閲覧中のページ:トップ > コラム > 特別編集委員コラム >

【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.153】
「それでも夜は明ける」、アカデミー賞効果の現在

特別編集委員コラム

最新記事

【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.153】
「それでも夜は明ける」、アカデミー賞効果の現在

2014年03月12日

 「それでも夜は明ける」の公開が始まった。3月7日から9日までの3日間で、全国動員4万2631人・興収5256万2600円を記録した。43スクリーンなので、健闘していると言っていい。配給のギャガは、最終で5億円が視野に入ったとした。

 中身を考慮した結果、劇場マーケットをいたずらに広げるのではなく、単館拡大興行的な展開にしたのは、正解だったと思う。これが、近年のアカデミー賞作品賞受賞作品の日本におけるマーケットの中心的なありようである。

 ただ、作品の中身に沿った周到な劇場マーケットとは別に、気になることもある。アカデミー賞効果が、国内ではかつてほどではなくなっていることだ。まずは、以下のデータを見ていただこう。先週の文化通信速報に載せたものだが、そこでは見られない人が多いので、改めてここに掲載する。ここ10年ほどにわたるアカデミー賞の作品賞受賞作品の国内の興行成績である。

▽ヘラルド=松竹「ロード・オブ・リング/王の帰還」(2004年2月14日公開)=興収103億2千万円
▽ムービーアイ=松竹「ミリオンダラー・ベイビー」(05年5月28日公開)=13億4千万円
▽ムービーアイ「クラッシュ」(06年2月11日公開)=4億円
▽WB「ディパーテッド」(07年1月20日公開)=15億6千万円
▽パラマウント=ショウゲート「ノーカントリー」(08年3月15日公開)=3億4千万円
▽ギャガ「スラムドッグ$ミリオネア」(09年4月18日公開)=13億円
▽ブロードメディア・スタジオ「ハート・ロッカー」(10年3月6日公開)=9億円
▽ギャガ「英国王のスピーチ」(11年2月26日公開)=18億2千万円
▽ギャガ「アーティスト」(12年4月7日公開)=4億8千万円
▽WB「アルゴ」(12年10月26日公開)=3億3千万円

 100億円以上が、別格的に1本。10億円から20億円が4本。10億円以下が5本である。さあ、これをどう見るかだが、総じて、作品の “スケール感” が小さくなり、それに伴い成績も下がっている傾向が見える。

 これは、国内ではメジャー系の受賞配給作品が、減っていることとも関係していよう。「ロード~」や「ディパーテッド」を除けば、娯楽性も相応にある派手な中身をもった作品が、大方影を潜めていることも指摘できる。これを指して、とりあえず、 “スケール感” が小さくなったと言わせてもらう。

 米映画が変わったのである。それに伴い、アカデミー賞にからんだ日本の洋画マーケットも変わらざるをえない。アカデミー賞作品賞受賞作品の興行の現実のなかに、縮小しつつある今の洋画興行のエッセンスが、ギュッとつまっていると考えられる。寂しいけど、そうなのである。

(大高宏雄)

関連記事

過去のタイトル一覧

2017年

10月

2016年

1月│ 7月

2015年

1月│ 3月│ 4月│ 6月│ 8月

2014年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月

2013年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2012年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2011年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2010年

10月│ 11月│ 12月