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第2回新潟国際アニメーション映画祭レポート「多彩さと熱量の映画祭」

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第2回新潟国際アニメーション映画祭レポート「多彩さと熱量の映画祭」

2024年03月26日
 新潟国際アニメーション映画祭(主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会/企画制作:ユーロスペース+ジェンコ)が3月15~20日に新潟市で開催された。世界のアニメーション映画祭が「短編」のコンペティションを中心視するなかで、新潟国際は「長編」のコンペに特化する形で昨年産声をあげ、今年2回目を迎えた。

 まだ始まったばかりの映画祭ながら、今回のコンペには世界29か国から49本もの長編映画がエントリーされ、矢田部吉彦氏(元東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)ら4人の選定委員が厳選した多彩な12本が上映された。また、高畑勲監督特集や湯浅政明監督の短編特集が行われるなど企画上映も充実のラインナップ。6日間の開催期間のうち、本紙が取材した3月16、17日を中心にレポートする。


自由なアニメーション。多彩な作品揃う

 たった2日間の取材でも十分に感じられたのは、いかにアニメーションには多様な表現があるかということだ。「実写以外の全ての映像」がここに集まっていると言えるかもしれない。

 筆者が観たコンペティション3本も“全然違う”特徴を持った作品群だった。コロンビア映画『アザー・シェイプ』は、マインクラフトのように全てが「四角」に捉われた奇妙な世界観のSF作品。スペイン映画『スルタナの夢』は女性の社会的な立ち位置を題材に、現代パートを絵画のような映像で、小説の中に描かれた世界のパートを切り絵を動かしたような映像で描き分けた。世界観にこだわり抜いたこういった作品がある一方で、ブラジル映画『深海からの奇妙な魚』は、人間や動物の絵をアニメーションで動かすことの面白さに立ち返ったような明るい作風で、実直に「動き」にフォーカスした内容だった。いずれの作品も裏には社会性のあるテーマを持ちながら、どれも現代の日本や米国で製作される作品とは違う味わいがあり、アニメーション表現の懐の広さが感じられた。

 そんなアニメーションの自由さをわかりやすく説明していたのが、昨年のアヌシー国際アニメーション映画祭で最高賞を受賞した『リンダはチキンがたべたい!』(4月12日公開)のキアラ・マルタ、セバスチャン・ローデンバック両監督による特別講義だ。新潟国際では「人材育成」にも力を注いでおり、アニメーション業界を目指す若手を、日本とアジアから40人招待した。『リンダ~』両監督は、生徒に向けて連日行われる特別講義の一コマに登場し、その特殊な制作手法を紹介。この作品は、料理を作るためのチキンをめぐり母娘が起こすドタバタ劇を描くコメディだが、企画当初よりも登場人物が増えたため、膨大な製作費が必要になってしまったという。そこで、スタッフの数を抑えるため、主人公の女の子は黄色、母親はオレンジ色といったように、登場人物を一色で塗るという手法を選択。さらに描線も極力減らし、線の無い部分は観客の想像力による補完に委ねることにしたと説明した。日本のアニメーションに見慣れていると、『リンダ~』の制作スタイルは実験的で大胆な手法に感じられたが、いざ映像が披露されると意外なほど違和感がなく、これだけ情報量を省いても十分に作品として成立することは目から鱗だった。

 ストップモーションアニメ映画『JUNK HEAD』の堀貴秀監督も、16日に行われたトークイベントの中で、「自分はしゃべりも苦手で上がり症だから(作るとしても)実写はとても無理。頭が悪いので(笑)、アニメやCGも無理。でも、人形を作ってパシャパシャと撮るだけなら行けるのではないかと思った」とコマ撮りで映画作りを始めた経緯を語った。このエピソードも、アニメーションの自由さや幅の広さを物語っていると言えるだろう。

 映像表現のユニークさはさることながら、一方で、作品の商業性も気になるところ。鑑賞したコンペ3作品の中には、その良質な作品性は認めつつも、興行的には難しい印象を受ける内容もあった。ただいずれも共通しているのは、あまり見たことがない新鮮さだ。振り返れば昨年、コマ撮り映画『オオカミの家』がミニシアターで大ヒットとなった。その奇妙な世界観や特殊な制作手法が映画ファンの関心を煽ったわけだが、新潟国際アニメーション映画祭のコンペティションは、そういった世界の斬新な長編アニメーション映画が多数見られる場になっていくことを予感させた。前出のブラジル映画『深海からの奇妙な魚』のマルセロ・マラオン監督は「ブラジルでは1917年からアニメ制作が始まったが、この90年間で作られた短編は300本に満たず、長編は20本にも満たない。でも最近状況が変わり、今は長編30本が制作中だ」と明かす。また「アニメの本場である日本で認められて光栄だ」と出品できたことに喜びを隠さない。世界的にアニメーションへの関心が高まる中、日本で開催する同映画祭のコンペのラインナップはさらに今後充実していくことが見込まれる。


