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ディルアングレイの新曲を聴いて…

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ディルアングレイの新曲を聴いて…

2011年07月06日
 ロック・グループ、ディルアングレイのシングル「DIFFERENT SENSE」が評判になっているという。東京・渋谷のタワーレコード渋谷店では、あのAKB48のデビュー曲とトップを競り合ったと言う。

 そのディルアングレイだが、アルバム「DUM SPIRO SPERO」が8月3日に発売される。で、そのアルバムに先行してリリースされたのが今回のシングル曲「DIFFERENT SENSE」だったわけだが、いわばアルバムの発売を前にした“名刺代わり”のようなものだったわけだ。

 さっそく、「DIFFERENT SENSE」を聴いてみたが、正直言って僕には理解できないような作品だった。しかも、そのプロモーション・ビデオを観たが、これがまた荒廃的と言うか破滅的。それこそ「陰」のイメージの漂うものだった。

 もっとも、彼らのようなビジュアル系出身のロックというのは欲望と自己主張の塊(かたまり)。世の中や社会の矛盾の中でどれだけのことを喚(わめ)き、叫び散らすものばかりと思っていたが…。音楽は基本的に、それぞれの価値観の問題だから、趣味に合わなければ聴かなければいいだけの噺ではあるが、それにしても一体、何でディルアングレイのシングルやアルバムが売れるのか? 何となく興味を抱いた。つまり、彼らがウケルのか? ディルアングレイは一体、何を訴えたいと思っているのか? そこで今回、私なりに考えてみることにした。

 今回のアルバムは、セット物で価格は1万数千円で売られると言うが、日本や米国、UKも含め全世界21ヶ国で発売されるという。

 と、考えたら当然、制作過程において未曽有の被害を出した激甚災害・東日本大震災…。いや、それ以上に、「日本は安全」だと思い上がりの空想を抱いていた原発事故――福島第一原発による放射能問題、こういったものが彼らの音楽性にも少なからずの影響を与えていても不思議じゃないだろうと思った。「DIFFERENT SENSE」の内容、そして、同曲のプロモーション・ビデオを観る限り、明らかに放射能に汚染された日本を狂気的に描いているように思えてならなかったのだ。

 今や、事故を起こした原発のある福島県は、放射能汚染が深刻となっている。広島大学の医師などが、福島県内に住む住民の内部被爆も報告されている。もはや子供たちは、学校のグラウンドや砂場では遊べない。放射能汚染で野菜など農産物も口には出来ないし、海には放射能汚染水を大量に流しているため魚介類も食べることができないばかりか、海水浴場にも近づけない。

 これは福島県ばかりではない。東京や千葉、茨城、栃木、群馬の浄水場でも、水を浄化する過程で放射性セシウムが検出されている。震災発生から、もう4ヶ月が経つが、ますます汚染の度合いは深刻になっている。

 「一体、どうなっているんだ!」

 「真実を教えろよ!」

 誰もが、そう思っているはずだが、実は、海外でも活動するディルアングレイは、そういったことを、もっと現実的に考えているんじゃないかと思う。

 何も怒ることがなく理性的に冷静な行動を取り続ける日本人。メディアは、揃って「日本人は尊敬されている」なんて報じているけど、本当のところはどうなのか? 少なくとも世界から日本人は放射能汚染された国民だとレッテルを貼られてしまうかもしれない。そうなったら、ディルアングレイも、日本から米国やヨーロッパ各国に入国する際、それこそ被爆チェックなんてことになるかもしれない。このままじゃ、日本人というだけで「危険」と思われたら大変だ。面と向かって言わないだけで、海外からは日本人の見方が違ってくるかもしれない。まあ、人の目を気にするわけじゃないだろうけど…

 ここ数年、海外での活動が増えている彼ら――ディルアングレイは、そういった日本、日本人に対して悲壮感を抱いているんじゃないかと。極論過ぎるかもしれないが、それが「DIFFERENT SENSE」を聴き、プロモーション・ビデオを観ての勝手な感想だった。

 おそらく、ディルアングレイは「心の痛み」を叫ばなければいけない…彼らは、実は、そう思っているに違いない。「DIFFERENT SENSE」はもちろんだが、アルバム「DUM SPIRO SPERO」にも、そういった“怒り”“叫び”が詰め込まれているのかもしれないが、もちろん、それは聴いた人が感じることだろう。

(渡邉裕二)

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