「どうもありがとう!」――会見でそう締めくくった民放連広瀬道貞会長に記者陣からは拍手が沸いた。民放連の会長を6年務め、この3月末で任期を終える広瀬会長の最後の会見が8日行われた。3月末で被災3県の地上アナログテレビ放送が停波しデジタル移行すれば完全デジタル化が完了する。その道筋を成す大きな役割を果たしたひとりだ。
司会者が会見終了の言葉を述べたあと、広瀬会長は記者陣に向かって、地デジ化にあたって意見し告知等に協力したマスコミに感謝の意を表した。完全デジタル化という大事業の労とその節目を迎え、自然と拍手が沸いた。重責の一方で、大きな体格で大らかな語りのキャラクターに好感を持つ記者が多かったようだ。
会見で、この6年間で思い出深かったことは、地デジとBPOの放送倫理検証委員会の設立、この2つを上げた。地デジについては、どうしてこうなったのか、でもやってよかったと思うことがあるという。それは、10年ほど前、地デジ化の当初の計画では普及率85%だったが、それが1軒残らず、100%デジタル化しようということになったこと。何故そうなったかについて、インターネットが台頭し、若者のテレビ離れが云われるようになって、この地デジ化が大きな契機となることが危惧されたため、完全デジタル化に向かった一つの理由である旨を話した。そして今日を迎えた深い思いを話した。BPOの放送倫理検証委員会設立では、07年の関西テレビ「発掘!あるある大事典II」のねつ造問題発覚を機に立ち上がった。この問題で、国会に出された放送法改正案で、問題の放送局に再発防止計画の提出を求める新たな行政処分が盛り込まれる公権力の放送規制が顕著になったため、それを回避し、表現の自由を守るべくという、放送の根幹の堅持に尽力した想いを述べた。いずれも、放送の将来を担う重責なテーマにあって この6年を思う。
4月から新会長となる井上弘TBS会長にバトンタッチする。広瀬会長は、新体制の民放連に引き継いで欲しいこととして、現在のBPOの検証システムを定着させていきたい。そのためには番組作りでケアレスミスがないようにして欲しいと。また、国民を守る災害放送の効果的な放送体制固めなどを切望した。
任期終了まであと3週間余。広瀬会長は、東日本大震災から1年を迎え、あらためて災害時の対策を見直し、一層の態勢強化に努めるよう全会員社に呼びかけをした。そして目前の完全デジタル化も予断は出来ず、東北3県において視聴者の混乱回避へレスキュー対応を整える。民放界・放送界の新たなスタートへ、大事なく新年度4月を迎えたい。
(戎 正治)