逆シャア、かぐや姫など場内満席で大盛り上がりに

 映画祭の盛り上がりという点では、新潟市内での拡がりはまだ限定的に感じられた。市内中心部にある8か所(日報ホール、新潟市民プラザ、シネ・ウインドなど)を会場に開催されたが、商店街に映画祭のフラッグやポスターは数多く飾られているものの、街全体をあげたお祭りムードには乏しかった。その点は、今後の開催でさらに様々な協力を得る必要が出てくるだろう。

 一方で、参加者たちの熱量の高さには唸らされた。16日に行われた『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の富野由悠季監督と盟友・出渕裕のトークショーは、540席を有する新潟市民プラザのチケットが即完売する大盛況となった。『JUNK HEAD』の堀監督トークショーも、203席の日報ホールが8~9割埋まった。また、シネ・ウインドで17日に行われた『かぐや姫の物語』の高橋望、西村義明、櫻井大樹のプロデューサー3氏によるトークショーは満席・立ち見の大盛り上がりとなった。いずれも作品やクリエイターへの愛に満ちたイベントとなり、会場が一体となっている様子を感じた。こういった集客力が高く熱気あふれる絶妙なプログラムは主催者の尽力の賜物だろう。

 また、有名監督の少ないコンペティション部門の作品上映も意外に集客していた印象だ。コンペ作品を16日に上映していた会場(だいしほくえつホール)は269席のキャパシティだが、半数近くが埋まっている作品もあった。映画祭の劇場統括責任者を務める井上経久氏(シネ・ウインド支配人)は「去年(第1回)よりお客さんが入っている。地元での知名度も去年より上がった印象がある。アニメーションの映画祭ということもあり、若い人が積極的にボランティアに参加してくれている」と話す。日曜朝早くからの上映回でも会場前には長い行列ができ、訪れた映画ファンの熱心さが垣間見えた。

 客やメディアがどこから来場したのかを調べるため、日本地図や世界地図にシールを貼ってもらうボードが会場に設置されており、実に幅広い地域から足を運んでいる様子がわかった。県内や関東が中心だが、東北や関西圏にもシールが多数貼られ、世界地図では東南アジアの国々、北米、ヨーロッパにもシールが付いていた。広報担当者によれば、今回参加したマスコミの数は80人程度。招待制でないにもかかわらず、海外のメディアも多く訪れたという。『リンダはチキンがたべたい!』の監督の特別講義も、日本とアジアの受講者を中心に、Q&Aでは英語やフランス語も飛び交い、とても国際色が豊かだった。また、日本でも注目された『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』の主要スタッフであるエディ・ノエル氏がコンセプトデザイナーとして参加している新作『小さなアメリ』の制作説明会は、出席者のほとんどを外国人が占め、海外で高い注目を集めている作品であることが窺えた。

 多彩さ、新鮮さ、そして熱量がこもった新潟国際アニメーション映画祭。そのポテンシャルの高さは間違いなく、隆盛なアニメーション市場の背景を踏まえれば、今後右肩上がりで伸びていくことも予想される。長く続けることで、日本を代表する映画祭の1つとなり、この映画祭から巣立ったクリエイターが世界的に活躍する未来も期待できそうだ。

(取材・文 平池由典)

特別講義.jpg
『リンダはチキンがたべたい!』キアラ・マルタ、S・ローデンバック監督の特別講義の様子


商店街の様子.jpg
商店街には多くのポスターやフラッグが掲示されていた


湯浅政明監督のトークショー.jpg
湯浅政明監督の短編特集上映


『JUNK HEAD』堀貴秀監督と伊藤有壱氏.jpg
『JUNK HEAD』堀貴秀監督(右)と伊藤有壱氏


マルセロ・マラオン監督.jpg
コンペ作品『深海からの奇妙な魚』のマルセロ・マラオン監督


『かぐや姫の物語』トークショー.jpg
高畑勲監督『かぐや姫の物語』上映で高橋望、西村義明、櫻井大樹の各氏登壇


ドワーフ20周年+α.jpg
ドワーフの上映会に登壇した松本紀子プロデューサー(左)、小川育監督


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