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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.169】
16年初頭、洋画興行戦線に異状「あり」

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.169】
16年初頭、洋画興行戦線に異状「あり」

2016年01月29日

 今年に入って公開された洋画のスタート成績を見て、改めて驚いた。相当厳しいのである。昨年2015年の映画興行は、洋画の奮闘もあり、興収発表となった2000年以降では、第2位の成績となる2171億円を記録した。洋画は、前年14年と比べて、100億円以上も増えた。毎回、何度も指摘している強力シリーズものの新作が、数多く並んだからである。アニメの強さも、当然入る。

 ところが、非シリーズもの、すなわち知名度が極端に低い洋画になると、とたんに興行は停滞してしまう。これは、今に始まったことではないが、今年の初頭は、とくにその停滞度が増している気がして、これはかなり緊急事態であると、声を大にして言っておきたいのである。さて、以下の数字を見ていただこう。

▽「クリード チャンプを継ぐ男」=動員20万1358人・興収2億5760万5000円(15年12月23~1月4日)
▽「ブリッジ・オブ・スパイ」=20万3974人・2億5189万8600円(1月8~11日)
▽「パディントン」=11万5612人・1億4914万1600円(1月15~17日)
▽「シーズンズ 2万年の地球旅行」=9万6792人・1億1904万1700円(1月15~17日)
▽「白鯨との闘い」=6万3901人・8721万8800円(1月16、17日)
▽「ザ・ウォーク」=4万1970人・7144万1000円(1月23、24日)

 一目瞭然である。とくに指摘しておきたいことがある。これまでのヒット、あるいはそれに類した作品として、しっかりと宣伝した作品にして、期待の数字になっていないのである。「クリード~」は、知名度の高い「ロッキー」シリーズを、まさに「継ぐ」作品。「ブリッジ~」は、大ヒットメーカー、スティーヴン・スピルバーグ監督の新作。「パディントン」は、クマのキャラクターは全く違うが、大ヒット「テッド」の余韻が残る。「シーズンズ~」は、何本も大ヒットがあった自然ドキュメンタリーものの新作。

 といった具合に、多くがこれまでのヒットを踏まえた作品として、送り出されている。この点を考えると、いかにそうした前例を受け継ぐことが難しいか、挙げた数字を見る限りにおいて、はっきりと認識できたのだった。

 私の今年の大きなテーマの一つとして、米映画を中心とした洋画の興行を考えることを挙げようと思う。それは、クオリティ面でますます変貌を遂げているかに見える米映画への一つのアプローチとして、じっくり取り組むべき課題だとも言える。米映画は奥が深い。ひょっとして、その奥深さこそが、問題なのかもしれないのである。

(大高宏雄)

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