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メディアの責任、コンテンツの質、人材の不足…
11年目の韓流、嫌韓を越えて―古家正亨氏に聞く

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メディアの責任、コンテンツの質、人材の不足…
11年目の韓流、嫌韓を越えて―古家正亨氏に聞く

2014年02月28日

韓流塾


●立ちはだかる圧倒的な人材不足 韓流塾の取り組み

▼長く韓国留学の経験があり、日本語と韓国語、英語を流暢に使い分ける古家氏。日韓のエンタメの背景にある文化、歴史背景も精通する。また第3国的立場からの見方も知る。イベントなどでは、司会と通訳を兼ね、アーティストや俳優が伝えたい思いをより深く掘り下げ、ファンからも出演者からも信頼が厚い。だからこそ、見えてくるものがある。圧倒的な人材の不足だ。

 韓流10周年の2013年、古家氏は「韓流塾」と題したイベントを半年にわたって行った。自身のように日韓エンタメの架け橋になる人材を育てようという思い。全6回の講座で、日韓から幅広いゲストを招き、音楽、ドラマ、映画などの韓流ビジネスの表と裏、そこで活躍するのに必要なスキルや資質を説いた。毎回、全国から100~200人ほどが駆けつけ熱心に聞き入った。

古家 これまで400回以上韓流イベントの司会をさせてもらっていますが、その裏側なんか日韓関係そのものです。どちらも価値観を押しつけすぎ。日本ではこう、韓国ではこうだと言い張る。そのどちらも理解して、とりまとめる人や組織が絶対的に少ないんです。

 韓国語を駆使できればできる仕事ではありません。言葉の問題ではなく、それよりもいかに日本人として日本人のアイデンティティを大切にしながら、韓国と向き合っていけるか。韓国に肩入れした段階でおしまいです。韓流を好きになって留学した人たちは、韓国を深く理解している人は多いかもしれませんが、日本人の立場で韓国とおつきあいをしている人は少ないような気がします。結局、日本人なのに、日本のことを客観的に見る目が養われていないんだと思います。これって、日本の学校教育の問題だと思います。

 前提として日本が好きかどうか。私はカナダにも留学したことがあって、他国の人が自分の国のことをいろんな言葉で上手く説明できることにショックを受けたんです。日本人は圧倒的に日本のことを知らなすぎる。その経験があるから、今この仕事をしているんだと思います。単純に韓国が好きだからではやってられないです。でもそこが逆に面白いんです。

 日本人として誇りをもって、日韓両方を、あるいはアジアのことを大局的に理解してコネクトできる人材が今本当に必要。しかし、日本にはそういったことを教えてくれる機関がありません。私もようやく2013年の春から大学で教えらえるようになったんですが、まだまだです。エンタメってどうしても遊びの延長で捉えられてしまい、難しいですね。

 それで以前からやりたいと思っていて、韓流10周年の節目に「韓流ぴあ」さんに主催してもらって、ようやく開けたのが「韓流塾」です。講師のみなさんも少ない講師料なのに趣旨を理解して登壇していただけて、感謝しています。まずは全6回、半年間通じやり終えることができました。毎回受講生も100~200人単位でも全国各地から来ていただいて、手ごたえは感じました。

 とはいえ、まだまだ私が伝えたかったことの3分の1くらいしか伝えられていない気がします。あとは、これをいかにアカデミックに広く発展させられるかです。現在の韓流ファンだけでなく、まったく韓流に興味がない人、業界の方なんかにまで波及できるか。これからも定期的に開催していきたいと思っています。また、韓流だけでなくそうしたエンタメビジネス専門の機関ができれば良いなと思います。


●日本のエンタメ業界へ 11年目の韓流のあり方

▼最後に、日本のエンタメ業界に対する意見を聞いた。クール・ジャパンが世界でより人気になるにはどうしたらよいか。古家氏は、韓流ビジネスにも通じる業界の「体質改善」を強調する。「良いものは良い、悪いものは悪いと言える雰囲気を作らなければいけない。そうでないと良いものが出てこなくなる」と率直に主張する。

