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インタビュー:菅野信三(株)東急レクリエーション専務取締役

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インタビュー:菅野信三(株)東急レクリエーション専務取締役

2008年12月15日
2008年5月15日付で映像事業部は菅野体制に
 コアなユーザーの満足度を上げる努力が必要
 IMAXを川崎、菖蒲等4劇場に導入予定 
2008年5月15日付で映像事業部は菅野体制に
コアなユーザーの満足度を上げる努力が必要
IMAXを川崎、菖蒲等4劇場に導入予定


 東急レクリエーションの“顔”である映像事業部を率いる菅野信三氏。入社から1年半、東急電鉄時代の同期、佐藤仁社長との息もぴったりだ。アイデアが抱負で、前向きなその姿勢が、“新しい風”を吹き込む。社内の意識改革を進め客商売の原点に返りつつ、シネコン時代のチェーンマスターのあり方、渋谷や新宿の再開発など、大命題に挑んでいる。


――昨年3月1日付で東急レクリエーションに顧問として入社し、同3月29日付で常務取締役、1年後の今年3月28日付で専務取締役に就任しました。入社から1年半が経ち、興行界及び東レク映像事業部の現状を、どのように捉えていますか。

菅野 まず興行界に関して、非常に厳しい印象を持っています。儲からない、難しい商売ですね。興収の半分強を映画料で取られ、シネコン建設にかかる10億円ほどの設備投資を回収し、近年の高い賃料を払う。その時、果たして手残りはどれだけあるのか。興行環境がシミュレーションよりも年々厳しくなっています。入社して最初に思ったのは、損益分岐点をどう下げるかということ。それには当然、売上を伸ばし、費用を削るしかない。ただ環境の変化が本当に激しく、なかなか思いどおりにならないというのが現実です。
それに、作品によるブレを、身を持って感じています。例えば流通業界では、特定の商品に偏ることなく、上手く商品を入れ替えて、品揃えを充実させます。しかし、この商売は当たる映画を上手くハメないと、他館に比べて相当減ってしまう。作品への依存が大きい分、配給会社や製作会社に対する興行会社の立場が弱くなってしまいます。交渉力という点で興行者が弱いんですね。
また、興行側の努力がもっと必要だとも感じています。お客様との接点は劇場です。かつて良い時代があったせいか、良い作品があればお客様が来るという考えが蔓延しています。それは事実ですが、一方で他の客商売だったら、もっとお客様の顔を見て、もっと満足してもらうための仕掛け、サービスをしていきます。勿論そうした努力は一通りはやっていますが、流通に比べるとまだまだ足りません。年間何十万人、多い劇場では100万人もの来場者があって、それを支えるコアなお客様の満足度を上げる努力がもっと必要です。改善の余地はあります。

IMAX来年夏に導入

――顧客サービスとしては、接客などのソフト面だけでなく、設備投資などのハード面も重要です。東レクが新規導入する〝IMAXデジタル・シアター・システム〟が注目を集めています。

菅野 先ほどコアな層に向けたサービス向上の話をしましたが、一方で、観客の裾野を広げるような施策も興行会社には求められています。今まで劇場に足を運ばなかった人に、劇場に足を運ぶきっかけを提供する。その一つが、IMAXシアターとなります。
横浜市のセンター南にある1号店「109シネマズ港北」は、今年4月に10周年を迎えました。昨年春、西方にTOHOシネマズららぽーと横浜、すぐ北側のセンター北にワーナー・マイカル・シネマズ港北ニュータウンが出店して、港北の売上は半分に落ち込みました。港北の現場をよく見てみると初期の設備であり、競合のない時代はお客様は満足してくれていましたが、今ではとても競争に勝てる状態ではありません。こうした劇場のテコ入れ、運営の見直しをどんどん進めていかなければなりません。
お客様は新しい感動を求めています。おそらく標準的なシネコンに慣れたお客様がIMAXを見れば、今までにない驚きと感動があるはずです。そうやって時代、時代で新しい技術、サービスを提供していかないと、お客様がどんどん減っていく気がしています。

――IMAXの導入は、11月に109シネマズ川崎を皮切りに、来春に菖蒲(11月28日新規開業)、来年中に他2劇場に設置すると発表しました。


菅野 実はスケジュールが変わりました。当初は「ハリー・ポッターと謎のプリンス」の公開に合わせて川崎に入れる予定でしたが、来年夏に公開が延期になりました。現時点では4劇場一斉に来年の夏興行に向けて導入する予定です。その方がマーケティングもしやすくなります。

――設置のための投資額は大きいわけですよね。

菅野 コストはIMAX社とシェアします。契約内容について詳しくは申し上げられませんが、基本的に当社は劇場側のコストだけを負担します。つまり、映写室を少し改装したり、大型のスクリーンを設置できる状態にしたりと、IMAXのシステムを受け入れられるハコにするまでが、当社の負担です。システム、機械自体はIMAX社が負担します。コストの比率に応じて収益も配分します。
1スクリーンをIMAX用に変換しますが、残りのスクリーンが従来と同じ興収が上げられるかどうかが、IMAXビジネスの肝です。イコールは難しいかもしれませんが、どれだけ近い数字にまで持っていけるか。そのためには番組編成、スクリーンスケジュールの立て方等々、きめ細かな対応が必要です。IMAXにお客様が来ることには確信があり、その投資回収は十分にできると見込んでいます。当然、従来の興収にプラスされるということが前提です。
今回の契約では、当社にかなりの裁量権があります。以前IMAX社との契約は、制約が厳しかったと聞いています、今回は交渉の結果、予想される障害は取り除きました。例えば、IMAXシアターで35ミリの邦画を映すこともできるし、日本市場に合わないIMAX作品を断ることもできます。

――IMAXはどのような料金設定にしますか。

菅野 映画は定価が1800円、エグゼクティブシートが2500円、3Dを導入している劇場が2000円という料金設定をしており、その辺が目安になります。導入が来年に延びたため、まだ決めていません。実際に始めてしまうと、料金を上げるのは大変で、下げる方は容易ですから、それも頭の隅に置いて値付けをしていこうと思っています。レディースデー、ファーストデー等を適用するかどうかも検討します。


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