テレビの変革‐ドラマも集中視聴の概念変わる
2012年04月06日
スマートフォン片手にテレビ番組を楽しむ。いわゆる“ダブルスクリーン”。スマートフォンのツイッターで今見ている番組に感想やツッコミを入れたり、見知らぬ人たちと思いを共有し合う。あるいは番組に関する情報やキャンペーンをゲットして楽しむ。そんなテレビライフが若い世代を中心に増えている。これまではテレビを見ながらパソコンを楽しむという傾向にあったが、今後はスマートフォンやダブレットにシフトし、ダブルスクリーンが定着していくとの見方がされている。
先頃、NTTデータは、放送局などのメディア事業者向けに、スマートフォン・タブレット端末を用いてテレビ放送とインターネットのコンテンツの連動を可能にする「ダブルスクリーンサービス」を2012年度上半期より提供開始すると発表した。
スマートフォン・タブレット端末のアプリを通してテレビ番組を撮影、録音すると、そのデータを同社のデータセンターで管理している特徴データと瞬時に照合して番組を特定し、番組の関連情報やWebサイト・SNSのリンクなどさまざまな情報をスマートフォン等の端末上に表示することができるようになる。
このサービスにより、スムーズに放送とインターネットを連携できるようになり、メディア事業者はさまざまなコンテンツの楽しみ方を視聴者に提供することができるようになる。NTTデータでは、このサービスで2012年度中に20社の導入を目指すという。
一方、大阪と東京の民放テレビ6局と家電メーカー、ITベンチャー、広告会社の計12社が昨年12月発足した「マルチスクリーン型放送研究会」において、ほぼ同様のダブルスクリーン、ここでは“マルチスクリーン”と呼んでサービスの研究がされている。テレビ番組で紹介されたお店の情報や料理レシピなどが自動的にスマートフォンに配信される。これまで番組を視聴しながら自らインターネットで検索していた手間が省けるという、そんなイメージのサービスの研究だ。テレビ局が番組と番組関連情報を同一電波に乗せて放送するというもの。番組はメインスクリーン(テレビ)で、関連情報はセカンドスクリーン(タブレット端末、スマートフォン)で別々に楽しめるサービス構築を目指して、共同で実証実験に取り組むとする。
ダブルスクリーンが拡がるという見通しの背景の一つには、スマートフォンの普及がある。電通の調査によると、スマートフォンユーザーはこの3年間で3%から36%に急増した。とくに2011年と2012年の比較で、10代の男女が飛躍的に伸びた。男性10代は37%と、男性20代~40代(40%前後)とほぼ同じ。女性10代は31%と、女性で最も多い20代(41%)に次ぐ割合になった。
マルチスクリーン型放送研究会のメンバーでもある中村伊知哉慶大大学院メディアデザイン研究科教授は、このダブルスクリーンに着目している。中村教授は、去る3月27日開かれた民放連研究所「民放のネット・デジタル関連ビジネス研究プロジェクト」報告会の基調報告においても、テレビ画面上でツイッターや関連情報を楽しむよりも、ダブルスクリーンの方が日本で普及するのではないかと期待感を示す。
若い世代でそれが増えるのは確実的だろう。地上波ではそれに見合う番組作りが深夜を中心に開発されている。若者のテレビ離れの食い止めや、リアルタイム視聴の拡大というメリットがある。ただ、少子高齢化を考えると、そのバランスが今後の課題となってきそうだ。比較的ゆったり視聴できるBS放送に、高齢層がじわりシフトしているのだから。テレビドラマもダブルスクリーンの傾向が増えている。楽しみ方に多様性が出てきた。先のNHKドラマでは、マルチチャンネル編成し、サブチャンネルで別内容を放送、見たい人はチャンネルを切り替えて見る。主に主人公のダンスシーンなどでストーリーに関係ないものを放送。実験的試みだが、今後どう活用していくか。映画のようにテレビドラマは集中して見るものと思われた概念が変わりつつある。それが本流にならないだろうとは思うが、ある種の“便利なテレビ”へと変革していくのは間違いない。
(戎 正治)