 韓流については「まずはサブカルに戻ればいい。ひとまずこの10年で定着したファンを離さない施策を考えてほしい」と要望し、自身もそう励むという。サブカルはサブカルらしく、過剰なブームは望まず、見合った市場で、適正なビジネスを。すべては、日韓のエンタメを愛するがゆえだ。

古家 誰もあまり表立って言わないですが、日本のエンタメはある種の危機的状況だと思います。そろそろなれ合いの関係はいいんじゃないでしょうか。体質改善です。韓流に対しても同じですが、もっと客観的に良いものは良い、ダメなものはダメと言える雰囲気を作らないといけません。悪いものに対して悪いと言えないから、悪いものが良いもののような雰囲気になる。そうすると良いものって出てこなくなるじゃないですか。欧米では平気でダメなものはダメと言うわけです。日本人の美徳かもしれませんが、日本のエンタメを世界に発信していくつもりがあるなら、今のままでは無理です。この辺りは、韓国の方が遥かに先を進んでいます。

 きゃりーぱみゅぱみゅとPerfumeには、なにかヒントがあるんじゃないしょうか。良し悪しは別にして、彼女たちが世界でウケている理由を探っていくと今後の方向性、進むべき道が見えるんじゃないかなと思います。彼女たちを見て、誰もK-POPだとは思いませんからね。

 韓流は、まずはサブカルに戻ればいいと思います。サブカルはサブカルらしくでいいんです。サブカルとして残ってほしいし、サブカルとして残るだろうし。韓流ブームとしてはすでに終わっているわけで、ひとまず定着したファンを離さない施策を考えてほしいと思います。再びブームになるかはコンテンツ次第ですが、いずれにせよこの10年を糧に、新しい10年を築いていける・・・そうなってほしいですね。


似ているからこそ違いに過剰に反応し合う日韓。古家氏の奥さんは、韓国人シンガーソングライターのHermin(ホミン)。家庭でもときに喧嘩はあるというが、「私は奥さんを尊敬しているし、彼女も僕のことを尊敬してくれているはず。やっぱり互いを尊敬すること。バカにした時点で終わり。それはエンタメでも同じ」。韓流11年目、もう一度そこに立ち帰りたい。

(了)

★「韓流塾」書籍化情報!

 書籍「古家正亨の韓流塾」 ぴあより2014年3月28日発売
 税込1575円/四六判 カバー+表周り4P+本文224P 予定

 韓流ぴあ主催、古家正亨氏がモデレーターを務め、2013年7月から12月にかけ全6回行われたセミナーを採録。業界ウラ話、目からウロコの貴重なエピソードが満載。韓流の現場で働きたい人、韓流の現状もっと深く知りたい人に役立つ一冊。

 第1章「誰も知らない韓流MCの世界」(2013年7月25日)  
  ―田代親世(韓流ナビゲーター&脚本家) 
 第2章「超本格!韓国語通訳・字幕翻訳家のお仕事」(2013年8月28日) 
  ―嵯峨山みな子(通訳)/大塚毅彦(字幕翻訳家)
 第3章「韓流バラエティ&情報番組の現場の真相」(2013年9月18日) 
  ―TV番組制作者(『韓ラブ』『韓タメ!POP』)の皆さん
 第4章「アジアから世界へ、グローバル市場に飛び込め!? K‐POPのアジア戦略に見るグローバルビジネスのいま」(2013年10月30日)
  ―栗田秀一(レインボーエンタテインメント社長、パワーボックス社長)
 第5章「韓国で芸能活動がしたい!?韓国でも活躍の俳優・タレント・歌手が本音を語る?」(2013年11月13日)
  ―塩田卓治(タレント・俳優)/NICE73(MC、韓国語通訳、作詞家、ヴォーカルディレクター、シンガー)
 第6章「これからの韓流ビジネスはこうなる!? コンテンツビジネス企業の戦略と展望?」(2013年12月18日)
  ―大柳英樹(ポニーキャニオン取締役)/丸山幸子(共同通信社 雑誌「もっと知りたい!韓国TVドラマ」編集長)/小田光太郎(ぴあアジア・コンテンツ事業局長)

 書籍発売を記念し、ぴあBOOKSHOP予約購入者限定の「韓流塾 特別講座」が5月に都内で開催予定。





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