東京・日本橋に、ある大手興行会社のシネコンの出店が決まった、と業界関係者の間で話題になっている。開業は数年後で、三井不動産が開発する商業施設である。当初は、別の興行会社が交渉していたが賃料など条件面で折り合いが付かなかったようである。
今年6月に亡くなった松竹の野田助嗣専務取締役が、この日本橋のシネコンの行方を気にかけていたという。なにしろ映画興行の中心地である、東京・有楽町、銀座地区から2キロと離れていない場所なのである。かつては年間興収8億や10億円を超えていた日劇1や丸の内ピカデリー1も現在、周辺にできたシネコンの影響から最盛期の60%から50%まで落ち込んでいる。ターミナル駅を持たない日本橋が、はたして映画興行に適しているのかどうかは別として、オープンしたら有楽町、銀座地区への影響は大といっていいであろう。
ある大手映画会社の部長氏は、日本橋にシネコンができたらマリオン内の映画館7館はどうなるのだろうと心配をしていた。ただでさえ経営が厳しくなっているといわれるマリオン7館が今後どうなっていくのか。
そしてこれまで、この有楽町、銀座地区の映画館を経営する大手映画会社、東宝(現在は子会社であるTOHOシネマズ)がTY系(日劇1系、日劇3系、スカラ座系、有楽座系、みゆき座系)、松竹(現在は子会社の松竹マルチプレックスシアターズ)と東急レクリエーションの2社がST系(丸の内ピカデリー1系、丸の内ピカデリー2系、丸の内ピカデリー3系、丸の内ルーブル系)の興行網をチェーンマスターとして番組編成し、洋画興行界を支配してきた。日本の映画館3400スクリーンの約80%をシネコンが占める現在、チェーンは崩壊したと言われているが、チェーンマスターが番組編成しているのも事実である。マリオン内の映画館次第ではこの体制も壊れかねないのである。
映画離れ、映画館離れが顕著な中、日本橋のシネコンがオープンする日本の映画界は果たしてどうなっているのか……。
(代表取締役社長:指田 洋)