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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.48】
「モテキ」―共感できるぜ、共感できるわ

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【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.48】
「モテキ」―共感できるぜ、共感できるわ

2011年09月27日

 9月23日から公開された「モテキ」が、大ヒットのスタートである。276スクリーンで、23~25日までの3日間では、動員28万4159人・興収3億8896万8700円を記録した。最終20億円が視野に入った。

 「モテキ」は、実に面白い興行になっている。大都市ロードショー(27スクリーン)とローカルの比率が、27%対73%。同じ東宝配給の「神様のカルテ」が19%対81%だったから、いかにRSの比率が高いかわかる。地方にシネコンが普及していなかった時代とは比較にならないが、今の時代で30%近いということは、RSの比率が高い都会型作品であることを指し示す。

 そのなかでも、とくに東京が強い。3日間における以下の全国興収のランキングで、それは一目瞭然であった。新宿ピカデリー、TOHOシネマズ梅田、新宿バルト9、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、池袋HUMAXシネマズが、上位5劇場だった。新宿が、圧倒的である。東京だけの成績を見れば、優に最終で30億円を超えても不思議ではないスタートだった。

 原作はコミックであるが、それをテレビドラマ化したのがテレビ東京で、それも深夜枠の時間帯。本来なら、映画化は難しいのだが、中身のインパクトの強さと、コアな若い層の支持者が多いことを背景に、大英断の映画化となった。だから、その興行にあたっても、東京、大阪などテレビ東京の影響力が大きいところが、中核をなしたのである。

 ただ、配給側は、そのような興行の偏りを突破すべく、全国型の宣伝を行った。知名度が限定的であることを前提に、テレビキャンペーン、テレビスポット露出を、広範囲のエリアで展開し、認知度の普及に尽力した。それが、ある程度の効力を見せたのだろう。そうでなければ、もっと東京、大阪中心の大都市型になり、最終20億円が視野に入ることはなかった。

 テレビと映画では、中身のインパクトが少し違っていたが、それでも、一見冴えない青年と、女性たちとの何とも危なっかしい関係を、笑いを基軸にしたドラマ展開で進めたところは共通していた。妙に今の若者の心情をくすぐる青年の軽妙な独白、さらに女性側の行動、心情が、ビンビン響いてくるあたりも共通していた。

 こんな感じ、ありだな。カッコ悪く、不器用な生き方だけど、共感できるぜ。女性なら、共感できるわ、か。ドラマから映画へ。ともに、時代を超えた若者たちの “真面目な” 生き方を捉えていたからこそ、人気を得、大ヒットにこぎつけたのだろう。あとの問題は、一過性ではない興行の持続性である。

(大高宏雄)

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