閲覧中のページ:トップ > コラム > 特別編集委員コラム >

【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.47】
「アンフェア」、その執念は危機感の現れだろう

特別編集委員コラム

最新記事

【大高宏雄の興行戦線異状なし Vol.47】
「アンフェア」、その執念は危機感の現れだろう

2011年09月21日
 シルバーウィークである。映画界が生んだゴールデンウィークという言葉に象徴されるような興行のかきいれどきにはいまだ到っていないが、この連続的な休みを念頭に、各配給会社は相応の話題作をこの時期に集中させた。しかし、その成果となると、相変わらず厳しいものになったと言わざるをえない。

 9月17~19日までの3日間、シネコン各館に問い合わせてみると、昨年の9月18~20日の3日間と比較して、興収で70%ほどのところが多かった。昨年は、「海猿」「バイオハザード」などの図抜けた大ヒット作品があり、夏興行の好調さがそのまま持続されていたことも大きかった。

 しかし今年のシルバーウィークのこの展開には今のところ、昨年あったような全体の興行を牽引していく作品が見当たらないのだ。こうした展開を見て私は、他作品を圧して1本かぶりしていく作品を生み出すような興行のありようを、かつて批判したことを思い出した。

 レベル以上の作品が数本並んでこそ、興行全体の底上げが成立するのだといったことを指摘したのだが、現実はなかなかそうした“理想論”にはついてこられないのだと言えようか。突出する作品がないと、とたんに全体の興行が停滞してしまう。今回のシルバーウィークの初っ端の興行を見て、バランスのいい興行展開を構築することの難しさを改めて痛感した次第である。

 さて、それでも、「アンフェア the answer」は、健闘したと言える。9月17~19日までの3日間で、動員36万8237人・興収4億8204万1200円を記録した。これは、前作「アンフェア The movie」(07年3月17日公開、最終27億2千万円)の103・8%だった(3日間の興収比較)。

 ただし、当然注釈が必要だ。今回が3連休であったこと。本作は、前作より100スクリーン以上多い368スクリーンでの公開であること。宣伝面での露出も、今回のほうが圧倒的ではなかったか。

 私はとくに、宣伝面における製作側の執念のようなものを感じざるをえなかった。テレビメディアにおける情報露出の凄まじさが、異様なほどであったからだ。何としても、負け戦にしてなるものか。負け戦は、局の根幹を揺るがしかねない。そうしたことが、執念の背後にあった気がした。

 これは、テレビ局の“映画事業“の危機感にも通じよう。テレビ局は、揺れ動いているのである。さあ今後、「アンフェア」の興行はどうなっていくか。その答えが、中身である。それは、執念ではどうにもならないのである。

(大高宏雄)

関連記事

過去のタイトル一覧

2017年

10月

2016年

1月│ 7月

2015年

1月│ 3月│ 4月│ 6月│ 8月

2014年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月

2013年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2012年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2011年

1月│ 2月│ 3月│ 4月│ 5月│ 6月│ 7月│ 8月│ 9月│ 10月│ 11月│ 12月

2010年

10月│ 11月│ 12月