【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.108】
今年の洋画興行、さらに深刻の度合い増す
2012年12月12日
すでに当社の紙媒体では、今年の洋画作品別興収の上位10本を記事化したが、一般的には見られていないと思うので、この場で改めてその10本を記してみよう(すべて最終興収で、一部推定数字)。
▽1位「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」=53億8千万円
▽2位「バイオハザードⅤ リトリビューション」=38億1千万円
▽3位「アベンジャーズ」=36億円
▽4位「メン・イン・ブラック3」=32億円
▽5位「アメイジング・スパイダーマン」=31億6千万円
▽6位「ダーク・シャドウ」=21億5千万円
▽7位「マダガスカル3」=20億5千万円
▽8位「ダークナイト ライジング」=19億8千万円
▽9位「シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム」=19億5千万円
▽10位「TIME/タイム」=18億2千万円
100億円を超えた作品どころか、60億円を超えた作品さえ1本もなかった。ちなみに昨年は、東日本大震災の影響が少なからずあったとはいえ、60億円を超えた洋画は3本あったのに、今年はゼロである。洋画の低迷は、ますます深刻の度合いを深めている。
ざっと見て、いかにシリーズものが多いかがわかる。10本中、何と7本がシリーズものだ。シリーズものではない「アベンジャーズ」も、その“変格もの“とも言えるから、この多さはただ事ではない。
ただ、「ハリポタ」や「パイレーツ」などの強力シリーズものは、ここには見当たらない。だから、はっきり言えることは、シリーズものの総体的な弱体化だ。これが、洋画低迷の大きな原因になっているのである。
では、弱体化したとはいえ、なぜシリーズものが多いのかといえば、邦画と同じく、見知っているものへの安心感が大きいだろう。これは裏返せば、アクション、サスペンス、恋愛、コメディなどといったジャンルの新しい作品への関心度が、極端に低くなっていることを示す。ここから、中級のヒットの目安である興収10億円以上を超える作品が、非常に少なくなっているのだ。
「ハリポタ」の終焉から、アメコミ原作の映画化への移行という米映画の大きな流れに、日本の市場がついていけていないことが、今年の洋画興行を象徴している。さらに、今年も多くあった3D映画は、今年に関する限り、その特性を大きくは発揮できなかった。
(大高宏雄)