり自分たちをまずさらけ出す(ことが重要)」とし、「そういったことができる会社の方がコミュニティは向いている」と説明。小島氏も頷きながら「こっちは陰に隠れていて『皆さんは顔を出してください』というのはちょっと難しい」と印象を述べた。


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左より長澤氏・野堀氏


 ポテトチップスのメーカーであるカルビーの社員が登壇したセミナーでも、同様にファンと直接触れ合う重要性が語られた。広報部部長の野堀和哉氏は、全国の営業支店や工場、契約生産者の畑などを会場に開催しているファンミーティングについて説明。広い会場で大勢を集めるイベントはあえて行わず、手作り感のある催しに30人ほどの少人数を招待し、従業員と接する機会の創出を重視。2024年からすでに1400人ものファンが参加したと明かし、「特別感を感じてもらうことで、よりカルビーのことを好きになり、熱狂度が上がっていくと思っている」との考えを述べた。同社もコアなファンの熱量を重視しており、野堀氏は、購入者全体の20%ほどの層が、同社の国内売上の約62%を占めているデータを提示し、年間の平均購入金額も、20%のコア層とそれ以外では7倍近い差があると説明。このコアな層にイベントなどで様々な体験をしてもらい、より深いカルビーのファンとなって購入数を増やしてもらうことに「我々としてはやりがいを感じている」と語った。カルビーのファンでなくても購入金額が高い客はいるものの、単に値段の安さなどで選ばれている可能性もあり、「そういう方々のカルビーへのロイヤリティを上げていけば、(やむを得ず値上げする際なども)離反しないお客様になるだろうと考えられる」と、企業のファンになってもらうことを重視する姿勢を示した。なお、カルビーでは雑貨へのライセンスアウトにも力を入れており、その理由について同社の長澤君枝氏(新規事業本部推進本部Calbee Future Laboデザインチーム)は「『じゃがりこ』を購入して、次また買う時まで『じゃがりこ』のことを考えているお客様はほぼいらっしゃらないと思うが、グッズ体験で遊んだり、身に着けたりしていると、次に『じゃがりこ』に出会った時に少し気持ちが変わっているんじゃないか」と、雑貨を通して接点を持つ効果に期待を寄せていることを明かした。

 タレントやアーティストとのビジネスを中心に取り上げたセミナーでも、カルビーと同様に、参加人数を絞ってファンと交流することで満足度を高める潮流があることが語られた。ファンダムプラットフォーム「ユーダム」を運営するユートニックの常田俊太郎代表取締役は、「ファンコミュニティは、今までは何人ファンがいて、売上がいくらで、という量的なものが重視されていたが、今は少し変わってきており、ファンの熱量、質的な濃度を非常に大事にする。それが結果的に量につながっていく」と近年の変化を話し、同社が運営をサポートする、お笑い芸人・あばれる君の「アドベンチャークラブ」の取り組みを紹介。あばれる君とともに少人数のファンがサバイバル体験できるこのファンコミュニティは好評を博しており、「非常にファンの密度も高まっていくし、その体験価値が高まることで、今ではサントリーやコールマンがコミュニティのスポンサーについてくださっている」と、ファンの密度やエンゲージメントを高めることによる新たなマネタイズの手法が生まれていることを説明した。スポーツジャンルに携わるアミューズの中野健太氏(財務統括部コーポレットデベロップメント室 CVC投資担当〈室長〉)は、サッカーやバスケットボールなど地域で熱狂的なファンを生み出すスポーツにも変化があるとし、「今まではチームを応援するサポーターとして皆さん参加していたが、それがサポーター同士でランニングクラブを作ったり、地域のイベントに参加したり。チーム側が仕掛けていることではあるが、それがうまく機能し始めている。スポーツのファンコミュニティは新たな局面を迎えている」との見解を述べた。また、エンタテインメント、テクノロジー領域のコンサルティングなどを行うParadeAllの鈴木貴歩代表取締役は、ファンコミュニティの中にも役割があると話し、一例として「ファンコミュニティの中の、クリエイターコミュニティをうまく刺激できれば、例えば二次創作でさらにファンコミュニティが活性化したり、それ以外のところ(コミュニティ)にリーチできる」と、コミュニティのなかで構造分解が起きているとの認識を示した。コミュニティをリードする人も重要であり、特に「お客様相談センター」などに寄せられる消費者やファンの意見のなかで、熱量の高い長文を送ってくるユーザーなどは貴重な存在。前出のAsobica小父内氏が「その人からまず優先的にお話を聞く」と話すと、コミューン杉山氏も「最初に質問を頂くような方はプロダクトフィードバックもくれるし、アンケートの自由記述もたくさん書いてくれる。そういう人が最初にいると、コミュニティはその後すごい盛り上がる」と、キーマンを探し、コミュニティを活性化してもらう有効性を説いた。


左より常田氏・中野氏・鈴木氏.jpg
左より常田氏・中野氏・鈴木氏


 一方、こういったファンコミュニティの醸成からマネタイズには時間がかかることや、段階を追うことの必要性も各セミナーで指摘された。コミューン杉山氏は、ファンコミュニティついて「可視化」→「理解」→「育成」→「創造」のステップがあるとし、「(ファンを)理解できていないのに関係構築ができるわけがなく、関係構築ができていないのに新しいお客さんを連れてきてくれるわけがないので、ステップ論が大事」と説明。カルビー野堀氏は、IPやテレビ取材などを通してまずはライトなカルビーファンを集めることが入口だと思っていると話し、「さらにカルビーのことを知って頂ければSNSをフォローして頂き、より情報を取って頂ける。そしてカルビーを好きになって頂き、ファンの囲い込みをしていきたい」と、ファン化には地道な歩みが必要であることを示唆した。

(取材 平池由典)

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