2013年の正月興行は、1月1日から5日までの5日間で見ると、昨年の同期間の実績(興収)を上回った模様だ。残念ながら、全体の正確なデータは出ないが、各興行会社、及び個別のシネコンで調べると、だいたいそのような結果が見えてくる。
作品別の興収トップを、「ONE PIECE FILM Z」と「レ・ミゼラブル」が争う。1月6日現在、前者は動員452万4691人・興収54億5057万8400円。後者は170万8674人・21億1071万8700円をそれぞれ記録した。
「ONE PIECE」の成績は、興収発表になった2000年以降では、東映配給作品としては最高。最終で65億円を超えるとの見通しもある。アカデミー賞のノミネートが間近になってきたこともあり、賞レースにからみそうな「レ・ミゼラブル」は、最終で40億円台の可能性も見えた。
12月1日公開の「007 スカイフォール」は、6日に24億円を超え、ダニエル・クレイグが主演した007シリーズでは、最高の成績となって、最終では先の2本に続いて3番手につきそうだ。一方で、「映画 妖怪人間ベム」(6日現在、82万9561人・9億3570万1700円)など、意外や東宝配給などの邦画実写作品が苦戦している現状があり、いくつか問題は残した。
ただ、こういう意見が、劇場関係者から聞こえてきた。「ほんと、正月興行ではなくなったね。正月興行は、かつてはこんなもんじゃなかった。今は、盛り上がりがないんだよ。昨年や一昨年との比較などをして、一喜一憂するのがおかしいと思う」。
非常にわかる言葉である。私も、かつての記憶を振り絞れば、正月興行はもっと派手で、きらびやかな印象があったと思う。お客さんが、わんさと来てくれた。その実感を忘れて、単に目先の比較や数字で興行を推し量っているから、実体がどんどん薄くなっていくのである。ここは、用心しないといけない。
正月興行。この大きな意味を、映画関係者は忘れてしまったのではないか。それは、単に休みが連なっているだけの期間ではない、年のはじめ。景気づけの期間でもあり、映画界の1年を決定するほど意味が深いのだ。それだけ、その期間に作品を送り出す担当者の責任は重大だった。
シネコンの隆盛が、正月興行の姿を一変させたとも言えるが、それはそれとして、いろいろな局面でかつての常識(記憶)が薄ぼんやりしてしまったことを改めて痛感する。それを一つ一つ洗い出す作業もまた、重要になるのだと思う。
(大高宏雄)