前回の続き。「神様のカルテ」は、この9月10、11日には、興収1億3572万3700円を記録したが、これはその前週である9月3、4日の72.6%だった。9月11日現在では、11億7971万7450円。これにより、最終で20億円の興収を超えるのは、少し難しい状況になってきたと言っていい。
さて、新作で私が驚かされるような興行になった作品が登場した。東映が配給した「探偵はBARにいる」で、9月10、11日の2日間では1億7021万6900円を記録して、週末興行のトップに立ったのである。最終では何と、10億円を超える可能性が出ている。映画の中身が昔懐かしいプログラムピクチャー的な作品であり、そうした作品がある程度の集客を果たしたことに、私は少なからぬ驚きを抱いた。
プログラムピクチャー。番組を埋めていく娯楽作品のことで、かつて、大手の映画会社の劇場マーケットであるブロックブッキングシステムがしっかりと機能していた頃、ひんぱんに製作された娯楽作品である。邦画の顔、定番娯楽作品の数々を構成していた。もっとも記憶に新しいところでは、「男はつらいよ」や「釣りバカ日誌」のシリーズを想起してもらえばいい。
そうした “手頃” で、少し古めかしい感じがしないでもない娯楽作品的な骨格をもったこの「探偵はBAR~」が、ヒットスタートを見せた。だから、驚いたのである。
これで一つ気付いたのが、企画、製作は東映が中心になって担い、これにテレビ局などが参加した製作委員会方式がとられていたことであった。後者の製作委員会方式は、今のまさに定番であるが、この作品は東映が製作の主体を担わなければ登場しないような骨格をもっている点が、極めて重要でないかと私は思った。
東映は現在、他社以上にプログラムピクチャー的な娯楽作品を作り得る製作機能、組織をもっている会社である。理由は長くなるので省くが、それは東映という会社の個性が、いまだしっかりと残っていることを指し示す。
その個性の良さが今回、興行の成果に結びついたことに、時代のちょっとした変化を見る。面白そう、楽しそうに感じられ、理屈をこねず気軽に見られそう。感動や涙、癒しなどの興行のキーワードは、ここにないことは重要だ。
懐かしいヒットと言いたい。しかし、この時代にあっては、埋もれていたジャンルだけに、実に新しいとも言えるのである。
(大高宏雄)