「ともだち」には2つの意味
――「NewStage」のラストと謳っている本作ですが、ポイントはどこに置いていますか。
永富大地P(=右写真) 「NewStage」シリーズ(12年~14年公開)は、3作品とも副題に「~ともだち」と付くように、「ともだち」というキーワードを強く意識しています。プリキュアにとって「ともだち」とは2つの意味があります。1つ目は、敵だって「ともだち」ということ。映画の構成上、どうしても出てきてしまう敵役ですが、プリキュアが寄ってたかって倒すのではなく、衝突が終わったあとは、必ず心を通じ合わせています。自分の意見が正しいから、戦いに勝ったから言うことを聞けという論理ではなく、ともだちとして互いにわかり合うために衝突しているんだよというメッセージを込めています。
そして2つ目は、映画を観に来てくれている(主に)女の子たちの「ともだち」であるということ。みんなも頑張ればプリキュアになれる。それぐらいプリキュアはみんなのそばにいる存在だよ、という2種類のメッセージが込められており、今回の作品は特に「ともだち」が強調されたエピソードになっています。
――「プリキュアオールスターズ」は歴代のプリキュアが全員集合することが特徴ですが、年々増えていますよね。今年は何人ですか。
永富 36人です。毎年そうなのですが、歴代最多です(笑)。
――36人の登場はどのようにバランスをとっているのですか。
永富 毎回、プロデューサーや監督、脚本家の考えで違ったり、テーマによっても異なります。今回の映画のテーマは「夢」なので、今までのTVシリーズの中で「こんな夢がある」ということを強調していたキャラクターは画面に出しやすかったです。例えば相田マナ(キュアハート)の「総理大臣になりたい」とか。ただ、僕は何としてもたくさんのプリキュアが見たかったので、それを実現するために、今回は妖精の登場を控えめにし、プリキュアたちが夢の世界に飛び込み、妖精の力を借りなくても変身できるように工夫しました。妖精役の声優さんたちには申し訳なかったですが、プリキュア全員を登場させることに強くこだわりました。
――「夢」をテーマにしたのはなぜでしょう。
永富 脚本家の成田良美さん、小川孝治監督、前任の梅澤(淳稔)と僕の4人が脚本打ち合わせをしている時に、夢について親に反対された話が出たのです。アニメーションや映画の仕事は難しい世界ですし、「親は心配するよね」という話をしていました。でも、自分が親になった時に、もし子供が突然「ハリウッドで役者になる」と言い出したら、「考え直せ」と諭すべきか、応援するべきか。すごく難しい問題だと思うのです。すぱっと割り切れるテーマではないけれど、だからこそ向き合う価値のあるテーマなんじゃないかと思いました。
今の話がそのまま、映画にも反映されています。夢の妖精ユメタと、母親のマアム。ユメタは夢を持っているけれど、残念ながら夢が叶わず挫折してしまう。そしてユメタを守るためのマアムの強い気持ちが、結果的にプリキュアとの衝突を招いてしまいます。しかし、プリキュアたちの諦めず頑張っている姿を見ることで、ユメタが自分の気持ちを確かめていく物語になっています。
――先ほど、寄ってたかって倒す映画ではないとおっしゃっていましたが、そうするとアクションシーンは表現が難しいのですか。
永富 そこは割り切っています(笑)。今回のアクションシーンは凄いことになっています。テーマと矛盾しない限り、映像で観る時の活劇の面白さは大事にしています。東映アニメーションのDNAとも言えると思うのですが、「ドラゴンボール」や「聖闘士星矢」などにも顕著なように、徒手空拳のアクション、これは今回のプリキュアでも自信のシーンです。見応えありますよ。
――ゲスト声優に野沢雅子さん、剛力彩芽さんを起用されましたね。
永富 これは、オスカープロモーションさん、青二プロダクションさん、博報堂さんが主催された「全日本美声女コンテスト」(14年1月26日)との取り組みです。審査員を務める野沢さん、剛力さん、そしてコンテスト受賞者の新人声優さんに、今回の映画に登場してもらおうという試みです。
野沢さんは、初代「ふたりはプリキュア」にも出演されていた経緯があります。あと、「プリキュアを10年続くタイトルにしましょう」とおっしゃっていたという話も聞いています。僕が直接聞いたわけではないのですが、プリキュアのプロデューサーはみんなそれを知っていて、僕の耳にも入ってきていました。今回の映画はまさに10周年記念作品ですし、野沢さん、剛力さんに出演して頂くことで、シンボリックな作品になると思います。ちなみに野沢さんには「悪夢獣」というキャラクターを演じてもらって、劇中の台詞はひたすら「アクム~」です。「人間の役やらせてよっ」と笑われました(笑)。
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画像:(C)2014 映画プリキュアオールスターズNS3製作委員会