新生JCOM、チャンネル事業への影響は…
2012年10月25日
住友商事とKDDIは24日、J:COM(ジュピターテレコム)とJCN(ジャパンケーブルネット)の来秋統合を発表した。2010年春J:COMにKDDIが資本参加した時より、JCNとの統合は課題にあってようやく果たした。
互いの事業の延長線上でJ:COMとの相乗効果による成長を睨むものの、一見すると、住商がこれまで長きにわたり育ててきたJ:COMをKDDIに奪われたかのように見える。今後の成果は別にして、KDDIの戦略勝ちか。一方、CATV市場の伸びは鈍化しており、主事業の多チャンネル放送は1千万世帯を超えてから頭打ちにある。住商は戦法を変えた策をとったと言えそう。J:COMにおいて生活支援型サービスに注力する方針にあるからだ。
だが、統合・合併による経営上の弊害は少なくない。多くは人的なものだ。これまでも旧J:COM側とKDDI側はどれだけ関係良好だったか。その上に、今回の折半出資となる共同運営により、今後の放送事業への影響が懸念される。
現在、放送事業は、連結である、ムービープラス(出資比率100%)、LaLaTV(100%)、アクトオンTV(90・0%)、ゴルフネットワーク(89・41%)、J SPORTS(80・5%)、チャンネル銀河(76%)を手掛けている。さらに、持分法のディスカバリーチャンネル(50%)、アニマルプラネット(50%)と、いずれも人気チャンネルを抱えている。
これにKDDI陣営が入ってくることは間違いないだろう。従来とは様相が変わる。それが効果を生むか否かは未知数ながら、懸念されそう。
今後のスケジュールは、住商とKDDIは来年2月をめどにJ:COM(出資比率・住商40・5%、KDDI31・1%)へのTOB(株式約30%を最大2160億円で取得し100%化=住商50%、KDDI50%)を行い、来年夏J:COMを上場廃止した上で、来秋にJ:COMがKDDI子会社のJCN(KDDI95・6%出資)を買収・統合する。統合会社はKDDIの連結対象となる。CATV業界1位J:COM(加入約370万世帯/シェア4割強)と2位JCN(約110万世帯/1割強)の統合で、加入約480万世帯という5割超のシェアを握る。売上規模は合算約4600億円にのぼる。
統合する新生J:COMは、住商とKDDIが50:50で共同運営。会長、社長を共同CEOとし、両社が1名ずつ指名。社長は、2013年末までは住商で現森修一社長が継続、2014年1月からはKDDIが指名。3年後の2017年1月以降は会長・社長についてはその都度協議。両社は同数の取締役・監査役を指名する。
住商とKDDIは、J:COMとJCNの統合にあたり、以上のことで合意、24日発表した。TOB(公開買付)まで時間がある。来秋の統合まで、新たな展開も見られそうな気配で、今後の出方が見守られる。
(戎 正治)